熱中症体験者は9%、でも「もしかして…?」まで含めると3割超
熱中症経験者は1割足らず、ただし…
先日総務省消防庁から発表された速報値によると、熱中症による搬送人数は今年の累計で5万人を超え、昨年の同時期までの値と比べて3割強程の増加を示している。とはいえ、週単位の搬送者数推移を見ると、峠は越えた感はある。
しかしながら「暑さ寒さも彼岸まで」との言葉にもある通り、そして去年の残暑の事例からも分かるように、少なくとも9月一杯までは熱中症に対する「意図的な対策」が必要となる。
それでは実際、どの程度の人がこれまで熱中症を経験したことがあるのだろうか。ライフメディアのリサーチバンクが10代から50代の男女に行った調査結果では、「明らかに熱中症」という経験は8.9%。10人に1人足らずに過ぎなかった。
ただし「熱中症」とは断定できないが、それらしい症状の経験がある、もしかしらたあの体調不良や筋肉痛は熱中症によるものだったのではないか、というものまで含めると3割を超える。
環境省の熱中症環境保健マニュアルによれば、熱中症の症状(とその対応)はその重度で次のように区分される。
・I度……涼しい場所で身体を冷やし、水分を与える。改善が無ければ病院へ
めまい・失神(熱失神)
筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り、熱けいれん)
大量の発汗
・II度……自分で水分や塩分を摂れない時は病院へ搬送
頭痛・気分の不快・吐き気・おう吐・倦怠感・虚脱感(熱疲労)
・III度……病院へ搬送
意識障害・けいれん・手足の運動障害
高体温(熱射病、重度の日射病)
単なる風邪や疲労、体調不良と思っていた症状が、実は熱中症を起因とするものだったという可能性は十分にある。しかし「めまい」「筋肉痛」などは、それが熱中症によるものか否かを素人が即時に判断することは難しい。「断定はできないが類似症状経験あり」が26.8%もいるのも、仕方ない話ではある。
熱中症対策は「水分補給」「扇風機使用」
ケガをしてから治療する・虫歯になってから歯医者に行くのではなく、ケガをしないようにする・虫歯を防ぐ方が好ましいのと同様に、熱中症にかかってからの対策を知っておくのは必要不可欠だが、熱中症を発症しないような予防策を打つ方がより一層望ましい。
同じくリサーチバンクの調査では、自己防衛策として「水分補給」「扇風機使用」「エアコンで温度調整」など、水分と暑さへの備えが上位を占めている。
先の環境省のマニュアルでも、予防策として「暑さを避ける」「服装を工夫する」「水分を補給する」などを挙げており、個人の対策という観点では、ほぼ正しい情報が浸透していることが分かる。
(1)暑さを避けましょう。
(2)服装を工夫しましょう。
(3)こまめに水分を補給しましょう。
(4)急に暑くなる日に注意しましょう。
(5)暑さに備えた体作りをしましょう。
(6)個人の条件を考慮しましょう。
(7)集団活動の場ではお互いに配慮しましょう。
ただし今回取り上げたリサーチバンクの調査は50代までを対象としたもの。消防庁の速報値などにもある通り、熱中症による救急搬送者の半数は高齢者(65歳以上)のため、これらの熱中症対策が浸透していない可能性は十分にある。
また高齢者は皮膚の感覚が若年層と比べて劣化しており、暑さなどの周囲環境の変化に気が付くのが遅れ、それが熱中症への対応を遅くするリスクもある。
自分自身はもちろんだが、シニア層を中心とした周囲の人達への体調にも気を使ってほしい。そして、屋外だけでなく室内でも十分にリスクはある。油断せず、秋が到来するまでの間、万全な状態で熱中症へ備えて欲しいものである。