増える肉類と減る魚介類…主要食品摂取量の実情をさぐる
昨今の日本人の食生活においては、昔と比べると欧米化の傾向にあり、肉食が増えて魚を食べる量が減ったといわれている。その実情を厚生労働省から2017年9月に発表された定期調査「国民健康・栄養調査」(※)の最新版となる2016年分における概要報告書などの公開値をもとに確認する。
次に示すのは魚介類・肉類(それぞれ加工品を含む)、野菜類、乳類(牛乳、加工乳、乳製品全般、粉乳類、クリーム類、乳酸菌飲料、チーズ類やアイスクリーム類など)の一日あたりの平均摂取量を示したグラフ。最新値となる2016年分、そして10年前の2006年分についてデータを併記する。なお今件では未成年者の値も計上されていることから、「総数」は成人だけでなく未成年者も合わせた全員の平均値であることに注意。
まず直近の平均値だが、魚介類は65.6グラム・肉類は95.5グラムと、肉類の方が魚介類よりも多い。また年齢階層別では魚介類が大よそ歳と共に摂取量が増える一方、肉類は15~19歳の摂取量が最大で、あとは歳を重ねるに連れて減少していく。60代以降では魚介類・肉類の立ち位置が逆転し、肉類よりも魚介類の方を多く摂取している計算になる。両食品の特性、普段イメージされている好き嫌いがそのまま数字となって現れており、非常に興味深い。やはり歳をとると肉類は敬遠される傾向にあるようだ。
あるいは個々の「世代」の食生活の日常が、ある程度踏襲されているかもしれない。つまり年齢階層による違いではなく、世代(西暦何年生まれなどの区分)による違いが多分に影響しているのでは、との考え方。それが事実ならば今後、シニア層でも少しずつ肉類の摂取量が増え、魚介類が減り、高齢者でも肉類の摂取量が魚介類以上になる可能性はある。
野菜類は1~6歳時点でこそ少なめなものの、それ以降は40代ぐらいまではほぼ同量、50代以降はむしろ増加していく傾向がある。健康志向の高まりを受けてのものだろう。そして乳類は1~6歳が多め、7~14歳で最大となり、以降は減少、そして50代以降は再び増加していく。乳幼児は子供向けの粉ミルクなど、未成年では学校給食などにおける牛乳や健康のため保護者から与えられる事例が多いのが主要因だと考えられる。高齢になるに連れて増えるのも、健康志向によるものと考えれば道理は通る。
なおグラフ化は略するが、乳類の男女別詳細値を確認すると、30代以降は女性の方が摂取量が多い。ヨーグルトなどの健康志向性の高い乳類を多く摂っているのだろう。
10年前の2006年当時の値も併記したが、それと直近分となる2016年との比較をすると、「魚介類の摂取量が大きく減る」「肉類の摂取量が増える」「野菜類は減少」「乳類は若年層で減少、中堅層以降で増加」などの動きが確認できる。「食文化の欧米化」との表現はあまりにも陳腐だが、肉食に傾きつつあることは間違いあるまい。
10年間の変化を算出した結果が次のグラフ。
どの年齢階層でも肉類は増え、魚介類は減っている。他方変化率では肉類・乳類において高齢層の増加率が大きい結果が出ている。肉類の動きはやや妙に思えるかもしれないが、10年間における重量の増加分に大きな違いは無いため、元々摂取量が少なかった高齢者ほど、比率面では大きな値が出る次第。
健康的な食のバランスを保つためには、偏りなく、多彩な種類の食材を口にしたいものだ。
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※国民健康・栄養調査
健康増進法に基づき、国民の身体の状況、栄養素など摂取量及び生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的とするもの。直近年分の調査時期は2016年10月から11月。調査実施世帯数は10745世帯で、調査方法は調査票方式。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。