全売上の2.3%…ますます落ち込むコンビニの出版物販売額(2014年発表版)
コンビニ店舗数は増える一方で出版物の売り上げは減る
販売スペースがますます縮小の一途をたどるコンビニの雑誌などをはじめとする印刷物。どこまで売り上げは落ちているのか、その現状を日販による『出版物販売額の実態』最新版などのデータを基に確認していく。
まずはコンビニでの出版物売上高とコンビニ店舗数を確認する。コンビニ店舗数が増加傾向にあるのは周知の通りだが、それに反してコンビニの一商品として陳列される出版物の販売額は減少の一途をたどっている。
店舗数は2004年以降頭打ちとなるが、2008年に再び増加に転じ、2010年のイレギュラーをのぞけばその動きは継続中。直近の2013年は加速がついた増加ぶりが見受けられる(前年比で7.5%の増加)。一方で出版物の売上高は2003年以降は漸減、2006年以降は加速的な低下傾向を見せている。この原因については
・減少時期がインターネットやモバイル端末の本格的普及時期と重なるため、時間を潰すためのツールとしての「コンビニでの雑誌」の立ち位置がインターネットやモバイル端末に奪われている
・家計単位での雑誌販売額の減退
・コンビニで販売される機会が多い雑誌、ビジネスやマネー誌、HowTo関連など、関連雑誌業界不調
・コンビニで販売されるタイプの雑誌における付加価値や情報そのものの陳腐化
・コンビニにおける利用客の消費性向の変化(お弁当などと一緒の「ついで買い」が出版物からスイーツやフライヤーアイテムに変化しつつある、など)
・成人向け雑誌の販売スペース縮小、取扱の中止
などが挙げられる。もちろんそれぞれ単独の理由のみではなく、複合した結果として現状の売り上げ低迷状況が生じている次第である。
コンビニの売り上げ全体に占める比率も…
次に示すのはコンビニ1店舗あたりの概算出版物売上高。年ベースのものだが、確実に減少している。
全体額同様、2003年以降は漸減、2006年前後から減少幅を大きくしていることが改めて分かる。コンビニそのものの総売上(出版物も含めた全物品・サービスを合わせた売上)は漸増しているので、当然、全売上に占める出版物の売上比率も大きく下がる。全体額が増えて、対象額が減れば、全体比率が減少するのは当然の話。
雑誌をはじめとした出版物そのものの媒体力、集客力が低下している事は否めない。場所の効率的利用が徹底されるコンビニでは、出版物の取扱比率が減るのも当然の結果。もっともこの下落ぶりは事実を認識させるには十分以上の実態で、このままではあと数年で、コンビニ総売り上げの1%を切るのも容易に想定できてしまう。
コンビニにおける売上、影響力の減退が続く印刷物だが、その一方でコンビニを「地域社会と密着するトレンド発信地的な重要拠点」と定義した上で、広報展開的な意味合いも持たせた雑誌を発売・配布する動きもある。また本屋の機能のうち「取り寄せ」「取り置き」「定期購読」「配送」に限定をした上で、本屋的業務を取り扱うコンビニ(セブン-イレブン)も登場している。地域小規模書店の撤退が続く中、コンビニの利便性・地域密着性を考慮すると、切り口としては面白い。効果が出れば、今後一部コンビニにおける印刷物の売上高に変化も生じて来るだろう。
雑誌という媒体が、携帯電話やパソコンと比べて低いハードルを持つものの、『情報発信ツール』としての影響力を減らしつつある中、どこまで送り手側の期待に応えられるのか。2013年分のデータでは、コンビニの売上高の1/43にまで割合を減らしてしまった印刷物販売だが、週刊誌などの価格はむしろ上昇気味で、付録付き雑誌(もちろん価格はお高め)の増加も合わせて考えれば、「売上額」ではなく「冊数」では、上のグラフ以上の急降下を形成しているのは容易に想像できる。試行錯誤が続き、競合他商品との場所のせめぎ合いをしながら、今後コンビニの中で出版物がどのような意味合い、存在価値を呈していくのか。気になるところではある。
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※各グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください
(C)日販 営業推進室 書店経営支援チーム「2014 出版物販売額の実態」