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通院している人はどれぐらい居るのだろうか? 通院率をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 総合病院以外にも歯科や眼科なども合わせると、多数の診察券を持つ人もいるはず(ペイレスイメージズ/アフロ)

入院して管理された環境の中で徹底治療をするほどではないが、定期的な検査と診察が必要な病状にある人が求められる通院。どれほどの人が通院をしているのだろうか。厚生労働省が2017年6月に発表した「国民生活基礎調査の概況」(※)から確認する。

今回スポットライトを当てるのは、病気やけがなどで病院に通っている人、つまり「通院者」の割合について。計算を行う際に入院者は通院者にはカウントされないが、比率を計算する際の世帯人員数には入院者自身も含まれる。例えば「通院者」が39.2%だったとして、残りの60.8%が全員病院と無関係なわけではなく、何%かは入院していることになる(入院者は今件調査時には回答できないため、当然入院者率は調査回答項目には無い)。

さてまずは年齢階層別の通院者率。全体では4割近くの39.2%。30代までは2割内外だが、40代以降は急激に増加。70代以降は7割をキープしている。平均的な定年年齢である65歳以上で区切れば、約7割が何らかの形で通院中となる。

↑ 年齢階層別に見た通院者率(通院者には入院者は含まず(分母となる世帯人員数には入院者含む)(2016年)
↑ 年齢階層別に見た通院者率(通院者には入院者は含まず(分母となる世帯人員数には入院者含む)(2016年)

若年層の通院率がいくぶん高めに見えるかもしれない。これは一般の病院の他、歯医者や眼医者なども合わせて通院とカウントしているからに他ならない。子供のうちは虫歯関連で歯医者、そして視力のチェックや眼鏡装着周りで眼科に通う人は少なくない。

これを男女別に見ると、10代までは男性が、それ以降はほぼ女性の方が通院率が高くなる。女性は妊娠や腰痛など、入院の起因となる要素が多いからだと考えられる。

↑ 年齢階層別に見た通院者率(通院者には入院者は含まず)(男女別)(分母となる世帯人員数には入院者含む)(2016年)
↑ 年齢階層別に見た通院者率(通院者には入院者は含まず)(男女別)(分母となる世帯人員数には入院者含む)(2016年)

特に20代から30代にかけての男女の差異が、妊娠周りによる通院機会の多さを指し示している。

やや蛇足ではあるが、通院者における対象となる病症の上位5項目を、男女それぞれに集計し、以前の調査との差異も確認するため、過去2回分と併記したグラフは次の通りとなる。

↑ 通院者率の上位5傷病(複数回答、男性)
↑ 通院者率の上位5傷病(複数回答、男性)
↑ 通院者率の上位5傷病(複数回答、女性)
↑ 通院者率の上位5傷病(複数回答、女性)

男女とも高血圧症がトップで、男性は糖尿病に歯の病気、女性は目の病気に歯の病気が続く。経年変化を見ると男女とも高血圧症、そして男性の糖尿病と目の病気が増加しているのが確認できる。いわゆる生活習慣病のうち、上位項目としてラインアップされ、三大成人病とも言われている「糖尿病」「脂質異常症」「高血圧」のうち、男女共に5位以内に2つが入り、しかも男性では2つも、女性でも1つが通院者率の増加を示している。

これらの疾病で通院する状況に陥らないように日々の生活習慣の改善を目指すと共に、定期的な検診を受け、兆候が確認されたら可及的速やかに改善のための治療を受けるようにしたいものだ。

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※国民生活基礎調査

全国の世帯及び世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2016年6月2日・7月16日にそれぞれ世帯票・所得票・介護票、所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収できたデータは世帯票・健康票が22万4208世帯分、所得票・貯蓄票が2万4604世帯分、介護票が6790人分。

今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2016年分)は大調査に該当する年であり、世帯票・所得票だけでなく、健康票・介護票・貯蓄票に該当する調査も実施されている。

また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大地震・震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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