食材偽装で想う3つのポイント

食材偽装の問題は定期的に話題に登るが、昨今の騒動では10月に公開された阪急阪神ホテルズ運営のホテルにおける、レストランなどでの問題に端を発している。それこそ週に何度も外食業界関係者の上層部が記者会見で頭を下げ、それと共に対象となった食材の映像が報道されている。

業界の姿勢や体質、問題意識、法的問題などの分析は他の専門家の方々にお任せするとして。当方が想うことをいくつか書き記しておくことにする。

まず一つは「権威付けは味覚に大きな影響を与える」というもの。食材を偽った料理を食べて「おかしいな?」と思う人もいたはずだが、ほとんどのお客は提示された品質を疑わず口にし、満足している。後述する「腕前」も一因だが、想い起せば自分も含め、多くの人はイメージを食べていることに違いはない。それを再確認させられる。明代「賢奕」(「中華文人食物語」経由)にある蘇軾の「河陽の豚」のエピソードを想い起させる(蘇軾が美味とされる河陽県の豚を用いた東坡肉(トンポーロー)を地元の名士に食させ、名士達は絶賛するが、実はその豚肉は地元の豚だったことが分かり面目丸つぶれ、という逸話)。

二つめは「偽装できた腕前に注目」。今件に限らず食材偽装で問題なのは、偽装、つまり「ウソをつくこと」。例えば上級の和牛ステーキ肉として相応の価格で提供されたものが、実は低コストの牛脂注入肉の他国産だったら、誰もが怒るに決まっている。何しろ「上級の和牛ステーキ肉」として対価を支払っているのだから(もちろん景品表示法などの法的問題もある)。

一方、ほとんどのお客は「上級の和牛ステーキ肉」の味に疑いを持たずにその味わいに満足している。見方を変えれば、それだけ上手にホンモノらしく取り繕う技術を有していたことになる。今件では昔問題になった消費期限や賞味期限の改ざん、問題視される成分混入をはじめとする、健康上問題となる事態も見られない(※無論この観点において、アレルギー関連物質の使用隠ぺいは問題視すべきである)。

そこで、一連の始末、ケジメを付けたあと、その技術をむしろ活かす形で、新たな展開をはじめてはどうだろうか。もちろん法的な問題が無いように、あらかじめ「正体」を明かす必要はある。だが上級の食材を使った高級料理「っぽい」メニューを、安価で食すことができるとあれば、新たな人気を興すかもしれない。「気が付かずに」「慣習だから」と説明している筋もあるが、一連の話でその理由の多くはコスト問題。見方を変えればそれだけ低コストで創れるのだから、販売価格も安くできるに違いない。

ブランドの問題などもあろうが、「災い転じて福となす」の発想でもある。肉などを野菜や根菜類で表現する精進料理と、同じようなものだと考えれば良い。

三つめは二つめと似たようなものだが「レシピを披露してほしい」。調理人の腕前によるところが大きいが、異なる食材で同じような味を示せる食材の組み合わせ、調理方法は、実は多くの人が気になっているのではないだろうか。報道される一部の事例や、企業側が発表したリリースに記載されている実例を見るに、なるほど感を覚えた人も多いはず。レシピの公開、さらには料理教室の開催もアリかもしれない。

世の中「ゼロ」と「イチ」だけではない

このような話をすると「茶化すのもいい加減にしろ」とお怒りの声を挙げる人もいるだろう。そのような主旨はまったくなく、文中でも触れている通り、法的問題、そして倫理的問題にはしっかりと決着はつけるべきである。

無論「決着」の度合いは適正に。このような事例では概して報道が過熱、過剰となり、多分に煽られた、無意味どころか有害なバッシングが行われるのが常である。その点には注意しなければならない。

今件は見方を変えれば、それで終わりにしてしまっては、あまりにももったいない技術の蓄積が露呈されたことでもある。「絞りたての果汁ジュース」が実は「紙パックのジュース」だったという事例ならともかく、さまざまな技法を凝らした上でのものなら、むしろそれを有効に活かすべきではないだろうか。

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