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気になる賃貸住宅の家賃滞納状況、その実態は……!?

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 金欠だけれど迫る家賃支払日。滞納しなければならないのか……!?

賃貸住宅住まいをしている人の中には、不注意で、あるいは仕方なく家賃を滞納した経験がある人もいるかもしれない。しかしその実情を他人から見聞きする機会は滅多にない。世間一般にはどれほどの割合で、家賃滞納が起きているのだろうか。賃貸住宅の管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」がほぼ半年ごとに更新・公開している「賃貸住宅景況感調査日管協短観」の各種データから、その実態を確認していく。

物件によって日取りは異なるが、賃貸住宅の家賃は原則として月1回支払いが行われる。昨今では事前に取り交わした契約に従い、自動的に金融機関の口座から引き落とされる場合が多い。もっとも個人経営の賃貸住宅では、今でも借主が家主に毎月手帳と共に家賃を手渡し、その手帳に支払い済みの判子を押してもらうスタイルを続けているところも少なくない。

家賃支払いの主な手法の自動引き落としだが、銀行口座残高の調整ミスで残高不足から家賃の引き落としを行えず、気がつけば家賃を滞納してしまうトラブルもある。その経験を有する人も少なくあるまい。家賃引き落とし専用の口座を別途設けていても、その口座への入金をつい忘れてしまう事例も想定される。

そこで「(調整ミスの可能性がある)月初全体の滞納率」「(ミスの可能性が排除された)月末での1か月滞納率」「(状況が悪化した、連続した滞納状態の)月末での2か月以上滞納率」それぞれについて、直近値を元にグラフ化したのが次の図。

↑ 家賃滞納率(2014年10月-2015年3月)
↑ 家賃滞納率(2014年10月-2015年3月)

残高調整ミスは頻発する事例らしく、全体では7.2%も発生している。大体14世帯に1世帯の割合である。一か月間丸々の滞納となると3.0%、2か月連続して「危険信号」レベルになると1.6%の域に達する。

2か月以上の滞納率1.6%。これは「賃貸住宅の63軒に1軒は現在2か月以上家賃を滞納している」状況となるわけだが、切り口を変えて「通常支払い率98.4%」と表記すればそこそこ良い方に見える。ただしリスクは低いに越したことは無い。例えば5階建・13列(=65部屋)の大型団地なら、1個あたりほぼ1世帯は2か月以上の家賃滞納世帯が存在する計算になるからだ。そして2か月もの滞納状態ともなれば、状況がさらに悪化し、未回収(+管理会社の費用持ちでの原状復帰作業)となる可能性は高い。また、これには「空き室率」は勘案されていないため、賃貸住宅の採算率はそれより悪くなる(空き室率は2割前後が一般的)。

なお滞納率が高めに出ている関西圏だが、これはイレギュラーな動きでは無く、昔からの傾向となっている。

↑ 家賃滞納率推移(関西圏)(-2014年下半期)
↑ 家賃滞納率推移(関西圏)(-2014年下半期)

「月初全体の滞納率」が10%内外。これは10世帯に1世帯が滞納を経験していることになる。うっかりミスが多いのか、それとも銀行残高の調整が難しいほど家計のやりくりが厳しいのか。今件データだけではそれらを判断することは難しい。

管理会社へ連絡をしないままの家賃滞納は、管理会社の立場からでは「ミスによる滞納」なのか、それとも家計の事態悪化が継続し「経済的事由による月末までの滞納」「2か月以上の滞納」につながるのか、判断はできない。

現在賃貸住宅市場は借り手が優位な市場状況ではあるが、賃貸住宅利用者は「住まいを借りている立場」であることを忘れるべきではない。理由はともあれ、万一にでも家賃滞納を起こしてしまったら、すぐにでも家主、管理会社に一報を入れ、最善を尽くしてほしいものだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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