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米国では介護ロボットはあまり知られていないが実現性はそこそこあると思われている

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ロボットによる介護もそう遠い未来の話ではないのかも(筆者作成/撮影)

ロボットやコンピューターのような新技術の開発と普及で社会の仕組みや構造は大きく変化していくが、その領域の一つに挙げられるのが介護分野。世界各国で高齢者や病症者の介護への社会的な負担は高まり、その解決手段として介護ロボットなどの新技術の導入が注目されている。今回は米国における介護ロボットに対する認識を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した、技術と人々の暮らしに関わる調査結果「Automation in Everyday Life」(※)を元に確認していく。

まず最初に示すのは、高齢者向けの介護ロボットへの純粋な認知度と実現性への認識。介護ロボットの類には人による介護のサポート役となるタイプのものもあるが、今件ではあくまでも完全自動型のものを指している。

↑ 完全自動の高齢者向け介護ロボットが将来登場すると見聞きしたり考えたことはあるか・実現すると思うか(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 完全自動の高齢者向け介護ロボットが将来登場すると見聞きしたり考えたことはあるか・実現すると思うか(2017年5月、米国、18歳以上)

完全自動の高齢者向け介護ロボットが製品化を目指して研究開発されているとの認識は35%。2/3近くは見聞きしたことも無ければ自分で考えたことも無い。他方、そのようなロボットが将来登場して社会に普及するか否かに関しては、6割近くが肯定的な認識をしている。無理だろう、現実的ではないとする意見は4割。認知度と比べればそれなりに期待はされているようだ。

介護ロボットは当然介護される者に対して使われるわけだが、自分自身、あるいは自分の家族に対し、介護ロボットを使いたいか否かを聞いた結果が次のグラフ。現時点では製品化されていないためにあくまでも想像の範囲での話となるが、4割強の人が自分自身や家族に(現在、将来を問わず)介護ロボットを使ってみたいと答えている。

 ↑ 自分自身や家族に使う目的での介護ロボットに興味がある人の割合(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 自分自身や家族に使う目的での介護ロボットに興味がある人の割合(2017年5月、米国、18歳以上)

男女別では男性、年齢階層別では若年層、学歴別では高学歴の方が、介護ロボットへの興味度は高くなる。技術的な問題への信頼を寄せているか否か、コストの問題、そして何よりも昔ながらの慣習にこだわっているか否かが影響した結果なのだろう。特に年齢階層別で、回答者自身が(遠くないうちに)用いられる必要性の高い高齢層ほど、介護ロボットーの興味が薄いのは、ロボットに介護されることがモノとして扱われているとのイメージへの抵抗感や、信頼性への不信が多分にあるものと考えられる。

完全自動運転車のように技術がさらに進歩して安全性が高まり、コスト的なハードルも下がってくれば、もう少し興味を持つ人も増えてくるのだろうか。

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※Automation in Everyday Life

調査専用の調査対象母集団(RDD方式で選択された固定電話・携帯電話を有するアメリカ合衆国の18歳以上を対象に選択)を対象に2017年5月1日から15日にかけて実施されたもので、有効回答数は4135人、うち就業者は2510人。国勢調査の結果を基に性別、年齢、学歴、人種、支持政党、地域、就業中か否かなどの属性でウェイトバックが実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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