乳幼児の経済的な世帯負担額をさぐる
日常生活の上で自立が困難な子供は、大人による庇護の下で生活が必要不可欠。特に小学校に入学する前の乳幼児では、多分な手間も、経済的な負担も必要となる。今回は厚生労働省にて発表された年次定点観測的調査「国民生活基礎調査の概況」(※)の公開データをもとに、経済的な負担の実情を確認する。
次に示すのは乳幼児(ゼロ歳から小学校就学までの子供)が一人いる世帯における、世帯ベースでの育児にかかった費用の平均値。一か月あたりの金額となる。具体的な計上要件としては保育費、医療費、家具・寝具などの費用、衣服費、衛生費、乳児にかかる費用(ミルク代、離乳食代、紙おむつ代など)、小遣い、おもちゃ代、運動用具代などの費用。ミルク代、離乳食代は含まれるが、それ以外の飲食費や光熱水道費、住居費などは含まない。要は原則として、その乳幼児が居ることで初めて発生する費用。
特定一か月における計上費用の平均値のため、年ベースで利用するものを調達した世帯の回答も含まれていることから、単純な消耗品のみの費用よりは多少なりとも底上げされているはず。2歳児までは3.5万円、3歳児以降は4万円以上となり、5歳児での4.5万円がピークとなる。年間で54万円。単純に金額面だけで見ても、小さからぬ負担に違いない。
専業主婦ならば育児の多分を父母が行えるが、兼業主婦などでそうはいかない場合も多々ある。その場合、保育所などに日中預け入れをお願いすることになるが、当然相応の費用がかかることになる。施設利用をしている人としていない人では、当然している人の方が費用は大きなものに。
6歳でやや差異は縮まるが、それ以外は大よそ2倍近くの差がついている。施設を利用するのは多分に家計の補てんのための就業によるものだが、そのために経費がさらに上乗せされるのは、仕方がない面もあるものの、理不尽さを覚えるのも否定はできない。
具体的な利用施設別の費用は次の通り。
認可保育所や認定こども園は安め、幼稚園はややお高くなるがそれでも数千円の上乗せ程度。しかし認可外保育施設になると万単位での上乗せが求められることになる。施設の性質上高コストとなるのは仕方がないが、経済上の負担を少しでも減らすためには、認可保育所や認定こども園のカバーできる領域をさらに拡大していくことが求められるのだろう。
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※国民生活基礎調査
全国の世帯及び世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2016年6月2日・7月16日にそれぞれ世帯票・所得票・介護票、所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収できたデータは世帯票・健康票が22万4208世帯分、所得票・貯蓄票が2万4604世帯分、介護票が6790人分。