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レギュラーガソリン価格の動向を確認してみる(2014年)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自家用車所有者には非常に気になるガソリン価格だが……

ガソリン価格:年平均ではオイルショックを超えている

人だけでなく物資の輸送にも用いられ、燃焼機関を動力源とする自動車に欠かせない存在のガソリン。昨今では激しい価格動向で注目されているが、その動きを確認していく。

まずはガソリンの原料となる原油価格の動向をチェックする。次に示すのは原油価格の基準値として知られ、他の産油地の原油価格にも大きな影響を与えている、WTI(アメリカ南部などで産出される原油ウェスト・テキサス・インターミディエイト(West Texas Intermediate))の先物価格動向。2007年からの月次と、今年の日次推移をグラフ化する。

↑ WTI価格(1バレルあたり、ドル、2007年1月-、月次)
↑ WTI価格(1バレルあたり、ドル、2007年1月-、月次)
↑ WTI価格(1バレルあたり、ドル、2014年1月1日-、日次)
↑ WTI価格(1バレルあたり、ドル、2014年1月1日-、日次)

2008年以降の資源高騰とその後の反動による急落が、いかに異常な状況だったかが理解できる。さらに直近、今夏以降の変動の大きさも一目瞭然。今年1年に限れば、6月20日に付けた最高値107ドル95セントと比べ、今グラフ上における直近12月15日は55ドル95セント、半年で大よそ半分にまで下落している。原油の輸出入が経済に大きく関与している国では、さまざまな変化が生じてしまう、行動を決意させねばならなくなるのも納得がいく。

この原油価格の動向を頭に入れた上で、日本のガソリン価格を見ていくことにする。総務省統計局・小売物価統計調査などから逐次各値を抽出した上で生成したのが次のグラフ。月次データのグラフは金融危機が勃発した2007年の頭からに限定し、激しい動向が分かりやすいようにしている。

↑ 自動車ガソリンの東京都区部小売価格(年ベース、円)(1970年-2014年)(2014年は11月までの平均)
↑ 自動車ガソリンの東京都区部小売価格(年ベース、円)(1970年-2014年)(2014年は11月までの平均)
↑ 自動車ガソリンの東京都区部小売価格(月ベース、円)(2007年1月-2014年11月)
↑ 自動車ガソリンの東京都区部小売価格(月ベース、円)(2007年1月-2014年11月)

2008年は夏期におけるガソリン価格高騰のイメージが強いため、同年の年次データが思ったより低いことに違和感を覚えるかもしれない。これは2008年後半においてガソリン価格が急落したため、年次における平均値としては押し下げられてしまったのが原因。二つ目の月次データを元にしたグラフで「原油直近天井価格」以後の急落を見れば、その下げぶりは一目瞭然。

一方、月次では、2008年4月の暫定税率一時解除に伴う下げを見せたあとは上昇を続けたものの、原油価格の天井となる同年7月から8月付近で最高値をつけ、その後急速に値を下げている。そして原油価格の上昇、2012年末以降はそれに加えて為替レートの円安化と共に再び少しずつ上昇傾向にあり、それが現在まで続いている。これは一つ目のグラフ、原油価格の動向にほぼ連動している。昨今のガソリン価格の高値ぶりは、為替レートにおける円安化と共に、原材料の原油価格の上昇に伴うものであることが、改めて認識できよう。

なお2008年分の年次は直上の通り急上昇のあと急降下したため、平均化の上でそれなりな高値(156円)に留まっているが、今年2014年は2009年の下落以降上昇機運が夏まで続いていたことから、結果として11月時点までの平均値でも高値のまま。1か月分の残りがあるものの、年次の暫定値としては直近の金融危機、そして第二次オイルショックを超える162円をつけてしまっている。12月分で際立った値下げ方がなされても、恐らく金融危機ぼっ発時の高値156円を超えた値で2014年の年次分は締めくくられるに違いない。

ちまたで見聞きするガソリン価格への反応

「景気ウォッチャー調査」をはじめとする各種市場調査、民間の商業関連の調査を読むと、電気代と共にガソリン代の上昇に対する負担増に関する影響の大きさが目に留まる。またガソリンスタンドの価格も少しずつではあるものの確実に、今夏頃まで価格は上昇していた。

これは上記にある通り、原油価格の高騰によるところが小さくない。為替レートの変動(円安・ドル高)の影響もあるが、今夏までは1ドル100円あたりを行き来しており、ガソリン・灯油価格に大きな影響を与えるものではない。

ところが夏以降、「為替の大幅な円安化」「原油価格の大幅下落」という、ガソリン価格に大きな影響を与える事象が同時期に発生している。円安化の理由は「円ドル為替相場の移り変わりをグラフ化してみる」でも解説の通り、日米両国の金融政策上におけるいくつかの決定と、アメリカ経済の復調を受けてのもの。そして原油価格の大幅下落は、石油市場においてシェア維持を模索するOPECとシェールガスによる市場参入を模索するアメリカとのチキンレース的な状況によるもの。原油を輸出することで外貨を稼いでいるロシアのルーブル安は、主にこの「レース」に巻き込まれた形。

日本では同時に円安が進んでいることと、すでに調達済みのものの出荷が先になることもあり、急激に値が下がることはないが、確実に原油価格の下落の影響が出始めている。11月時点のガソリン価格は157円とあるが、執筆時点で東京都内のガソリン価格を確認すると、レギュラーガソリン(東京都)は12月18日から24日の集計値として、139円台をつけている(gogo.gsより)。また周辺環境が変化する材料が無いことから、今後しばらくはこの状態が続くことが予想される。

ガソリンは現在の日常生活には欠かせない。それは直接自動車の運転によって消費するのみならず、流通においても多用されるため、ガソリン価格の変化は多種多様な商品価格にも大きな影響を与える。さらには費用・経費の上で、ガソリン価格次第でビジネス領域を縮小したり、商売そのものを断念せざるを得ない事例もある。今後もガソリン価格の動向には、深い留意を払いたいところだ。

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ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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