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アメリカ合衆国の若者達は6割がテレビ番組を主にネットで観る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ アメリカ合衆国でのテレビ観賞のスタイルは?(ペイレスイメージズ/アフロ)

テレビを観ることは日本だけでなくアメリカ合衆国においても主要な娯楽に違いなく、さまざまな調査でも長時間をテレビ観賞に費やすとの結果が出ている。他方アメリカ合衆国ではテレビ観賞の様式が日本のようなアンテナ経由がメインでは無く、若年層はインターネット経由によるものが多分との話もよく見聞きする。その実情を同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年9月に発表した調査報告書「About 6 in 10 young adults in U.S. primarily use online streaming to watch TV」(※)から確認する。

次に示すのは調査対象母集団に対し、テレビ観賞を主にどのスタイルで行っているのか、択一で尋ねた結果。例えば全体では59%がケーブル・衛星とあるので、6割近くの人はテレビ観賞の様式として、ケーブルテレビか衛星テレビを一番よく利用していることになる。無論複数の様式を用いている場合もあるが、もっとも使うものを答えてもらっている。

↑ 最近どのタイプのテレビを一番よく観ているか(2017年8月、アメリカ合衆国)
↑ 最近どのタイプのテレビを一番よく観ているか(2017年8月、アメリカ合衆国)

全体では59%がケーブルテレビか衛星テレビを用いる。28%がNetflixなどのオンラインストリーミングサービス、そして日本ではお馴染みの地上デジタルアンテナ方式によるものをメインにしているのは9%でしかない。地上デジタルアンテナ方式のテレビを用いている人が9%のみでは無いが(あくまでも「一番よく使っている様式」)、テレビ観賞のスタイルが日本とは大きく異なっている実情が確認できる。

また、年齢階層間のギャップも見えてくる。若年層ではテレビ観賞といえばインターネット経由によるオンラインストリーミングとなるが、歳を重ねるに連れてケーブルテレビや衛星テレビによるものとなる。65歳以上ではテレビ観賞とはケーブルテレビ・衛星テレビによるものだとする人は5%しかいない。

このギャップは単純な年齢階層による差では無く、世代(いつ生まれたか)によるものだと考えられる。時間の経過とともにオンラインストリーミングを主に用いている割合は中堅層、高齢層の順に少しずつ、確実に増えていくだろう(無論新しく大人になった新若年層は、現在の若年層同様、さらにはそれ以上にオンラインストリーミングを多用しているに違いない)。要はインターネットを生活の中心として過ごしている、テレビ観賞においてはオンラインストリーミングを使う人達が少しずつ歳をとり、中堅層を占めるようになった時には、中堅層もまた現在の若年層のように、オンラインストリーミングをテレビ観賞の主な様式として回答するようになる次第である。

報告書ではもう少し細かい属性区分における実情が、断片的ではあるが語られている。

・ケーブル・衛星放送を主に使う人の割合は女性の方が多い。男性は55%だが女性は63%。

・オンラインストリーミングは男性の方が多い。男性31%、女性25%。

・オンラインストリーミングは学歴別では高学歴の方がよく利用されている。大卒以上は35%、高卒は22%。

・地上デジタルアンテナ方式は低年収の人が多く使っている。年収3万ドル未満世帯の人は14%だが、7.5万ドル以上世帯の人は5%でしかない。

インターネットの利用傾向や知識欲、金銭上の問題が反映されており、非常に興味深い。

なお全体値のみだが、前年からの推移も確認できる。

↑ 最近どのタイプのテレビを一番よく観ているか(アメリカ合衆国)(2016年から2017年への全体値の変化)
↑ 最近どのタイプのテレビを一番よく観ているか(アメリカ合衆国)(2016年から2017年への全体値の変化)

2年のみの経過データなので統計上のぶれが生じている可能性もあるが、オンラインストリーミングが伸び、ケーブル・衛星テレビやデジタルアンテナがシェアを食われている実情が分かる。上記で解説した若年層が歳をとることによる世代のシフトに加え、オンラインストリーミングのサービスが拡充し、中堅層から高齢層でも多用する人が増えているのも否定できまい。

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※About 6 in 10 young adults in U.S. primarily use online streaming to watch TV

2017年8月15日から21日にかけて、アメリカ合衆国内に在住する18歳以上の男女に対し、電話による対話形式(使用言語は英語とスペイン語)で実施されたもので、有効回答数は1893人。517人は固定電話、1376人は携帯電話での回答。国勢調査などによる結果をもとにしたウェイトバックが実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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