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都道府県別タブレット型端末利用率をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ノート感覚で使えるタブレット型端末。その普及率は地域で差が生じているのか(写真:アフロ)

昨今のインターネット界隈の動向を見聞きするに、ハード面ではスマートフォンとタブレット型端末、ソフト・サービス面ではソーシャルメディアに熱い視線が向けられ、多くの人が手に取り体験している。そして奇しくもそれらのハードとソフトは密接な関係にあり、片方がもう片方の浸透に小さからぬ貢献をしている実態がある。今回はハード面における注目対象のうちタブレット型端末について、都道府県別のインターネット利用率の現状を総務省が2017年6月15日に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に確認していく。

次に示すのは各都道府県別のタブレット型端末によるインターネット利用率。例えば北海道では25.1%との値が出ているが、これは調査対象母集団(6歳以上)の北海道在住者全体のうち25.1%が、タブレット型端末でインターネットを利用していることを意味する。北海道に住むインターネット利用者のうち25.1%では無い。

↑ タブレット型端末でインターネットを利用している人(2016年、各地域全体)
↑ タブレット型端末でインターネットを利用している人(2016年、各地域全体)

東京を中心とした関東圏、大阪府などの近畿圏、福岡県などの九州北部圏など、人口密集地帯・都市地域で比較的高い値を示している。一方で、それ以外の地域のうち、人口が比較的少なめな都道府県では値が低く抑えられている感はある。特に北日本では少なめな雰囲気が強い。

都道府県別に仕切っても、3割はまだ超えていないものの、多くの地域では2割前後の値を示している(全体平均が23.6%なのだから当然といえばそれまでだが)。かつてタブレット型端末といえば「iPad」のみが知られ、半ば以上「タブレット型端末」イコール「iPad」であり、高級サブマシン的な存在として認知されていた。そして外で実際に使っている様子を目に留めた際には、ついレアなアイテムを見つけたかのような、好奇心のまなざしを向けてしまっていたものだ。そのような状況からは、大きな変化が生じていることに違いは無い。

上記グラフは各都道府県の動向を知るのには役立つ。しかし数字の上での上位陣・下位陣を探すのには少々難儀する。そこで並べ替えをした上で、上位10位、下位10位のものを別途生成した。

↑ タブレット型端末でインターネットを利用している人(2016年、各地域全体)(上位10位)
↑ タブレット型端末でインターネットを利用している人(2016年、各地域全体)(上位10位)
↑ タブレット型端末でインターネットを利用している人(2016年、各地域全体)(下位10位)
↑ タブレット型端末でインターネットを利用している人(2016年、各地域全体)(下位10位)

最上位は東京都の32.7%、次いで神奈川県の29.9%、大阪府の26.5%、北海道の25.1%。多くは人口が多い地域。北日本の多くが低い値に留まっている中で、北海道が上位にあるのは意外な感。一方、下位(縦軸の仕切りはあえて上位グラフと揃えている)は青森県の12.7%が最下位で、岩手県、そして山形県や秋田県など、どちらかといえば人口比率で高齢層が多い地域が名前を連ねている。また北日本の地域が多いのも特徴的。さらにはスマートフォンによるインターネット利用率が低い地域とも共通する部分が多い。

タブレット型端末の所有・利用は年齢属性との関係が深いことから、このような傾向が生じるのも十分理解はできる。一方で、タブレット型端末の利用性向としては、子供の玩具として保護者から貸し与えられる事例が多いが、今件データでは子供の比率の多少との相関・因果関係までは確認できない。もう少し子供におけるタブレット型端末の利用性向が大きな値となれば、具体的な地域別での連動性の動きも見えてくるだろうか。

機動力や必要性、利用ハードルや価格の違いから、タブレット型端末はスマートフォンほどの加速感で普及しているわけではない。直近の2016年分のデータを精査する限りでは、スマートフォンの浸透率がやや低い幼少児や一部のシニア層において、多少ながらも他の年齢階層と比べると高い値が見受けられる。スマートフォンのようにはっきりとした形で「人口密集地帯=若年層比率が高いエリア」ほど高利用率との結果が出ないのも、この特性によるものと思われる。

タブレット型端末の普及率上昇は、特に屋内系ネットアクセスの機動力の向上に加え、電子書籍の普及にも一役買うことになる。日本でもアメリカ同様の高い普及率(4割以上のとの調査結果もある)を果たし、電子書籍関連の市場発展に寄与してほしいものだ。

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※通信利用動向調査

2016年11月~12月に世帯向けは都道府県及び都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送・オンラインによる調査票の配布及び回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万7040世帯(4万4430人)、2032企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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