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2014年度はのべ236億人が利用…日本の鉄道利用客の現状と推移を確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 多くの人の移動手段として欠かせない存在の鉄道だが

2014年度の旅客利用者は236億人

近場の移動には徒歩以外に自転車やバスなどが多用されるが、遠出をする、特に特定箇所を幾度となく行き来する場合、良く使われるのが鉄道。その鉄道の利用実態を国土交通省の「交通関係統計等資料」を基に確認していく。

最初に確認するのは、JR・私鉄を問わず日本国内の鉄道を利用した旅客数の推移。JRはほぼ全国展開、私鉄は一般的に地域との密着性が強いため、利用者数はJR各社の合計の方が多いイメージがあるが、実際には私鉄各社の方が多い。直近2014年度ではJRが90億8800万人、私鉄各社が145億1200万人で、合計で236億0000万人が鉄道を利用している。延べ人数であることは言うまでもない。

↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)(積み上げグラフ)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)(積み上げグラフ)

バブル期までは漸増していた利用数も、バブル崩壊あたりで頭打ちとなり、それ以降は減退。今世紀に入ってから再び増え始めるが、金融危機・リーマンショックで再び下げ。2012年度に入りようやく再度の上昇機運を見せている。

また1990年代後半以降は、増加分のほとんどは私鉄によるもので、JRはほぼ横ばいの動きを示している。だがこの数年の上昇分では私鉄だけでなくJRにも伸びが見られ、これまでの上昇の仕方とはやや異なる方向性にあることが分かる(直近の2014年度では前年度比で減退したが)。景気回復基調と定年退職者の急増に伴う旅行機運の高まりに加え、自動車による長距離移動が避けられるようになった、人口の都市集中化に伴い自動車を使う気概が減ったなど、さまざまな要因によるものと推定される。

総人口そのものは減退傾向にあることを考えれば、一人一人の利用回数が増えていることになり、鉄道そのものへの注目が高まっていると見ても問題はあるまい。

「人キロ」の動向は?

鉄道などの交通機関の利用状況を示す指標の一つとして「人キロ」との単位がある。これは言葉の通り、旅客者数とその旅客を輸送した距離を掛け合わせたもの。例えば一人が10キロ移動すれば10人キロとなる(1×10=10)。この値が多いほど、多くの人がより遠くまで利用したことになる。また旅客数の増加と比べて人キロの増加度合いが大きければ、単に利用客数が増えただけでなく、遠出をする人が増えたことを意味する。

↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)(積み上げグラフ)
↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)(積み上げグラフ)

結果としてはほとんど旅客数そのものとの違いは見られなかった。利用客内部における利用スタイルに、劇的な変化が起きたわけではなく、純粋に利用客が増加したことになる。

もっとも各数字を用いて概算的に「利用客の平均移動距離」を試算すると、私鉄は減少する傾向があるのに対し、JRはここ数年増加する動きを示している。

↑ 鉄道・軌道旅客一人当たり平均利用距離(キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客一人当たり平均利用距離(キロ)

長距離の旅行利用者の増加が、平均値にも変化をもたらしているのかもしれない。

「交通関係統計等資料」では残念ながら利用客の世代構成による値は取得しておらず、鉄道利用客における世代動向は確認できない。もっとも鉄道の利用客はほぼ横ばいで推移し、この数年はむしろ増加する傾向にあることが分かっただけでも幸いではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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