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国連が予想する主要国の高齢化の推移

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 少子高齢化が進む日本。人口の減少は避けられず……

「老年人口指数」「従属人口指数」言葉の定義を確認する

国連が定期的に更新している各国の人口予想の最新版となる「World Population Prospects, the 2015 Revision(世界人口の見通し、2015年改訂版)」を元に、主要国の高齢化の進み方を検証していく。日本の深刻な高齢化の現状と将来を、他国との比較の形で見る事ができるはずだ。

まずは高齢化動向を推し量るために算出する指標などに関する用語解説。

年少人口…0~14歳

生産年齢人口…15~64歳

老年人口…65歳以上

老年人口指数…(老年人口/生産年齢人口)×100

従属人口指数…((年少人口+老年人口)/生産年齢人口)×100

「老年人口指数」とは生産に従事する人に対する高齢者の比率。この値が高いほど、生産者の高齢者に関する負担が大きくなる。100に達すると生産年齢人口が老年人口と同じ。

また、生産をする・しないの視点で見ると、高齢者以外に年少人口に該当する人たちも生産は行えないことが分かる。実質的には生産年齢人口は、年少人口と老年人口の双方を支えている。この点に注目した指数が「従属人口指数」。この値が大きいほど、非生産人口を支える、生産年齢人口の総合的な負担が大きくなる。

主要国の老年人口指数」「従属人口指数」

それでは早速、各国別に算出した各指数を重ね合わせ、国別の高齢化状況を比較する。まずは「老年人口指数」について。単純な高齢化の進行を推し量るのに適している。

↑ 主要国老年人口指数推移推計
↑ 主要国老年人口指数推移推計
↑ 主要国老年人口指数推移推計(2015年、2100年)
↑ 主要国老年人口指数推移推計(2015年、2100年)

日本の高齢化が他国と比べて飛びぬけて高い水準で進んでいることは、先の記事でも触れているが、それがあらためて認識できる。その日本の高齢化も、大体2050年から2055年頃がピークとなり、以後は漸減。指数は70前後で落ち着くことになる…とはいえ、同年における他国と比べれば、非常に高い値には違いない。

他国の動向としては、中国の急速な高齢化が目に留まる。2015年時点では10強でしかなかった指数は2060年頃まで急速に上昇。60を天井とし、ようやく高齢化に歯止めがかかるように見えるが、2075年頃からもう一段階上昇し、65前後にまで伸びて日本の値に近づく状況となる。

人口の多さでは中国と並び注目されるインドやインドネシアは、高齢化の動きも緩やかなもので、一定率でしか上昇しない。また日本の高齢化とスタイルが似ているイギリスだが、「老年人口指数」上では緩やかながらも上昇を続け、2100年には50を超える値を示すようになる。

続いて「従属人口指数」。単に高齢化社会の進行を確認するのではなく、生産年齢人口の負担を考える視点では、こちらの方が理解しやすい。

↑ 主要国従属人口指数推移推計
↑ 主要国従属人口指数推移推計
↑ 主要国従属人口指数推移推計(2015年、2100年)
↑ 主要国従属人口指数推移推計(2015年、2100年)

国別順位や各国ベースでの動向において「老年人口指数」と大きな違いはないように見えるが、「インドネシア」「インド」の2か国では少々違いが見られる。2030年位まではむしろ「従属人口指数」の値が低下している、つまり生産年齢人口の負担が減っている。

これはひとえに両国において、2030年前後までは生産年齢人口が急激に増加し、年少人口や老年人口の上昇率を上回っているからに他ならない。支える側の人数が増えるので、一人あたりの負担が減る次第である。

単純計算ではそれだけ国全体、特に生産年齢の人達に余裕が出来るので、国そのものの成長が期待できる(無論人口比率や人口そのものの大小が、国そのものの伸縮を決定づけるすべての要因ではない)。

今回使用した国連の推定データは、定期的に最新のものに挿し代わり、場合によっては小さからぬ変化が生じることになる。実際、前回(2012年版)との間では、特に中国やイギリスの高齢化で大きな変化、具体的には中国で高齢化が加速化しており、イギリスでは穏やかなものとなっている。

とりわけ中国の高齢化が日本の状況に近しいものとなったのには大いに留意が必要となる。あの人口で高齢化が進めばいかなることになるか、想像は難しい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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