認知度92%・無関心度1/4…尖閣諸島に関する内閣府の世論調査をグラフ化してみる(2014年)
尖閣諸島そのものの認知度92%、「日本が有効支配」は48%
内閣府は2014年12月25日付で、尖閣諸島に関する世論調査の結果(概要)を発表した。今調査は2014年11月13日から23日にかけて、全国20歳以上の日本国籍を有する人3000人に対し、調査員による個別面接聴取方式で実施されたもの。有効回答数は1826人。
尖閣諸島は行政的には沖縄県石垣市の一部で、南西諸島西端に位置する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬などから成る島々の総称。戦後発効したサンフランシスコ講和条約で国際的に日本領帰属として確定済み、歴史的にも国際法上でも、日本固有の領土。ところが1960年代後半に東シナ海で石油埋蔵の可能性があることが指摘されて「以降」、中国や台湾が領有権を主張し始め、外圧や実力行使を繰り返している。なお現時点ではすべてが無人島で、久場島(及び周辺小島)は私有地、その他は国有地となっている。
まずは尖閣諸島そのものの認知度だが、これは92.3%と高め。一方で尖閣諸島に関する諸問題への認知度はそれなりで、もっとも高い値を示した「最近になって中国政府は、継続して政府の船舶を尖閣諸島周辺海域に派遣し、頻繁に領海侵入するといった行動を繰り返していること」ですら、尖閣諸島を知っている人のうち79.6%。調査対象母集団全体比では73.5%となる。
一番肝心な「尖閣諸島は日本が有効に支配しており、同諸島をめぐり解決すべき領有権問題が存在しないこと」との選択肢への認知度は48.2%。全体比では44.5%と4割強でしかない。また、日本側が中国側の領海侵犯など事あるたびに抗議をしていることを知っていた人は79.1%(73.0%)でそれなりに高めだが、中国などの動きの理由が理解できる事実「尖閣諸島に関する中国・台湾による独自の主張は、東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘された後の1970年代になって突如として始まったこと」を知っている人は45.2%(41.7%)で4割程度に留まっている。尖閣諸島問題については、今まで以上に多方面から、単に現在起きている事象の列挙だけでなく、「なぜ彼らがそのような行為を繰り返すのか」についても啓蒙・周知が必要とされる。
昨年からの変移を見ると、上位2項目はいずれも回答率を大きく挙げているが、「沖縄県に属していること」「石垣島の北方に位置していること」など、尖閣諸島の詳細に関する印象面で理解・認識度が減っている。昨今のサンゴ盗取問題が良い例となるが、印象的な話は多く伝えられ、本質的な面での周知が不足している。見方を変えれば、印象度の高い要目のみが抽出・強調され配信されたことから認知度は高まっているが、本質が伝えられずに、多分に消費型コンテンツ扱いされている雰囲気が感じられる。
テレビが重要なポイント
「尖閣諸島」そのものを知っている人に、どのような経路で認知したのかを聞いたところ、もっとも多いルートは「テレビ・ラジオ」だった。これが97.0%。次いで「新聞」が69.7%。いわゆる4マス、しかも他の情報の取得時に合わせて、「ながら」形式で知ることができるメディアの強さが再確認できる。
一方、書籍のような「他の記事に合わせてついでに」という機会が少ないメディア、意図的にアクセスしないと目を通す機会の少ないインターネット経由は回答率は押し並べて低い。元々関心度が高くないこともあり、自発的な情報取得が行われにくいのが現状のようだ。
そのような状況をそれとなく認識しているからか、「今後の啓蒙に求められる手立て」においても、テレビや新聞に対する期待は大きい。
「テレビ番組や新聞を利用した詳細な情報提供」を期待する声は約8割。見方を変えると、現状の広報・放送量では啓蒙として足りない、今まで以上に高品質・大量の展開が必要であるとの認識が強いことになる。
興味深いのは展覧会の開催を求める声が1/3を超えていること。認知経由としての「講演会・研修会・シンポジウム」は3.1%しかなかったが、資料をしっかりと集められた上で一望できる、(多分に公的な)状況の説明・情報の展覧会への需要が大きいことが分かる。
需要の大きさとして「見易さ・分かりやすさを重視したウェブサイトの開設」の期待も高く、33.0%。インターネット経由で認知した人が1割を切っているにも関わらず、適切で分かりやすく、ハードルが低いタイプの専用サイト(こちらも多分に公的なもの)が開設されることを望む声は強い。 見方を変えれば、現行のネット経由の情報提供は、質・量共に不足していることになる。
なお前回分と比較すると「テレビ・ラジオCMの放送」か大きく伸びているが、これは前回はテレビのみで、今回はそれにラジオが加わったため。ラジオCMの需要が多分にあることがうかがえる。
尖閣諸島問題に関心がある人は3/4、無関心派も啓蒙不足が原因か
尖閣諸島に関する問題に関心があるか否かを聞いたところ、強い関心を持つ人は38.0%、どちらかといえば関心がある人は36.5%となり、合わせて74.5%が「関心派」という結果が出た。
逆にどちらかといえば関心が無い人は15.6%、全く関心が無い人は8.3%となり、合わせて23.9%が「無関心派」に属する。前回分よりもいくぶん「関心派」が増えている。
「関心派」の具体的内容としては、「我が国の尖閣諸島に対する領有権の根拠」を挙げる人がもっとも多く、60.3%。次いで「歴史的経緯」や「日本及び中国・台湾以外の各国・地域の態度」が続く。
見方を変えれば今件問題について広報・啓蒙・公知を行う場合、これらの要件に重点を置いて情報を配信することで、多くの需要に応えることができることになる。
一方、「無関心派」が関心を示さない理由として挙げたのは「自分の生活にあまり影響が無い」で、55.2%。次いで「尖閣諸島に関して知る機会や考える機会が無かった」が35.9%と続いている。
国レベルでの事象である尖閣諸島問題だが(日本国としては「尖閣諸島に関する領有権の問題」そのものがそもそも論として存在しないという見解であることに注意)、一人一人の立ち位置から見れば、直接生活には関係の無いものとの認識も仕方がないように見える。ただしこれは周辺海域の施政権にも関わる問題となり、対応次第では同諸島以外の問題にも連鎖反応が生じるリスクも大いにある(東シナ海ガス田問題が好例)。
要は「尖閣諸島だけの問題で、自分の日常生活には影響が無い」と回答者が考えているに過ぎない、見方を変えれば回答者の認識・情報が不足していることになる。この点では第2位の回答「尖閣諸島に関して知る機会や考える機会が無かった」も近しい。
第3位以降の「内容が難しい」「紛争や武力衝突など負のイメージを連想する」は、個々の心境・性質にも寄るため、仕方のないかもしれない。しかし第1位・第2位の理由は、多分に啓蒙・情報公知不足によるところが大きい。今調査の調査要目にある「(調査目的として)尖閣諸島に関する国民の意識を調査し、今後の施策の参考とする」を誠実に、そして確実に実行することを期待したい。
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