男性15.4%・女性10.7%…成人朝食欠食実情をさぐる
「朝食は何も食べない」20代は男性2割、女性1割
世間一般的には朝食も含め一日三食定期的な食事を摂ることが望ましいとされている。他方、朝食は個人差もあり摂らない方が健康的な日常生活を過ごせる人もおり、またそれを推奨する健康法も存在する。成人における朝食の欠食実情を、厚生労働省から2017年9月に発表された定期調査「国民健康・栄養調査」(※)の最新版となる2016年分における概要報告書をもとに確認する。
今項目は調査実施当日において(≒日常的に)朝食を欠食したか否か、欠食した場合はその具体的な内容について尋ねた結果をグラフ化したもの。「欠食」とは単に「一切の飲食をしなかった」だけでなく「タブレットなどによる栄養素の補給、栄養ドリンクのみ」「果物や菓子、乳製品などの食品・飲料のみを食べた場合」も含まれる。時間の都合や健康法などの理由から、これらを朝食に常食している人の中には「自分も欠食扱いになるとは」と驚く人もいるかもしれない。
男性は出勤で朝の時間帯において忙しくなる場合が多いことから、特に20-40代で女性を大きく上回る値を示している。総数でも男性の方が5%近く欠食率が高い。
欠食の内訳をみると20代は従来よく言われている「欠食」を意味する「何も食べず」の比率が高い。男性では全欠食率のうち過半数が「何も食べず」となっている。女性は元々男性と比べて「何も食べず」の割合が低く、1割を超える年齢階層は無い。女性は健康志向(とりわけダイエット的な目的)で、乳製品や果物のみを食する朝食を選択する人が多いと考えられる。
一方で年齢階層別動向をよく見ると、男女共に20代がピークでそれ以降は減少する傾向を示している。ただしピーク時の値は男性の方が高く、漸減の傾斜が大きく男女で異なる形となっている。男女、そして年齢階層における就業状況の違い、朝の出勤時における多忙感が、朝食欠食の状況を生み出す主要因であることが想像できる。女性は中堅層でパートによる就業割合が増加するはずだが、男性の就業と比べれば朝食時間を圧迫されるような出勤スタイルは少ないものと考えられる。
また健康法や体調によるところもあるが、2割の男性20代以外でも、男性では30代から40代で、女性でも20代で1割前後が「まったく食事をしない」朝食欠食をしている。十分以上の留意が必要な値には違いない。
中長期的な朝食欠食の実情
年齢階層別の朝食欠食事情について中期的な動向をグラフ化したのが次の図。一部属性でぶれが生じているが、大よその流れはつかみ取れる。
各調査年における性別・年齢階層代別の相対的な位置関係は直近の2016年分に限らず、大きな変化は無い。男性は20~30代が高く、それ以降は歳を取るにつれて少しずつ減る。女性は20代が高く、30代で大きく減り、それ以降は漸減していく。いずれも就業状況との密接な関連性を想起させる値である。ただし直近年では男性20代と女性30代が平年よりも大きく伸びたため、男女における歳を経ての減少の仕方が逆転したかのようにも見える。
他方男性共に40代から50代にかけては、中期的に朝食欠食率が増加しているようにも見える。特に男性40代ではこの10年強で約10%ポイントの増加が見受けられる。多忙感が引き起こすものとは思われるが、留意が必要な動きには違いない。
成人の朝食欠食は、ダイエットにせよ多忙にせよ、自己責任の部分が大きい。欠食の内情や経年変化を見る限りでは、男性は仕事の忙しさ、女性はそれに加えてダイエットなどの思惑により朝食を抜いていることが想像できる。40代から50代、特に男性における漸増傾向は、仕事の多忙感に加え、中堅層の肥満傾向への警鐘への反応も一因かもしれない。
可能ならば三食欠かさず食するのがベスト。個々の身体的などの事情でそれがかなわぬ場合をのぞき、朝の出勤前の時間が十分に取れない状況は理解できるものの、工夫を凝らして朝食を、せめて乳製品や果物などで補完的な飲食を摂るぐらいは果たして欲しいもの。今件データの限りでは、それらの摂取では「欠食」判定されてしまうが、何も摂らないよりは自身の体にとって、はるかに良いに違いない。
■関連記事:
「毎朝しっかりと朝食を食べている」中学生は8割強…若年層の朝食欠食状況をグラフ化してみる
※国民健康・栄養調査
健康増進法に基づき、国民の身体の状況、栄養素など摂取量及び生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的とするもの。直近年分の調査時期は2016年10月から11月。調査実施世帯数は10745世帯で、調査方法は調査票方式。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。