「仕事アリ」「乳幼児アリ」な母親の育児事情
仕事有の母親がいる世帯では日中、誰が育児をするのか
何かと手間がかかる幼少児の育児。母親が仕事を有しているのならなおさら育児は頭を悩ませる問題となる。そのような環境における育児の実態を、厚生労働省の調査「国民生活基礎調査の概況」の結果から確認していく。
児童(18歳未満の未婚の者)を末子に持つ世帯にて、母親が仕事をしているか否かの比率は次の通り。全体では6割強、末子が3歳ならばほぼ5割で、「母親は仕事あり」といった状況にある。
子供が「乳幼児」の場合に母親が働きに出る場合、育児の問題が大きな課題となる。「仕事はしたい(自分の意志として、あるいは家計の補助として)」「育児は必要」といった両てんびんを持たされ、子供が幼い時の育児に頭を悩ませる母親像が容易に想像される。
今調査では「末子が乳幼児」「母親が仕事を持つ」の条件に合致した世帯で、誰がその末子を日中は保育するのか、複数回答で末子の年齢別に尋ねている。その結果と、上のグラフ「末子の年齢別、仕事ありの母親の割合」をかぶせたのが次のグラフ。「仕事ありの母親の割合」とその他の項目とは調査対象母集団が異なるが、比較値として見る際の参考にはなる。さらに経年変化をざっと見で確認するため、前回調査分となる2010年分のグラフも併記する(母親の仕事あり・無しは毎年の調査だが、保育状態は3年おきにしか調査は実施されない)。
ゼロ歳児の場合は父母が保育する場合が多く7割。全般的に「末子の年齢が経るほど(働いている場合の)母親の労働時間は長い」傾向があるため、短時間のみ父親や祖父母に任せて母親が働きに出るというパターンが想定される(今件は複数回答形式である)。また幼少児は何かと手間がかかりリスクも大きいため、他人には任せ難いという事情もある。一方、ゼロ歳児から1/4ほどは認可保育園を活用しているのも確認できる。
これが1歳になると、父母の育児率はゼロ歳における値のほぼ約半分、34.0%にまで減り、その分認可保育園の利用が増える。以後「父母」「祖父母」は減少し続け、3歳位までは認可保育園が増加する。3歳以降になると幼稚園も活用できるために幼稚園利用率が急激に増え、認可保育園利用率が漸減する。
主要な項目の動向を大よそまとめると次の通り。
・父母……ゼロ歳児では高率。1歳になると急激に減り、あとは漸減。
・祖父母……2歳時位までは1割強。後は1割足らずで横ばい。
・認可保育園……ゼロ歳児時点で1/4近くが利用。3歳児のほぼ7割がピークで、以後漸減。
・幼稚園……法的利用年齢の3歳以降急増。
・認可外保育施設……2歳時に最多の1割近く、あとは漸減。
三世代世帯、あるいは近所に祖父母世帯が居る家庭ならば、母親の就労時に保育をお願いする事例も多々考えられる(「お爺ちゃんっ子」「お婆ちゃんっ子」というもの)。しかし「種類別世帯数の推移をグラフ化してみる」にもあるように三世代世帯は全世帯のうち1割を有に切っており、期待はできそうにない。
厚生労働省の「出生動向基本調査」など各種調査結果でも、子供を持てない・持たない事由(≒少子化の遠因)として、(特に乳幼児期の)育児問題がクローズアップされている。昔のように三世代世帯が当たり前で、母親の就労も比率的に低いのなら問題視されなかったが、母親の就労そのものの原因や、幼稚園・保育園・認可外保育施設、そして待機児童の話と合わせ、状況は複雑に絡み合っている。
また2010年と2013年で比較すると、大まかな形状には変化は無いものの、、祖父母の回答率が減り、認可外保育施設の増加が見受けられる。核家族化の進行、兼業夫婦の増加などの社会的変化が反映されているといえる。
母親の仕事が無い場合は……?
乳幼児の保育はどのような状態がベストで、それに向けてどのようなかじ取りをすべきなのだろうか。当事者はもちろん関係各方面が意見を通わせて模索していかねばならない。その際には「自分の周りでこのような状態を見たから」「自分はこのようにしたいと考えるから」といった狭い視野だけの判断ではなく、今件のような資料を元にすることこそが重要である。
なお「仕事なし」、つまり専業主婦における保育状況は次の通りとなる。比較参考として確認をしておく。
「仕事なし」の専業主婦が家事に没頭しているのか、自らの技術向上に励み修練をしているのか、趣味趣向を楽しんでいるのかまでは今項目だけでは判断が難しいが、「3歳までは夫婦で」「3歳以降は幼稚園を多用」「認可保育園も利用する事例が多々ある」とのパターンに集約できる。兼業主婦の保育状況は良く問題視されるが、それと比較する形での専業主婦の状況はほとんど事例が呈されることは無い。今件傾向も合わせて覚えておくことをお薦めする。
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