Yahoo!ニュース

「若者は自分勝手、他人のことなど考えない」は本当?

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 震災以降活発化したように見えるボランティア活動。若年層の参加も多いが……

昨今の若者の行動様式を評する言い回しの一つに挙げられる「自分勝手」「他人より自分優先」。その認識が事実なのか否か、一つの指標を統計数理研究所の定点観測「日本人の国民性」の公開データから確認していく。同調査は1953年以降5年毎に実施しているもので、20歳以上の男女個人を対象にした標本調査。層化多段無作為抽出法で2254人から6400人の標本を抽出し、個別面接聴取法で実施している。

次に示すのはその調査の「好きなくらし方か人のためか」の内部項目。いずれの暮らし方に賛成かを答えてもらったものだが、自分本意が4割、他人献身が5割強、その他・無回答が1割足らずというところ。

↑ どちらの暮らし方に賛成か
↑ どちらの暮らし方に賛成か

経年での変化はあまり感じられない。

そこで次に世代別の「他人献身」の選択肢、つまり「自分の好きなことか否かはともかく人のためになること」をする暮らし方に賛成する人の割合の推移を、折れ線グラフで表すことにした。

↑ 「自分の好きなことか否かはともかく人のためになる事」の比率
↑ 「自分の好きなことか否かはともかく人のためになる事」の比率

直近のデータでは、70代以上が抜きんでており63%と高い値。しかしそれ以外の世代では45%から55%の間で集約しており、実質的にほとんど差は無い。むしろ20代は40代や50代よりも高い。若年層を指して「若者は人のためより自分本位だ」との指摘は、少なくとも昨今では困難。

以前は若年層の方が低い値を示していた、つまり他人への貢献度が低い状態。しかし20代・30代で、前世紀末期から2013年にかけて10ポイント内外の増加が確認できる。明らかに若年層の間で考え方の上で変化が起きている。他方50代以降は1998年がピークで、それ以降は漸減~横ばいの流れ。特に50代から60代、いわゆる団塊の世代が該当する世代での減退が顕著。

もっとも直近2013年分においては、30代の減少と20代の急激な増加が目に留まる。後者はともかく前者は過去数回の流れに反するもので、少々気になるところではある。

一つ注意したいのは、各調査年における回答世代が、調査年を経ても同じ世代では無い点(調査年における年齢で仕切り分けをしている)。ややこしい話だが、例えば1983年に20代で回答した人達から成る世代層は、30年経過した2013年の時点でも20代として回答するわけではなく、(原則)50代(20+30=50)での回答となる。歳と共に考え方に変化が生じるのか、あるいは世代ごとの思考パターンは歳を経ても継承されるのか、その実態はケースバイケースではある。

今件調査項目で、今世紀に入ってから50代以降の値が減退気味、40代以下の値が伸びているのも、その「回答世代層」間のギャップが一因の可能性はある。実際、今件データを精査すると、回答した時の歳ではなく、(産まれた年代で構成される)世代によるところも大きいとの指摘が「自分勝手なのは年齢次第かそれとも世代なのか、そして今の若者の心境とは」で成されており、興味深い相関関係が見出されている。

ともあれ、このデータのみで世間一般のすべてを明確に裏付けたわけでは無い。だが「若年層は社会貢献への意欲・意識が薄い」とする、一部の意見・主張を覆すだけの数字として価値あるものには違いない。

■関連記事:

テレビはシニア、ネットは若者…主要メディアの利用時間をグラフ化してみる

若者層の新聞離れのトップは「お金がかかるから」、その意見に潜むものは……

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事