子供達のプライベートなインターネットの利用時間は食事や睡眠、勉強時間を削って作られている
勉強や睡眠時間を削ってまでスマートフォンとにらめっこをしているように見える子供の姿は、保護者には不安材料でしかない。それが事実か否かを総務省統計局による社会生活基本調査(※)の公開値から確認する。
次以降に示すのは就学学校種類別に見た、「スマートフォン・パソコンなど」の使用をした1日平均時間別の、週全体における生活時間の内情。平日だけでなく土日も合わせた平均値(平日5日分、土曜と日曜1日分を合算して7で割っている)であることに注意。
まずは小学生。
小学生で1日12時間以上もインターネットを使う人はごく少数のため、男性では特異な結果、女性では有意値が出ない状態となっているが、それを除いても大よそ、インターネットを使用する時間が長い人ほど「身の回りの用事、食事」「睡眠」「仕事・学業」時間が減り、その分「自由時間」が増えているのが分かる。「その他」も減っており、多様な雑多な行動もインターネットの利用に割り当てられているのだろう。
続いて中学生。
中学生では小学生以上に明確に「身の回りの用事、食事」「睡眠」「仕事・学業」の時間が減り、その分「自由時間」が増えている。1日12時間以上のインターネット使用は特異な例としても、例えば中学生の女性の場合、6~12時間未満の人はまったく使用しない人と比べ、学業の時間が80分も少なくなっている。
最後は高校生。スマートフォンの多用による日常生活の乱れが大いに懸念されるお年頃ではある。
「自由時間」を増やすために削る対象が、男女間で大きく異なるのが注目に値する。男性は「仕事・勉強」を大きく削り、次いで「身の回りの用事、食事」を削っている。「睡眠」はほぼ同じで、むしろスマートフォン・パソコンなどの使用時間が長い方がよく寝ている傾向が見受けられる。
他方女性は男性と比べると「仕事・勉強」を削る時間は少なめで、「身の回りの用事、食事」はほとんど変わりがない。その代わりに「睡眠」の削られ方がやや大きくなっている。男女間でスマートフォンの利用と天秤にかけて、何が後回しにされるのか、その対象が違っているのは興味深い。
今件は主要行動時間の平均値。いわゆる「ながら行動」における副次行動は含まないため、どの属性でも多少の誤差はあれど原則として合計24時間となっている。土日も含めた週全体の平均値だが、スマートフォンなどの利用でどこまで日常生活が圧迫されているのか、それがよく分かる結果には違いない。
もっとも当事者にとっては、スマートフォンなどによるさまざまなサービスの利用もまた、日常生活の一環に過ぎないという認識なのだろうが。
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※社会生活基本調査
5年おきに実施されている公的調査で、直近分となる2016年分は2010年時点の国勢調査の調査区のうち、2016年の熊本地震の影響を受けて調査が困難な一部地域を除いた、総務大臣の指定する7311調査区に対して実施された。指定調査区から選定した約8万8000世帯に居住する10歳以上の世帯員約20万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2016年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2016年10月15日から10月23日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と回収方式。
今件における「スマートフォン・パソコンなど」の使用とは、インターネット接続により得るサービスの使用を意味する。また、インターネットに接続して入手したアプリケーションや音楽の使用も含む。さらに学業や仕事での使用は該当しない(学業は「学校での使用」と限定されていないので、自宅で学習目的に情報検索をする場合も該当しない)。要はプライベートでのインターネットの使用である(グラフ中の生活時間の仕切り分けでは「自由時間」に該当する)。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。