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テレビを観る人動向、中堅層までは減少続く・高齢層は高率を維持

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ テレビは魅力的なメディアだがその訴求力は相対的には…

テレビを観ている人は85%

4マスの中でも最大の市場・影響力を持つテレビ放送。流される番組には多くの人が注力し、視聴を楽しんでいる。一方で「若者のテレビ離れ」的な話も耳にする。その実態をNHK放送文化研究所の調査結果「2015年国民生活時間調査」(住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民1万2600人を対象に、2015年10月13日から26日に渡り配布回収法によるプリコード方式で実施。有効回答数は平日分が1万1056人分。土曜日分・日曜日分はそれぞれ3600人に対し行われ、有効回答数はそれぞれ2195人分・2170人分)から探る。

今調査ではテレビ(番組)を観る人の割合(テレビ行為者率、1日15分以上テレビ(据え置き型テレビの他にワンセグによる視聴も含む。録画視聴や購入・レンタルソフトの視聴は除く)を観ている)を調べている。結果としては2015年でも平日・休日を問わず8割強人が該当する結果が出ている。なお今件では単に「テレビを観ているか」との問いであり、その熱中度に関しては言及は無い。いわゆる「ながら視聴」でも本人が視聴していると自覚していれば該当する。

↑ テレビ行為者率(全体)
↑ テレビ行為者率(全体)

テレビが現在でも多数の人に視聴されている媒体であることに違いは無い。しかしこの20年の経過の中で、少しずつ「テレビを観ない(厳密にはまったく見ない以外に、1日に15分未満しか観ない人、受信器は稼働しているが「観ている」との自覚が無い人も含む)」人が増加し、いわゆるテレビ離れが起きているのが分かる。そしてそれは平日・土日を問わず。

これを年齢階層別に見ると、世代別に異なる動きが確認できる。

↑ テレビ行為者率(平日、男性、調査年別)
↑ テレビ行為者率(平日、男性、調査年別)
↑ テレビ行為者率(平日、女性、調査年別)
↑ テレビ行為者率(平日、女性、調査年別)

直近となる2015年ではいずれの年齢階層でも、男性よりも女性の方が平日のテレビ視聴行為者率は高い。自宅に居る機会が多いのがその理由だが、同時にテレビ好きの度合いも小さからぬ要因だろう。また10代は学校における話題作り、情報共有のネタとしてのテレビの立場もあるため高めの値が出ているが、20代ではグンと下がり、特に男性では62%と2/3を切る結果が出ている。

経年動向を見ると、男女とも若年層から中堅層は漸減、高齢層は横ばいを示している。特に70歳以上の高齢者のテレビ行為者率は高値が維持されており、男女ともに95%を底値とした高レベル状態にある。つまり20人のうち19人が「毎日15分以上テレビを観ている」状態が前世紀から継続中。

他方、男女とも若年層のテレビ離れは顕著な状態。また2010年から2015年にかけては中堅層にまで減少の加速化が進んでおり、男性では10代から50代まで、女性でも10代から40代までが「テレビ離れ」の動きを呈している。2010年までよりも減退の動きが加速したのは、ひとえにインターネット関連のインフラの普及、特にスマートフォンの浸透によるものと考えれば道理は通る。

テレビ離れは年齢によるものか、それとも世代か

若者のテレビ離れ、視点を変えると高齢層のテレビへの愛着的な行動性向は、世代によるものか、それとも年齢階層によるものか、議論となることがある。世代によるものならば現在テレビを敬遠している若年層は歳をとって中堅、そして高齢層に至ってもテレビを観ないライフスタイルを継続する。年齢階層によるものならば、今はテレビと距離を置く若年層も、歳をとるに連れて他メディアとの接触に難儀を覚えるなどの理由で、テレビをより近いものと認識していく。

今調査は1995年以降5年間隔で実施されているため、世代における経年変化の流れを一部ではあるが知ることができる。例えば2015年時点で30代の人は、2005年時点では20代、1995年時点では10代となる。当然、同じ人を追跡調査しているわけではないので、あくまでも「各時点での同一世代の代表値」でしかないが、歳を取り、年齢階層がシフトした際に、テレビ行為者率もそのままシフトしたか否かを確認できる。

↑ 直近年の各年齢階層における、過去のテレビ行為者率との比較(2015年時点、10年シフト、男性、平日)
↑ 直近年の各年齢階層における、過去のテレビ行為者率との比較(2015年時点、10年シフト、男性、平日)
↑ 直近年の各年齢階層における、過去のテレビ行為者率との比較(2015年時点、10年シフト、女性、平日)
↑ 直近年の各年齢階層における、過去のテレビ行為者率との比較(2015年時点、10年シフト、女性、平日)

例えば男性で2015年時点では50代の人は86%、10年前はその世代は40代だったが、その時の値は85%、20年前は30代だったが88%と読む。20代は20年前では回答のしようがないので空欄となっている。10代の10年前・20年前も同様。

それぞれの動向を見るに、男女ともに現在における50代までは、ほぼ世代によるテレビ行為者率が継続されているように見える。それより若い世代では、40代はそれほどでもないが、30代以前は確実に歳を重ねるに連れてテレビ行為者率が減退していく。その動きは女性よりも男性の方が著しい。

現時点における40代、とりわけ30代以前の世代において、大きなテレビ離れが起きている感はある。もちろん各年でも10代のテレビ行為者率は(前述の通り学内におけるコミュニケーションの素材としての視聴を行うことから)比較的高めなため、10年後にそれと比較した20代における値が急落しているように見える部分もあるが、それだけでは各世代における20代から30代への減少は説明が難しい。男性の2015年時点における20代の10年間における27%ポイント、女性の12%ポイントの下落は子供から成人した際のギャップをはるかに超える減り方。

現在はまだ30代、グレーゾーン的な世代も含めると40代までが確認できる「テレビ離れ世代」だが、今後時間の流れと共に各世代が歳を取るに連れ、さらにメディア技術の進歩やコンテンツの質の変化に伴い、少しずつ領域を拡大していく。それと共に各世代の離れ度合いも加速していくかもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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