カラーテレビの買い替えは何年ぐらいで行われているだろうか
カラーテレビは大体9年が平均的な買い替え年数
メディアが多様化した現在でも、テレビが今なお一方向メディアの代表的な家電であると共に、幼少児や中堅層以降、中でもシニア層にとって欠かせない情報取得メディアであり、最大の娯楽機器には違いない。今回はそのカラーテレビにスポットライトをあてて、内閣府が2016年4月に発表した消費動向調査の2016年3月実施分のデータを基に、「カラーテレビの買い替え年数」の現状と過去からの推移を確認していくことにする。
まずは「二人以上世帯」について、買い替え年数推移を長期期間の範囲でグラフ化する。
中期的な動向を見るとテレビの買い替え年数は9年前後で安定。しかし2010年以降は毎年少しずつ、確実に年数が短縮されている動きを示していた。2011年7月の地デジ化に伴い、チューナーで地デジ対応化したテレビを使っていても、調子が悪くなったり故障などをきっかけとして「安くなっていることもあるし、せっかくだからこの際、修理をせずに対応機種に買い替えるか」とする動きが起きた結果によるものだろう。
2014年ではもっとも短い6.3年。一つに地デジ化による移行、そしてもう一つに2014年4月からの消費税率改定に伴い、それに先駆けて駆け込み的に、従来の買い替え期間よりも前倒しでテレビを新規調達した、いわゆる「駆け込み需要」によるものと考えられる。
しかしその2014年がピークとなり、以降は少しずつ年数は元の長さに戻りつつある。直近の2016年では8.0年にまで戻した。ちなみにデータが取得可能な1997年以降の全年における平均値は9.0年、直近5年間に限れば7.7年となっている。
これを「単身世帯」(記録があるのは2008年以降のみ)の動向と重ね、グラフ化したのが次の図。
2010年にややイレギュラーな動きがあり、それまでの「二人以上世帯」>>「単身世帯」との流れが消え、双方世帯でほとんど変わらない値を示すようになった。地デジ化におけるテレビ買い替えへの圧力は、世帯構成で違いを見せなかったようだ。また上記で言及した「地デジ化に伴うテレビ買い替え年数の短縮化」そして「消費税率改定に伴う駆け込み需要による短縮化」は、世帯構成によらずに起きているのも分かる。
属性別で買い替え年数に違いは出るのか
次のグラフは「二人以上世帯」「単身世帯」それぞれの属性における、過去9年間の買い替え年数推移をまとめたもの(単身世帯が2008年以降しかデータを取得できないため)。一部区分では該当世帯が皆無、あるいはごく少数で統計値として計上できなかったため、グラフでは「×」と記している。
もし地デジ化への流れが無ければそのまま使い続けていたであろうテレビを、地デジ化への切り替えに伴い「せっかくだからと」と通常よりも早めに買い替えた世帯が多かったこともあり、「単身世帯」も「二人以上世帯」も少しずつ買い替え年数が短くなりつつあった。「二人以上世帯」の若年層ではそれらに逆行する動きを示していたが、これは多分に回答数が少数のための「ぶれ」の可能性が高い(2013年・2016年では対象世帯数が少数過ぎて計算値が存在しなかった)。
興味深いのは短縮化の動きのピークとなる2014年以降。「二人以上世帯」ではどの属性も年数をかつての水準に戻しつつあるのに対し、「単身世帯」では属性を問わず低迷したまま。これが上記でも指摘した、世帯種類別の差異を大きくする要因となっている。地デジ化を果たした後、テレビに対する買い替え性向に関して、両種類世帯間に大きな隔たりが生じた感はある。
ただしこれらの値は「買い替えを行った世帯における平均買い替え年数」であり、買い替え実行世帯「数」では無い事に注意する必要がある。
なぜテレビを買い替えたのか
最後は買い替えをした人における、その理由。
双方世帯とも「その他」項目の増加のピークは2012年(3月)。これは回答時の該当期日である2011年4月~2012年3月の間に、2011年7月の地デジ切り替えに伴い対応型のテレビへと買い替える人が、大量に現れたことを意味する。翌年の2013年(対象期間は2012年4月~2013年3月)では、地デジ化ラッシュも過ぎ、従来の比率に戻る動きを見せた。しかし2014年では2014年4月からの消費税率改定に伴う駆け込み需要が発生し、回答中「その他」の回答率が単身世帯では増加する結果となった。
直近の2016年は前年の2015年と比べ、双方種類世帯とも「故障」の比率が大幅に増加している。これは本体のトラブルで視聴が不可能になる状況以外では、テレビの買い替えが控えられていると見ることができる。買い替えをした実世帯数比率は、例えば二人以上世帯で251÷4038=6.2%となっているが、前年は9.7%、前々年は10.9%。少しずつテレビの買い替えをする世帯そのものは減退する動きにある。引越しや上位機種の登場でも買い替えの理由にはならず現行のテレビを使い続け、故障して初めて仕方なく買い替える事例が増えている動きを示しているといえよう。
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