高校生はスマホで18%…小中高校生の電子書籍利用実情
紙媒体による出版業界を大きく揺るがしているのがインターネットの存在だが、同時にそれを紙代わりのインフラとして用い、デジタルによる書籍の提供・販売を行うことで、時代の流れに乗る動きもある。スマートフォンをはじめとするインターネットの窓口となる端末が急速に普及する昨今、子供達の間に電子書籍はどこまで浸透しているのか。今回は内閣府が2017年3月に確定報を発表した、「平成28年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果」(※)の報告書から、小中高校生における主要インターネット接続端末を用いた、電子書籍の利用状況を確認していく。
次に示すのは主要なインターネットへの接続可能媒体でインターネットを利用している人における、電子書籍の利用状況。設問表では「何をしているか」の対象として「電子書籍」とのみ記述され、具体的な説明は無い。厳密には電子書籍と電子雑誌は別物扱いされることが多いが、今件状況では「インターネット上で読める本や漫画、雑誌など」すべてを対象としていると判断し、回答したものと見た方が間違いはない。また有料・無料の別の設定も無いため、単純に閲読しているか否かを答えてもらったものと見なす。
なお該当しそうな機種のうち娯楽用タブレットは当てはまる人数が総数で8人しかいなかったので統計的に問題があるため省略している。また学習用タブレットは総数が104人だが属性別の仕切り分けでは数十人しかいないため(たとえば高校生は男子10人・女子5人の計15人でしかない)、参考値として取り扱い、グラフには掲載するが検証の対象にはしない。
パソコンでは中学生でややノートの方が高めの値を計上しているが、小学生と高校生ではデスクトップの方が上。とはいえいずれの属性も1割にも見たず、総数でも4%台でしかない。もっとも高いのは男子中学生のデスクトップパソコン経由で8.3%。大よそデスクトップパソコンを使ってインターネットへアクセスしている男子中学生のうち12人に1人の割合となる。
タブレット型端末は小学生ではパソコンとあまり変わらないが、女子中学生や高校生では大きく伸び、高校生では2割近い値を示すことになる。他方スマートフォンでは中学生で10%強、女子の方が積極的に電子書籍を利用している。高校生になると男女の差はほぼ無くなり、2割近く。スマートフォンを使ってインターネットを利用している高校生のおよそ1/5は、電子書籍を利用している計算になる。
インターネット利用端末の利用者における電子書籍の利用状況としては、スマホが一番、タブレットが2番、パソコンはひかえめといった形(学習用タブレットは上記の通り利用者少数で統計上のぶれが懸念されるため除外する)。また中学生から積極的に読み進められ、高校生ではタブレット型端末・スマートフォン共に2割近い閲読率を示している……
……が、これは各端末でインターネットを利用している人限定。電子書籍の現状を把握するためには、むしろ各属性毎の利用状況を知りたいところ。そこで各属性における電子書籍利用率を算出した結果が次のグラフ。例えば総数のスマートフォンは7.1%の値が出ているので、小中高校生合わせた全体のうち7.1%、およそ14人に1人はスマートフォンで電子書籍を利用していることになる。
元々該当端末によるインターネット利用率が低い小学生は、誤差の範囲に収まる利用率しかない。実質的に「読んでいる人はナシ」と見ても構わないレベル。中学生になるとスマートフォンの利用率の高さが後押しする形でそれなりな利用者率を示す。スマートフォンが一番高いが、次いでタブレット型端末が入っているのが興味深い。
そして高校生。スマートフォンそのものの利用率が圧倒的な値を示していることから、それを用いた電子書籍の利用者率もグンと跳ね上がる。高校生全体の17.7%、およそ6人に1人はスマートフォンで電子書籍を閲読している計算になる。タブレット型端末の場合はおよそ42人に1人となる。
今件調査は小中高校生を対象としたもので、当然大学生以上の大人の動向は把握できない。ただ、例えば総務省の通信利用動向調査によれば2015年末時点でインターネット利用者に限定した場合、男性40代でも8.0%に過ぎないとの結果が出ている。
調査様式が異なるため単純比較はできないが、高校生のスマートフォンによる電子書籍の閲読意欲は相当高いと見て良いかもしれない。
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※青少年のインターネット利用環境実態調査
直近年分は2016年11月5日から12月11日にかけ満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(保護者は訪問配布訪問回収法)で行われたもの。時間の調整ができない場合のみウェブ調査法(保護者は加えて郵送回収法)を併用している。有効回答数は青少年が3284人(うちウェブ経由は108人)、保護者は3541人(うちウェブ経由は55人、郵送回収法は34人)。過去の調査もほぼ同様の様式で実施されている。