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日本の鉄道利用客数推移などをさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 通勤に使う人も多い鉄道。利用客数は?(ペイレスイメージズ/アフロ)

2016年度は約246億人が鉄道を利用

昨今では省エネ・節約志向から再評価を受け、利用客も増加しているとの話もある鉄道。国土交通省の「鉄道輸送統計調査 年報」など各種公開資料を基に、日本の鉄道における利用客数などの動向を確認する。

まず最初はJR・私鉄を問わず日本国内の鉄道を利用した旅客数の推移。JRはほぼ全国展開、私鉄は一般的に地域との密着性が強いことから、利用者数はJR各社の合計の方が多いイメージがあるが、実際には私鉄各社の合計の方が多い。直近2016年度ではJRが93億9200万人、私鉄各社が152億0600万人で、合計で245億9800万人が鉄道を利用している計算になる。延べ人数であることは言うまでも無い。

↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)(積み上げグラフ)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)(積み上げグラフ)

バブル期までは漸増していた利用数も、バブル崩壊あたりで頭打ちとなり、それ以降は減少傾向。今世紀に入ってから再び増え始めるが、金融危機・リーマンショックで再び減少に。2012年度に入りようやく再び増加を見せている。

また1990年代後半以降は、増加分のほとんどは私鉄によるもので、JRはほぼ横ばいの動きを示しているのが興味深い。他方直近数年の上昇分では私鉄だけで無くJRにも伸びが見られ、これまでの上昇の仕方とはやや異なる方向性にあることが分かる。景気回復基調と定年退職者の急増に伴う旅行機運の高まりに加え、自動車による長距離移動が避けられるようになった、人口の都市集中化に伴い自動車を使う機会が減ったなど、さまざまな要因によるものと推定される。

総人口は減少傾向にあることを考えれば、一人一人の利用回数が増えていることになり、鉄道そのものへの注目が高まっていると見て問題はあるまい。

「人キロ」では?

鉄道などの交通機関の利用状況を示す指標の一つとして「人キロ」と呼ばれる単位がある。これは言葉の通り、旅客者数とその旅客を輸送した距離を掛け合わせたもの。例えば一人が10キロ移動すれば10人キロ。この値が多いほど、多くの人がより遠くまで利用したことになる。また旅客数の増加と比べて人キロの増加度合いが大きければ、単に利用客数が増えただけで無く、鉄道で遠出をする人が増えたことを意味する。

↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)(積み上げグラフ)
↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)(積み上げグラフ)

結果として人キロの動向は、旅客数そのものとの違いはあまり見られなかった。利用客内部における利用スタイルに、劇的な変化が起きたわけでは無く、純粋に利用客が増加したことになる。

もっとも各数字を用いて概算的に「利用客の平均移動距離」を試算すると、私鉄は概して減少する傾向があるのに対し、JRはここ数年増加する動きを示している。

↑ 鉄道・軌道旅客一人当たり平均利用距離(キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客一人当たり平均利用距離(キロ)

長距離の旅行利用者の増加が、平均値にも変化をもたらしているのかもしれない。

「交通関係統計等資料」では残念ながら利用客の年齢階層別の構成までは把握できておらず、鉄道利用客における年齢動向は今件の限りでは確認できなかった。もっとも鉄道の利用客はほぼ横ばいで推移し、この数年はむしろ増加する傾向にあることが分かっただけでも幸いである。

なお年間245億9800万人は、単純計算では1日当たり約6739万人となる。延べ人数だが、大よそ日本中の人の二人に一人が鉄道を利用している計算となる次第ではある。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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