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紙かインターネットか…公的情報をどのような媒体で受け取りたいのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 最近では各省庁とも公式のウェブサイトで情報を発信している(防衛省公式サイト)

国や自治体、官公庁などが公的な情報を発信するのは、一人でも多くの人にその情報を知らせたいからに他ならない。その情報伝達能力には限りがあるため、マスコミ・マスメディアが仲介役に立ち広域に情報を拡散しているのだが、昨今ではよりハードルの低い情報発信・受信ができるインターネットの普及に伴い、マスコミなどの仕事ぶり・信ぴょう性の実情が明らかになりつつある。このような状況の中では、今まで以上に一次ソースとなる国や自治体の情報発信の重要性が高まるわけだが、どのような媒体で取得したいと望まれているのか。今回は文化庁が2017年9月に発表した「国語に関する世論調査」(※)の報告書から確認する。

次に示すのは国や自治体などが情報を発信し、その情報を得る時にどのような媒体で読みたいのか、もっとも自分の意見に近い選択肢を選んでもらった結果。紙媒体とインターネットを主軸として、どちらをより望んでいるのか尋ねている。

↑ 国や自治体が発信した情報を得るに当たって、どんな媒体で読みたいか(2016年度、択一回答)
↑ 国や自治体が発信した情報を得るに当たって、どんな媒体で読みたいか(2016年度、択一回答)

最多回答選択肢は「主に紙で印刷したもの」で47.9%。次いで「紙とインターネットどちらでも構わない」で25.5%。紙媒体を望む意見が多く、インターネットのみでは好ましくないと考えている意見が多数となる。

これを年齢階層別に仕切り分けした結果が次のグラフ。

↑ 国や自治体が発信した情報を得るに当たって、どんな媒体で読みたいか(2016年度、択一回答)(上位陣、年齢階層別)
↑ 国や自治体が発信した情報を得るに当たって、どんな媒体で読みたいか(2016年度、択一回答)(上位陣、年齢階層別)

大よそ普段から使っているメディアに連動する形での結果が出ている。「主にインターネットで公開」は若年層ほど高く、「主に紙で印刷したもの」は高齢層ほど高くなる。しかし若年層から中堅層までは紙とインターネットどちらでもよいとする意見が4割前後を維持し、両方並列提供が望ましいとの意見も2割前後。高齢層の方が柔軟性に欠けている結果ではある。

では具体的に国や自治体がお知らせなどの文章を作る際に、どのような点に配慮して欲しいのか。言葉や表現と、表記や形式に関してそれぞれ複数選択肢を提示し、4割以上の同意が得られたものが次のグラフ。残念ながら年齢階層別の値は非開示。

↑ 国や自治体がお知らせなどの文章を書く際に、配慮して欲しいことは何か(2016年度、複数回答、上位陣)
↑ 国や自治体がお知らせなどの文章を書く際に、配慮して欲しいことは何か(2016年度、複数回答、上位陣)

言葉や表現では専門用語が読み難いとの趣旨の意見が多い。簡単な言葉に言い換えるか、少なくとも説明などが必要だとしている。また表現も回りくどく無くはっきりとした表現が求められている。もっとも公的なお知らせの多くは専門用語が絡んだ話であり、それらのすべてを容易な表現で示すと文章量が過大なものとなる。しかし読みやすくしようとすると、説明が抜ける部分が生じてしまう。家電製品のように「利用パンフレット(簡易版)」「詳細説明書」の2本立てにするのも一案だが、多くのリソースが必要となる。

表記や形式では読みやすさを求める声が多い。役所的な文書ではどうしても堅い文章となり、指摘されているような点が成されていない。「フランクすぎる」との批判が生じるかもしれないが、これらの配慮による変更は専門用語の差し替えよりは容易にできるはずである。

国や自治体によるお知らせなどの文章は多くの人に読まれる必要がある。本来仲介役となるメディアが仕事をまともにしていれば、このような問題もあまり起こらないはずなのだが。

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※国語に関する世論調査

文化庁が毎年実施している調査で、直近分は2017年2月から3月にかけて日本全国の16歳以上の男女に対して個別面接方式にて実施。調査対象総数は3566人、有効回収数は2015人。対象抽出方法などは未公開。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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