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世界の二酸化炭素排出量の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自動車の排気ガスもまた二酸化炭素に他ならず(ペイレスイメージズ/アフロ)

もっとも二酸化炭素を出しているのは中国

温暖化に深く関わりのある問題として注目されている二酸化炭素の排出量。その実情を国際エネルギー機関IEA(The International Energy Agency)の最新公開資料(※)を基に確認する。

まずは世界全体の二酸化炭素排出量における、各国の比率。前年の2014年分では中国・アメリカ合衆国の順だったが、2015年分でもそれに変わりはない。

↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2015年時点、IEA調べ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2015年時点、IEA調べ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(2011~2015年時点、IEA調べ)(直近年上位国のみ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(2011~2015年時点、IEA調べ)(直近年上位国のみ)

注目すべき動きとしては、新興国で増加を示しているのが挙げられる。中でも中国の増加ぶりが目に留まる。直近では中国だけで世界の3割近い二酸化炭素を排出している計算になる。また絶対量は中国と比べれば少ないものの、インドも伸び方が著しい。他方アメリカ合衆国では経済復興の中でもむしろ減るようにすら見え、炭酸ガス排出対策が進んでいることがうかがえる。ドイツやロシアでも減少の動きが見られる。

日本ではグラフの対象期間内では一時期増加の動きにあったが、これは単なる経済復興だけでなく、震災起因による発電様式の変更を余儀なくされたことによるもの。ただし2014年以降は減少に転じており、他国同様効率化が進んでいる動きが見受けられる。

比率の変化や国民一人当たりで

主な排出量上位国について、前世紀末の2000年以降の、各年における全体比の動向を示したのが次のグラフ。中国、アメリカ合衆国など上位国の相対的な位置関係の変化が見て取れる。

↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2000~2015年時点、IEA調べ)(赤囲みは日本)
↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2000~2015年時点、IEA調べ)(赤囲みは日本)

上位2国(中国・アメリカ合衆国)による全体比は上昇する一方、2006年に米中間で順位が入れ替わり、その後も両国の差異は広がるばかりとなっている。また2009年以降は第3位の位置にあるインドもシェアを拡大し、直近2015年では上位3か国で全体の50.0%にまで達している。

最後に示すのは、排出量を単純に各国人口で除算して、一人当たりの排出量を算出したグラフ。

↑ 国民一人当たりの二酸化炭素排出量(2011~2015年時点、排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)
↑ 国民一人当たりの二酸化炭素排出量(2011~2015年時点、排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)

各国の国内事情、都市集中の度合い、工業化・公害対策技術の違いなど多種多様な要因があり、単純に「一人当たりの量」だけで各国の二酸化炭素排出量について判断することは難しい。例えばこのグラフでは、中国の値はアメリカ合衆国の約4割でしかないが、上のグラフにあるように「国単位での総量」では中国ははるかにアメリカ合衆国を上回る値を占めている。

国単位で「中国」の二酸化炭素排出量が世界最大である事実に違いはなく、たとえ一人頭の排出量が他国より少なくとも、「国単位として」課せられた責任は大きい。そもそも「国」とはその領域内におけるさまざまな要素の集合体であり、内包するものを統括する存在なのだから。

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※IEAの最新公開資料

具体的には「CO2 Emissions from Fuel Combustion- Highlights-」。現時点では2017年発行分で、2015年時点のデータが最新。今件値は燃料消費行動に伴う排出量であり、人間などの生物による生体活動に伴い排出される量は勘案されていない。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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