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ボランティア活動の実態をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 多種多様な需要のあるボランティア活動。その実情は(ペイレスイメージズ/アフロ)

ボランティア活動をする人の実態

報酬を目的とせずに自分の労力や技術、時間を提供して地域社会や個人、団体の福祉増進のために行う活動をボランティア(活動)(※)と呼んでいる。その実情を社会生活基本調査(※※)の結果公開値から確認する。

調査時点において過去1年間にボランティア活動をしたか否かを聞いたところ、2016年では26.0%の人が経験ありとの結果が出た。

↑ 「ボランティア活動」の年齢階層別行動者率(2016年)
↑ 「ボランティア活動」の年齢階層別行動者率(2016年)
↑ 「ボランティア活動」の年齢階層別行動者率
↑ 「ボランティア活動」の年齢階層別行動者率

ボランティア活動の行動者率は未成年者で1/4以上に達しているが、20代後半にかけて漸減し、それ以降は再び増加、40代をピークとし、以降は60代前半まで下がったあと、再びいくぶんの増加を示し、75歳以上で大きく落ちる。活動内容にもよるが、時間的・精神的余裕があるか否かが大きいと見れば納得のいく動きではある。

実際、普段の就業状態別で見ると、働き盛りの中堅層では無業者の方がボランティア活動をしている人の割合は高い。就業者は時間が取りにくいので行動者率が落ちる次第。

↑ 「ボランティア活動」の年齢階級別行動者率(2016年)(普段の就業状態別)
↑ 「ボランティア活動」の年齢階級別行動者率(2016年)(普段の就業状態別)

経年変化で中堅層の値が落ちているのは、この層が多忙になったことに加え、女性の就業率が共働きで上昇しているのが要因だろう。

他方50代以降では有業者の方が高い値が出ているのは、時間的余裕よりも精神的な、あるいは身体上の理由によるところが大きいと考えられる。75歳以上で大きく無業者の値が落ちているのが好例だが、高齢層の無業者は仕事ができないほどに気力や体力が衰え、ボランティア活動に手を出すのも難しいと考えれば道理は通る。また、周囲も身体を気遣って参加を止めるかもしれない。

ボランティア活動の中身

「ボランティア活動」とひとまとめにしてあるが、中身としては多種多様な活動がある。その内容を確認したのが次のグラフ。

↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(2016年)
↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(2016年)

「まちづくりのための活動」がもっとも多く11.3%、ついで「子供を対象とした活動」が8.4%、「安全な生活のための活動」が5.0%、「自然や環境を守るための活動」が4.0%で続く。2011年の震災時に大きく伸びた「災害に関係した活動」は前回調査の2011年における3.8%から大きく後退し、1.5%に過ぎない。

なお各ボランティアの種類だが、その内容に関連する年齢や性別で、活動に参加する人の割合は大きな違いが生じている。例えば「子供を対象とした活動」では中堅層の女性が大きな値を計上している。

↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(2016年、男女・年齢階層別、「子供を対象とした活動」)
↑ 「ボランティア活動」の種類別行動者率(2016年、男女・年齢階層別、「子供を対象とした活動」)

男性も他の年齢階層と比べれば中堅層で大きめの値が出ているが、女性は男性の数倍の行動者率。40代前半では3割近い人が子供を対象にしたボランティア活動をしている。自分の子供も対象になりうるとなれば、参加する人が多いのも理解できる話ではある。

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※ボランティア(活動)

社会生活基本調査では報酬を目的とせずに自分の労力や技術、時間を提供して地域社会や個人、団体の福祉増進のために行う活動を指すが、交通費などの実費程度の金品の支払いが生じた場合は報酬と見なさず、ボランティア活動に含む。一方、ボランティア団体が開催する催し物に参加しただけの場合は、該当活動とはみなされない。

※※社会生活基本調査

5年おきに実施されている公的調査で、直近分となる2016年分は2010年時点の国勢調査の調査区のうち、2016年の熊本地震の影響を受けて調査が困難な一部地域を除いた、総務大臣の指定する7311調査区に対して実施された。指定調査区から選定した約8万8000世帯に居住する10歳以上の世帯員約20万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2016年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2016年10月15日から10月23日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と回収方式。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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