5つの視点から世代間のメディアへの信頼度格差を確認する
年齢でメディアへの信頼度に違いは生じるのか
メディアへの信頼度は世代間で大きな違いが生じている。その違いは配信される情報の種類次第でも変わってくるのだろうか。総務省の調査「平成27年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2015年11月14日から11月20日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリングによって抽出し、訪問留置調査方式により実施。13歳から69歳の1500サンプルが対象。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日)の結果の公開値から、5つのジャンルに関してその動向を確認していく。
信頼度は高い方が信頼されている、低い方が信頼されていない、1.50が信頼されている・されていないの境目。ただし信頼度の算出には「そのメディアを利用している人」が前提になるため、信頼に足りないので該当メディアを使っていない人も算出からは除外されることから、実情としての信頼度は今計測値よりもいくぶん低い値となることが推定される(信頼しているとの理由で該当メディアを使わない人はいない)。
抽出する世代は、未成年者を多分に含む、そしてある意味特殊な生活環境に置かれている学生・生徒(中学生から大学生が対象)、若年社会人として20代、そして高齢層として60代。それぞれ、政治・経済問題(国内)、社会問題(国内)、海外ニュース、原子力の安全性、東アジアの外交問題の各ジャンルに関し、代表的なメディアとしてテレビ、新聞、インターネットニュースサイト、ソーシャルメディア、ブログやその他サイトを挙げ、それぞれの信頼度を算出した。
年齢的には近く、被っている部分もあることから、学生と20代は近い動きを示している。新聞をもっとも信頼し、次いでテレビ、インターネットのニュースサイトが続き、ソーシャルメディアやブログはあまり信頼していない。ただしテレビや新聞、ニュースサイトへの信頼度は学生よりも20代の方が低め。一般論レベルの話ではあるが、社会に出て経験を重ねることで、メディアに対する信頼度のウェイトが変化しているようすがうかがえる。
一方60代では大きな相対関係・順位に差は無いものの、ソーシャルメディアやブログの値が低くなり、大よそテレビや新聞の値が高い。またインターネットのニュースサイトも高くなっているが、これは多分にテレビや新聞などの4マスの企業体による運営サイトをイメージしているものと考えられる。若年層と比較すると、物理メディアとインターネットメディアとの間の信頼性の格差が開いているようだ(ニュースサイトをのぞく)。
そのメディアを使っていない人
上記の通り、信頼度の算出にはそのメディアを利用していない人は除外されている。信頼度とは別に、元々使っていない人も多分にいるのだろうが、同時に信頼ならないので利用していない人も多分に考えられる。そこでそれぞれのジャンルに関して、該当メディアを情報源として使っていない人の割合を抽出したのが次のグラフ。
信頼度の観点では近い学生と20代も、情報源としてのメディアの利用度合いでは大きな違いを見せている。学生は該当する情報を取得する際に使っていないメディアが多めで、特に新聞やインターネットニュースサイトは20代と比べて利用している人の割合が小さい。他方ソーシャルメディアは20代とさほど変わらず、ソーシャルメディアを多用する学生諸氏が、ニュースの情報源としてもソーシャルメディアをそれなりに活用している様子がうかがえる。
他方、高齢層は若年層とは大きな違いを見せる。テレビや新聞のような従来型の4マスはほとんどの人が情報源として用いているが、インターネット系は大よそ利用そのものをしていない。それでもインターネットニュースサイトは4割強の人が利用しているものの、ソーシャルメディアやブログなどは2割程度でしかない。そのメディアを使えるツール自身を有していない、持っていてもアクセスする気にはならない人が多分にいるとはいえ、ここまで若年層と大きな差が生じているのでは、メディアを通して見える社会の有りようが違って見えるのも不思議では無い。
なお高齢層でニュースの種類に関わらず値が同じメディアが存在するのは、種類によって情報源を使う・使わないと選別しているのではなく、一切そのメディアにはアクセスしていない人ばかりのだと考えられる。つまりソーシャルメディアやブログなどにおいては、高齢者の8割近くは(アクセス可能の環境の有無を問わず)一切利用していない、少なくとも情報源としては活用していないと見てよいのだろう。ネットニュースサイトも5割強において、ほぼ同じ状況だと見ても問題はあるまい。
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