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米国で読書離れ・テレビ離れは進んでいるのか、時間配分の観点からさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 1日は24時間しかない。ネット注力時間が増えれば読書やテレビは減るはず!?

性別や年齢階層別の平日動向

インターネットの普及浸透で読書やテレビ観賞などの従来の趣味趣向へ割く時間が減っているとの主張がある。米国の実情を同国労働省労働統計局が定点観測的に調査を行いその結果を発表している、同国国民の生活様式に関わるデータから確認する。

次以降に示すのは15歳以上における各属性別の、各娯楽に関わる1日あたりの従事時間の平均値。時間単位で示してあり、小数点以下も時間での区切りであることに注意(「0.50」は「50分」ではなく「0.5時間=30分」)。今件は主従事と認識した時間のみで、いわゆる「ながら行動」の時間は含まれていない。

なお項目上の「ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作」とは「パソコンによるインターネットでのブラウジング、ゲーム、ソーシャルメディアへのアクセス(私的娯楽使用)」以外に「ボードゲームやカードゲームなど」のような実体系ゲーム、そして家庭用ゲーム機によるゲームも(デジタル系機器には違いない)該当する。「読書」は特に説明はないが、他の同国の調査動向を見る限り、電子書籍の閲読もまた該当するものと考えられる。要は解説の説明がない以上、回答者が「読書をしている」と認識した行為の時間。

まずは平日において男女別にテレビ観賞、読書、ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作、そしてそれら以外の娯楽行動も合わせた娯楽時間の総計での、過去から直近年までの推移。

↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(テレビ観賞)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(テレビ観賞)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(読書)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(読書)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(娯楽時間総計)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(娯楽時間総計)

まず男女別だがテレビ観賞とゲーム、娯楽総計は男性が上、読書は女性が上。これは昔も今も変わらない。また経年変化的に差異が拡大・縮小することも見られず、男女間の趣味趣向の全体的な相違に変化は無いように見られる。

そして時代の流れに伴う変化だが、テレビ観賞はほぼ横ばい、むしろ昔よりはやや増えている、読書は減退気味だがここ数年ぶりは回復基調(電子書籍が後押ししているのかもしれない)、ゲームは明らかに増加(デジタル系ゲームの普及浸透が貢献していると考えれば道理は通る)、娯楽時間総計に変わりは無いとの動きが出ている。読書離れは起きていたかもしれないが沈静化、テレビ離れは起きていないどころか長時間化しているようにすら思えるのが実情。

続いて年齢階層別。

↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(テレビ観賞)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(テレビ観賞)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(読書)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(読書)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(娯楽時間総計)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日)(娯楽時間総計)(年齢階層別)

就業や就学に時間を拘束されることを考慮すれば、現役世代が娯楽時間総計で低い値を示すのは当然の話。20歳以上でも若年層は少なめで、中堅層以降になるといくぶん多くなる。そして経年では20代前半がやや増加の動きを示す以外は特に変化はない。

テレビ観賞では時の流れによる変化は見られない。あえて言えば65~74歳層で増加、25~44歳層で漸減の気配がある程度。他方ゲームでは大よそ漸増の動きを示し、特に20~24歳層では大きな上昇が確認できる。やはりデジタル系ゲームの浸透が影響しているのだろう。

気になる読書時間は元々短時間だった若年層は低迷のまま。他方高齢層のうち45~64歳層では漸減の流れが生じているのは注目に値する。アメリカ合衆国の読書離れは若年層ではなく、中堅から壮齢層に生じていると読むことができる。

休日ではどうだろうか

続いて休日や祝祭日。あくまでも暦上の日取りの問題で、休日に仕事をしている人もいることに注意。

↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(テレビ観賞)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(テレビ観賞)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(読書)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(読書)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(娯楽時間総計)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(娯楽時間総計)

平日と比べて時間に余裕があることから、押しなべて平日よりも長い時間が計上されている。他方男女の位置関係は平日と変わらずで、読書は女性が長く、それ以外は男性が長い。

また経年変化だが、テレビはいくぶん増加している一方、読書は明らかに減少、ゲームは増加の動きにある。読書はここ数年下げ止まったようにも見えるが、少なくとも増加に転じているようには見えない。そして娯楽時間総計は横ばいで変化なし。

↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(テレビ観賞)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(テレビ観賞)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(読書)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(読書)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(娯楽時間総計)(年齢階層別)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、休日)(娯楽時間総計)(年齢階層別)

テレビ鑑賞時間にほぼ変化は無く、高齢層の方が長時間従事しているまま。他方読書は平日同様若年層は低迷を継続中だが、中堅層以降では高齢層までもが漸減の動きを示している。高齢層はこの数年横ばいに転じたようにも読めるが、読書離れが中堅層以降に生じていることに変わりは無い。ゲームなどは大よそ増加傾向にあり、特に15~24歳において大きな増加の流れにある。そして娯楽時間総計に変化は特に見られない。

確認できるデータの限りでは「いわゆるテレビ離れは起きていない」「読書離れは若年層では無く中堅層以降に生じている」「ゲームへの注力は増加中、特に若年層に顕著」などの動きが見受けられる。

この数年はスマートフォンの普及浸透、テレビ関連の技術の進歩と動画配信技術による映像娯楽の変化に伴い、娯楽全体の様相も小さからぬ動きを見せている。2016年以降の時間配分はいかなる形となるのか、大いに気になるところだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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