一人暮らしのお財布事情を借金まで合わせて確認する
男女で大きく異なる一人暮らしの負債額
何かと厳しいお財布事情の一人暮らし。その内情を総務省統計局が2015年9月に発表した「2014年全国消費実態調査」のうち「単身世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果」を元に、貯蓄だけでなく負債まで合わせ、純貯蓄高を算出することで、より厳密に見ていくことにする。
まずは純粋な負債額。年齢階層・男女別ではあるが、単身世帯のうちそれぞれの属性における平均値であることに注意。
男女とも青色、つまり不動産関連の負債が大部分を占めている。「単身世帯のうちそれぞれの属性における平均値であることに注意」としたのはこの点。不動産を購入していない人は丸々この負債の分が無くなるので、当然負債額も大きく減る。ただし今件は単身世帯全体の平均値について考察しているので、その点までは考慮しない。
男性60代で大きく「住宅・土地以外の負債」が増えているが、この項目に係わる解説は「生活に必要な資金、個人事業に必要な開業資金、運転資金などを借り入れた場合の未払残高」とある。早期定年退職制度を活用するなどで起業をする人、あるいはすでに起業している人による運転資金の借り入れの影響か考えられる。
また、女性が40代で急激に不動産関連の負債が増加するのも注目に値する。やはりこれも推測でしかないが、独身女性の一心発起による住宅購入のタイミングが、この年齢階層にある可能性は低くない。
男女の縦軸、つまり金額の仕切りを揃えてある点に注意して双方のグラフを見直すと、女性の負債が少ないのにも気が付くはず。40代から50代にかけてやや不動産の負債が大きくなるが、それも一時的なものに過ぎない。30代までは100万円にも満たない値に留まっている。
純貯蓄額を試算すると
さてそれでは「貯蓄額」から「負債額」を引いた、「純貯蓄額」を算出する。繰り返しになるが、負債の多くは住宅ローンで、住宅ローンを他の通常の負債と一括して考えて貯蓄と相殺するのはやや難がある。住宅そのものが換金率の低い財産であり、住宅の所有は蓄財に他ならないとする見方もできるからだ。今件はあくまでも金額負担の上での負担、指標程度のものとして見てほしい。
30代では男性がマイナス値を示しており、やや無理をしてでも一人暮らしの男性のうち住宅を取得しているケースが多いことがうかがえる。そして50代・70代で多少ながらも逆転現象が起きるが、概して男性より女性の方が純貯蓄額が大きい。また歳を重ねるに連れて住宅保有者もそのローンを完済し、余力ができた分を蓄財に回せることから50代以降は額面が大きなものとなり、60代では退職金でその額は最大値を示すのは、男女共に変わらない。
いずれにせよ、負債を考慮した純貯蓄額においても、女性の方が額面が大きいことに違いは無い。全体平均でも300万円ほどの差が生じている。
単身女性は男性よりも年収こそ低いものの、貯蓄額は中堅層以降で同レベルの値を示し、今回試算した純貯蓄額でも、むしろ男性を上回る値を示している。女性のそろばん勘定の巧みさは、男性を超えた領域にあるようだ。
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