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新聞の推定読者数は1987年がピーク、そして2020年までには…

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 図書館や商用施設でよく見かける新聞ラック。複数が使うため回読人数は増えるが…

先日前年比で78万部減…国内新聞発行部数は4700万部・1世帯あたり0.86部で解説した通り、日本の新聞発行部数は1997年をピーク漸減を続けている。押し紙問題などもあるが、仮に各新聞社・日本新聞協会発表の発行部数がすべて読者の手元に届いていたとしても、新聞の影響力は少しずつ減っていることになる。

↑ 新聞発行部数(1942年-2013年、万部)
↑ 新聞発行部数(1942年-2013年、万部)

一方で日本新聞協会や大手新聞社では「1部の新聞は複数の人に読まれており、読者数は単純な発行部数よりも多くなる」と主張し、この考えによる読者数≒メディア力を「回読人数」と定義している。要は「購入者自身だけでなく回し読みまで含めた総読者数」。

この新聞1部当たりの「回読人数」は各新聞社によって違いがあるが、スタンド売り、事務所や商用施設などでの購入事例も合わせ、平均世帯人員数とほぼ一致する。要は「新聞購読者はすべて世帯ベース」「その世帯では構成員全員が新聞を回し読みする」とする仮定。

この考えを基に、新聞発行部数について、朝夕刊を1部と数える方式による値を公開し始めた1956年から、直近の「国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)で平均世帯人員数が公開されている2012年分まで、新聞発行部数と平均世帯人員数を乗算して「回読人数」を試算。その上で、1956年時点の結果を1.00(基準値)とし、その変移をグラフ化したのが次の図。

↑ 新聞推定読者数推移(1956年=1.00)
↑ 新聞推定読者数推移(1956年=1.00)

「試算」による結果ではあるが、回読人数のピークは新聞発行部数そのもののピークの1997年よりも10年前、1987年に起きていたことになる。世帯構成人数の減少度合いが、新聞発行部数(≒購読世帯数)の増加を上回ったのが主要因。それ以降は何度かの起伏を経て、全体的には減少、21世紀に入ってからは下降速度を強めている。

それでも推定読者数は1970年代レベルの値を維持している。ただしこのままのペースで減少し続ければ、2020年前後には1956年の基準値レベルにまで落ち込むことになる。

↑ 新聞推定読者数推移(1956年=1.00)(多項式近似曲線・次数=5を追加・2020年まで延長)
↑ 新聞推定読者数推移(1956年=1.00)(多項式近似曲線・次数=5を追加・2020年まで延長)

基準値の1.00を割り込む、つまり回読人数が1956年の水準以下となるのは2017年前後となる。

これはあくまでも推論・試算のレベルでしか無い。いわゆる「押し紙」は反映されていないため、現状はもっと厳しいものだろう。日本の新聞業界にとって大きなターニングポイントとなる今後数年の間に、新聞業界がダイナミックかつ業界と読者双方にプラスとなる改革を成し遂げ、このカーブを上向きにさせるかじ取りを行うことを祈りたい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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