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27の州や地域は18歳以上の3割以上が肥満判定…アメリカ合衆国の肥満実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 肥満体質は健康にはマイナス。気になる人も多いはずだが……(ペイレスイメージズ/アフロ)

肥満の18歳以上が3割以上いるのは27の州・地域

食生活などの影響で肥満体系の人が多いアメリカ合衆国。その実情を同国の医療保険関連の公的機関CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病予防管理センター)の部局BRFSS(Behavioral Risk Factor Surveillance System)の公開値を元に確認する。

まず図中で使われる「BMI」について。これは「肥満」度合いを示す基準の一つで「体重÷身長÷身長」で算出される。日本肥満学会ではBMIが22.0で平均的体格・体重、25.0以上を太り気味、18.0以下をやせ気味としている。今件データを用いるアメリカ合衆国では

・Underweight(やせ型)……18.5以下

・Normal weight(標準体重)……18.5~24.9

・Overweight(過体重)……25.0~29.9

・Obesity(肥満)……30.0以上

と区分している。

次の図は、アメリカ合衆国各州などにおける成人男女(今件では18歳以上基準)のBMI値について、30.0以上の人、つまり肥満判定を受けている人の割合を示したもの。例えばWest Virginia州は37.7%とあるので、大人の1/3強が「肥満」判定を受けていることになる。

↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者比率(BMI 30.0以上、州別)(2016年、CDC・BRFSS)
↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者比率(BMI 30.0以上、州別)(2016年、CDC・BRFSS)

30%以上の州を薄い赤で色分けしたが、この領域に該当するのは全部で27の州や地域。最大値を示すWest Virginia州は37.7%、次いでMississippi州が37.3%、Alabama州とArkansas州が35.7%と続いている。全米土の平均(自治的地域含む)では30.1%で、国全体としても30.0%超え。最低の値を示すColorado州でも22.3%。5人に1人強が肥満状態にある。

肥満以外の人の実情

肥満以外の判定を受けた人の割合の実情を精査した結果が次のグラフ。なお並びは上記グラフ同様、肥満の人の割合が多い順にしてある。

↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者などの比率区分(州別)(2016年、CDC・BRFSS)
↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者などの比率区分(州別)(2016年、CDC・BRFSS)

全米では30.1%が「肥満」、35.3%が「過体重」。「標準」は33.0%、「やせ型」は1.8%に留まっている。

州・地域によっては肥満判定者が多いにも関わらず標準・やせ型の割合も多いところもあるが、概して「肥満」と「過体重」の合計が6割から7割を維持しているのが分かる。つまり「肥満」の少ない州でも多分に「過体重」の比率が高く、「標準」+「やせ型」の比率が一定(4割足らず)に留まっている。「標準」「やせ型」の合計が4割を超えているのは3州・地域のみ。5割超えは皆無。あまり想像したくはないが、これが現実である。

さらに前年分、つまり2015年分における「肥満」判定を受けた人の割合を今回2016年分と比較すると、増えた州と地域の数は減った州と地域の数の2倍強にあたることが確認されている。

↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者比率(BMI 30.0以上、州・地域別)(2015年から2016年への変移、CDC・BRFSS、ppt)
↑ アメリカ合衆国の大人(18歳以上)における肥満判定者比率(BMI 30.0以上、州・地域別)(2015年から2016年への変移、CDC・BRFSS、ppt)

全体集計ではないため誤差が生じている可能性はあるが、プラスの州・地域がマイナスの州・地域の数と比べて多いことが一目瞭然なこのグラフは、アメリカ合衆国において成人の肥満者が確実に増加していることを再認識させてくれるのには十分な結果ではある。

ここまで肥満者が増えた原因は多種多様に及び、「これのみが原因」と言い切ることはできない。基本的な生活様式に加え、食生活の改善と変化、交通機関の整備、社会生活そのものの変移、さらには現在4000万人強の人が対象となっているSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program:補助栄養援助プログラム、旧フードスタンプ。2017年7月時点で4120万3721人が対象)が一因との考え方もある。さらにデータ取得元の肥満に係わるページのデータベースでは、今件データの他に果物・野菜の摂取量などに関わるデータも併記されており、これらの多い少ないが肥満と浅からぬ関係を有していると考えられているようだ。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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