Yahoo!ニュース

トランプ大統領に「追いすがった」日本の保守派の4年間~彼らは安倍政権の上位互換を夢見た~

古谷経衡作家/評論家/一般社団法人 令和政治社会問題研究所所長
仏G7サミットでの安倍前首相とトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

 今次米大統領選挙では、民主党バイデン氏が勝利を確実にし、来年からの政権移行が確実となった。造反選挙人や司法闘争などの不確定要素は残るが、バイデン次期大統領は揺るがない情勢である。そんな中、日本の保守派やそれに追従するネット右翼は、今次米大統領選挙でトランプ氏敗北が濃厚となると、「バイデン陣営が不正選挙を行った」「勝ったのはトランプ」などと、他国の大統領選挙で自らに投票権が無いにもかかわらず、アメリカ本国の保守派かそれ以上の勢いで、一方的にトランプ大統領側に肩入れするという奇妙な言動が目立った。

 2016年、ヒラリー・クリントン候補とトランプ氏の事実上の一騎打ちで、まさかのトランプ氏勝利に、日本の保守派は複雑な心境を持った。トランプ氏が共和党予備選の段階から、在日米軍の撤退や在日米軍駐留費の増額等を公言し、貿易問題についても対日強硬姿勢をあらわにしたことがその理由である。しかし2017年頃からトランプ政権が所謂「米中対立」を醸成すると、日本の保守派は急激にトランプ支持を鮮明にし、加えて当時の安倍晋三総理がトランプ政権支持を鮮明に打ち出し、何度も訪米して「シンゾー・トランプ関係」を築いたことから、他国の国家元首にも関わらず、まるでトランプ氏を自らの庇護者と捉え、トランプ支持を強く打ち出した。

 トランプ政権の4年間は、まるでトランプ氏が予想していなかった方向―つまりアメリカの保守派だけではなくむしろ日本の保守派から熱狂的に支持されるに至ったのである。本稿では、バイデン氏勝利が確実になった今、トランプ政権の4年間とそれを熱狂的に支持した日本の保守派の動向を探る。

・2016年当初、日本の保守派の「推し」は、マルコ・ルビオとヒラリー・クリントンだった

マイアミのキューバ人街・ルビオ氏の地元である(フォトAC)
マイアミのキューバ人街・ルビオ氏の地元である(フォトAC)

 2016年の大統領選挙は、共和党予備選の段階から日本の保守派は動揺していた。事実はどうあれ、米民主党=対日強硬、米共和党=対日融和という古臭い構図に落とし込めば、日本の保守派はこの年に関わらず、伝統的に米共和党候補の勝利を願うことが多い。しかしこの年の予備選では、共和党候補でありながらも先に述べた通り、「在日米軍撤退」や「在日米軍駐留経費の対日負担増(あるいは全額)要求」「対日貿易不均衡の是正」などを掲げたトランプ氏が、共和党予備選の段階から地滑り的勝利を収めたため、日本の保守派はトランプ候補による過酷な対日要求を恐れて戦々恐々とした。

 日本の保守派は、2016年の共和党予備選挙では穏健保守とされ、当初から本命とされたマルコ・ルビオ候補を推した。ルビオ氏はキューバ系移民であり、カストロ体制に弾圧され、それに反発するキューバ系亡命者等の出自を有する。カストロ体制下でアメリカに渡ったキューバ系の人々はそれが故に強烈な反共産主義者で、俄然共和党支持者が多い。しかし人種的には西欧の白人系とは異なる為、主義主張としては右寄りの穏健となる。

 私も過日、マイアミのキューバ人街を訪れたことがあるが、主たる会話はスペイン語。土産物屋やレストランにはキューバ国旗が乱舞する。キューバ人コミュニティがフロリダ南部では現在でも色濃く形成されているのだ。日米同盟の静謐を願う日本の保守派は、このような経緯でルビオ氏の指名を願ったが、同氏は地元フロリダですらトランプ氏に敗北し、早々に撤退した。ここでヒラリー・クリントンVSドナルド・トランプの一騎打ちの構図が固まった。

 日本の保守派は、「ジャパン・パッシング」(―狭義には、1998年のビル・クリントン大統領が訪中したにもかかわらず、同盟国である日本に立ち寄らず帰国した事)などの苦い経験から米民主党を禁忌していたが、「突飛もない対日強硬策を口走るトランプよりはヒラリーの方がマシ」という理屈でヒラリー候補を応援するに至った。この時期、保守界隈の重鎮であるジャーナリスト・櫻井よしこ氏の著書、『凛たる国家 日本よ、決意せよ』(ダイヤモンド社)の中で、氏は「いま、私たちは次の米国大統が誰になるのか、戦々恐々の思いで見守っている」とした上で、

「クリントン氏にはメール問題など不確定要素があり、結果は予測しにくい。現在、世論調査は微妙な差でクリントン氏有利を伝えており、私は日本の国益上、クリントン氏に勝ってほしいと考えている」―櫻井よしこ著『凛たる国家 日本よ、決意せよ』より

 と明言している。この本は2016年7月(米大統領選本選の4か月近く前)に発売されたものだが、内容が書かれたのは米民主・米共和両党の予備選挙が終わり、ヒラリーVSトランプの構図が固まって直後と考えられる。このように、2016年の段階では、「トランプよりもまだしもヒラリー」というのが、櫻井氏を筆頭とした保守界隈の共通の諒解事項であった。日本の保守派は最初、共和党予備選ではトランプではなくマルコ・ルビオ、そして本選ではヒラリーを推していたのである。

 しかし大方の予想に反して2016年の本選でトランプ氏が勝ち大統領になると、日本の保守派は日米同盟の静謐が覆されるのではないかと戦々恐々とした。だが、トランプ大統領の対日観は極めて旧態依然としたもので、在日米軍や在韓米軍の撤退は現実的ではなく、そういった対日政策の大転換が実現される可能性は薄まった。トランプ政権は対日政策ではなくまず米墨(メキシコ)国境における「壁」の建設に注力する旨宣言した。日本の保守派にとって、メキシコからの不法移民や越境者の問題は馴染みが薄く、トランプ政権発足後に於いてはこの動きを静観する構えを崩さないでいた。

・強き者にすがる日本の保守

日章旗と星条旗(フォトAC)
日章旗と星条旗(フォトAC)

 だが、2017年2月になって安倍首相(当時)がアメリカを訪問し、トランプ大統領が保有する別荘・フロリダ州の「マー・アー・ラゴ」で共にゴルフに興じる模様が流されると、保守界隈におけるトランプの評価は一挙に変わる。第二次安倍政権は2012年12月に発足し、トランプ政権はその半ばごろ、2017年からスタートするが、この間、安倍―トランプ会談は10回に及び、電話会談は30回、ゴルフ交遊は4回に及んだ。トランプ政権は気候変動枠組み条約(パリ協定)から脱退するが、主要国(G7)でほぼ日本だけがトランプ政権の外交政策を全面支持する格好となった。当然日本の保守派は安倍政権の熱心な擁護者なので、その「友」であるトランプも同胞として見做す。

 トランプ氏が大統領になる前に言っていた過酷な対日政策や日米同盟の事実上の形骸化の懸念が、安倍―トランプの10回に亘る首脳会談で雲散霧消した(ようにみえた)からこそ、日本の保守派はトランプを「日本の友」を飛び越えて「日本の庇護者」と見做すようになっていった。だが最大の理由は、トランプ政権が過酷な対日要求を弱めたように見えるからではない。前記の通り、2017年頃から本格的に開始された米中対立が根本ある。トランプ政権は覇権国家アメリカの脅威として中国を位置づけ、米中貿易の不均衡を説いた。米中対立が本格化したのは2018年からで、米中双方による対抗措置や報復関税の応酬となったのは周知のとおりである。

 ここで日本の保守派は、トランプ政権支持を完全に固めた。日本の保守派とそれに追従するネット右翼は、反中・嫌韓の思想を色濃く持つ。とりわけ中国に対しての敵愾心や、尖閣諸島問題を含む領土問題については毅然とした対応を採ることを政権与党に説き続け、それが不実行である、または媚中(中国に媚びる)とされる政治家や政党を目の敵にしていた。2012年12月に第二次安倍政権が発足すると、その前段階の自民党総裁選(安倍VS石破)や衆院選挙の自民党政策集の中で、自民党は「尖閣諸島への公務員常駐」を明記した。ところが第二次安倍政権が誕生するや、そういった対中強硬論は事実上反故にされた。これが保守派にとっては大変な不満であった。

 一方、トランプ政権はそういった日本の保守派が支持した第二次安倍政権が「有言不実行」としたことを堂々と世界中に述べてくれる。第二次安倍政権では反中政策がいまいち不足と心底考えていた日本の保守派は、トランプ政権が中国と本格的な対立を深めるや、拍手喝采してトランプ政権を支持する構図が固まっていった。自国の首相の反中政策が物足りないので、更に強国による反中政策に付和雷同する―この構図は換言すれば「事大主義」と言えなくは無いが、とにもかくにも日本の保守派は第二次安倍政権の「有言不実行」を補う存在としての新しい庇護者としてトランプ政権を見つめた。

 しかしながら、米中対立はあくまでアメリカの国益の為にトランプ政権が行ったことであって、日本の利益のためではない。アメリカはアメリカの国益でしか動かない(あらゆる国家は、その国の国益でしか動かない)―という冷徹なる国際政治のリアリズムを普段から説く保守派が、たまたま安倍首相と懇意にしているトランプ大統領が、自らの反中思想と重なる言動を採るからそれを支持する、というのはいささか軽薄ではないだろうか。

・トランプ大統領訪日で狂喜乱舞した日本の保守派

 そして日本の保守派と、それに追従するネット右翼が、トランプ大統領への礼賛を最高潮にしたのが2019年5月のトランプ大統領訪日である。この際、日本の著名な保守系言論人は、こぞってトランプ訪日に飛び上がった。同年5月26日、トランプ大統領が大相撲観戦を行った際の模様を、作家・門田隆将氏の記事から引用する。

 この30年で防衛費を50倍まで膨張させ、第一列島線に迫り、尖閣をはじめ東シナ海や南シナ海で剥き出しの領土獲得意欲を見せている中国の存在は、日本のみならず東アジア全体の脅威となっている。

 しかし、尖閣を「核心的利益」と強調し、「必要なら自国の領土(注=尖閣のこと)を武力で守る準備はいつでもできている」と繰り返す中国でも、これを「実行に移せない理由」は、ひとえに米国の存在にある。(中略)

 4月12日、産経新聞がトランプ氏の大相撲観戦の予定を1面トップでスクープした。記事を見た私は、(中略)マス席を確保してもらった。

 さすがに普段より値段が高く、かなりの金額だった。私は富家氏と相談し、いつもお世話になっている金美齢さん、櫻井よしこさんのお二人をご招待することにしたのだ。

 私たちのマス席は西方で通路のすぐ横。それはたまたまトランプ氏らが出入りする通路だった。朝乃山関への表彰が終わって退場する時、思わず、私たち4人が「Mr.President!」と声をかけるとトランプ氏がニコニコしながら近づいてきて、金美齢さんと握手をしてくれた。

 私も手を出すと、大きな手でぐっと握ってきた。カサカサしていて、アスリートのような手だった。私は、野球選手の手のようだと思ったが、考えたらトランプ氏はゴルフの腕前がシングルなので、それはゴルフ選手の手だったのだろう。私のあと櫻井さんも握手したが、富家氏だけがしそびれてしまった。(中略)

 要するに彼ら(*朝日新聞・毎日新聞のこと)は日米の蜜月にどうしても冷水を浴びせたいのである。このトランプ氏への厚遇に、毎日新聞が〈長期の国益にかなうのか〉という社説を掲げた(5月28日付)のも頷ける。

(中略)

 彼らの“願い”どおり、仮に中国が日米関係に楔を打ち込むことができれば、「その時」から尖閣をはじめ、日本の危機は始まる。そのことがわかっているからこそ、国民はトランプ氏を大歓迎し、天皇皇后両陛下も温かく出迎えた。

 明らかに中国サイドに立ってきた朝日新聞や毎日新聞には、逆にこれらがどうしても気に入らないのである。トランプ氏に対する歓待ぶりに、いちいち皮肉に満ちた否定的な報道を展開している所以がそこにある。

出典:門田隆将氏が明かす「トランプ握手騒動」と「新聞という病」強調筆者、*括弧内筆者

 この2019年5月におけるトランプ大統領訪日と、浮かれる日本の保守系言論人の心境が、門田氏の文章の中に凝縮されている。要するにトランプと仲良くすることは中国の尖閣侵略の抑止となる。これを良しとしないものが、朝日・毎日などの進歩系メディアであり、彼らは親中派なのである。よって安倍首相(当時)と親密なトランプを支持することが日本の国益につながる―という理屈なのである。しかし前述のとおり、この日トランプ氏と握手を交わしたという櫻井よしこ氏自体、自著の中で「私は日本の国益上、クリントン氏に勝ってほしいと考えている」と明言した過去については黙殺されている。

 そして安倍首相とトランプ大統領が10回に亘って首脳会談を行ってもなお、中国公船による尖閣諸島領海侵犯は収まるどころか増加しているも周知のところである。事程左様に、トランプ政権に対する日本の保守派の過剰な期待や親愛の情は、現実的に日本に対する中国の攻勢を抑止していると断定することはできない。更にトランプ政権は、こういった米中対立とは関係なく、この間ずっと在日米軍の駐留経費負担の不当な増額要求については全く手を緩めない方針で臨んできた。アメリカの米中対立は日本のためにやったことではなく、あくまでもアメリカの国益の為にトランプが決定し、実行したことだ。

 トランプ政権は安倍首相と懇意にするそぶりを見せながら、駐留在日米軍費用の負担については、2019年にボルトン前大統領補佐官が、それまでの4倍に当たる80億ドル(約8400億円前後)に増額要求するトランプ大統領の意向を日本側に伝えている。アメリカが善意で日本のことを想っているなら、こんな滅茶苦茶な要求はしないはずだが、実際にアメリカは在日米軍の駐留経費をめぐってこのような要望を日本側に伝えている。こういった不都合な事実もまた、門田氏も、日本の保守派も、またそれに追従するネット右翼も無視している。正確に事実を伝えるなら、「アメリカが日本の為に自国の防衛力を割くなら、これまでの4倍の負担金を払え、と言っているが、この要求に応える価値はありや」が正しい。しかし日本の保守派はこうしたトランプ政権の実に狡猾な部分を黙殺し、「反中姿勢」のみで自らの世界観と一致するトランプ大統領を手放しで歓迎し続けた。

 世界を巻き込んだ米中対立という状況の中で、超大国アメリカが反中姿勢を貫いている、という一心で日本の保守派はトランプ政権の対日要求の不都合な部分は全て黙殺し、その責任を日本の進歩系メディアに転嫁して、トランプ氏を万来歓迎した。その姿勢はトランプ大統領を日本の庇護者として半ば自己同一化しているに等しい。日本の保守派やそれに追従するネット右翼が、第二次安倍政権で「有言不実行」に終わった反中政策の代弁をトランプ政権に求めただけであって、当のトランプ政権は日本のために働く、という発想は無い。

 当たり前のことだがトランプ氏は日本の総理大臣ではなく、アメリカの国家元首であり大統領だからである。常に「国際社会の力学は自国の利益のみによって決定される」というリアリズムを説いてきた保守派が、トランプ大統領の言動は「反中包囲網という善意であり、日本の国益に資する」などと想像をたくましくするのは実に奇観と言わねばならない。

・コロナ禍での似非陰謀論も日本の保守派を虜に

テレビカメラマン(フォトAC)
テレビカメラマン(フォトAC)

 状況がさらに変わったのは2020年から世界を席巻し、今も鳴りやまないコロナ禍である。日本の保守派やネット右翼は、WHOの見解を無視し、新型コロナウィルスを「武漢肺炎」と呼称して、その因が全て中国にあると説いている。トランプ政権も極めて同様なことを国内向けに喧伝した。曰く「武漢ウィルスは中国の研究所から流失した可能性」曰く「武漢ウィルスの被害損耗に対して、制裁や賠償を中国に求めるべきだ」云々。新型コロナウィルスが中国の研究所から流失したという確証は存在しておらず、またウィルスが世界中を伝播していくにしたがって、中国由来ではなく途中の箇所で変異したものがさらに流行した可能性も指摘されている。最終的な結論は時を待つ必要があるが、こういったいささか陰謀論的で早計な「中国主犯説」を説くトランプ大統領に、日本の保守派やそれに追従するネット右翼は色めき立ち、更にトランプ支持は盤石になった。

 トランプ大統領は、アメリカ国内の進歩系と言われるメディア、特にCNNを名指しで批判し続けたことは既知のとおりである。アメリカの放送局は日本のように公正中立な放送姿勢が薄いので、メディアによって露骨に民主党支持、共和党支持が分かれる。前者の代表がCNNで、後者がFOXであると言える。この「特定のメディアを敵として名指しして攻撃する」というトランプ氏のお家芸は、日本の保守派やネット右翼の持つ世界観と極めて相性がいい。前述の門田氏が、「朝日新聞・毎日新聞」を事実上、中国に媚びる走狗と喝破したように、トランプ氏が特定の進歩系メディアを繰り返し攻撃したことは、元来日本における進歩系メディアを呪詛する保守派やネット右翼の世界観と重複した。

 トランプ氏があまりにもCNNを攻撃するので、ネット右翼の中では「CNNは日本で言うところの朝日新聞である」というネガティブなレッテルも頻出した。既存の大手メディアへの強烈な敵愾心を有する日本の保守派やネット右翼が、国は違えど日本と相似形(であると彼らは勝手に思っている)であるとする政権VS進歩系メディアの対立の構図に留飲を下げたのは言うまでもない。

 私はこの間、ネット右翼を自認する数人の人々に話を聞いた。彼らは押しなべて、「CNNは左翼テレビで、トランプでは無くバイデンを勝たせようとしている」と判を押したように答えた。しかし実際にCNNを観ているものは誰もいなかった。CNNは日本版がCS放送で有料で受信できる。私も自宅でCNNを視聴している。確かにCNNはトランプ政権に批判的な側面はあるが、大半の国際報道は時期にもよるが中東問題である。「CNNは左翼テレビ」と見做す割に、CNN日本版を視聴していない彼らの雑感は、実際には朝日新聞や毎日新聞を一切購読したことが無いのに、ネットだけの情報を観て「朝日・毎日は反日新聞」と決めつけるのに似ていると感じた。

・トランプ政権は第二次安倍政権の「上位互換」

 総評を述べると、トランプ政権の4年間は、日本の保守派やそれに追従するネット右翼が第二次安倍政権の「上位互換」として認知した結果、その支持を熱狂的に―いやむしろアメリカ本国の保守派以上に―強固に固めた歳月だったと言える。しかしそれですら、トランプ政権発足当初はまだしも懐疑的・警戒的だった側面があるが、米中対立とコロナ禍、進歩系メディア攻撃という三つが合致した結果、日本の保守派やネット右翼から過剰な信奉が巻き起こった4年間であった。

 2021年1月からバイデン政権が発足する。日本の保守派は物理的にどうしても過ぎ去ったトランプ政権への幻想を捨てなければならないが、またぞろバイデン政権の対中政策に一喜一憂し、バイデン政権が少しでも反中政策を採れば、「バイデンも中国に厳しいので良いのではないか」として手放しで評価するだろう。対米追従が金科玉条となった日本の保守派は、強き者に徹底的に追従するしかその身の振り方の術を持たないのだろうか。これが独立国の姿なのだとしたら、実に情けないと思うのは私だけだろうか。

 そして最後に付記するが、保守派やネット右翼が仇敵とする中国にとってすれば、自ら国際協調を逸脱し、孤立を深め、分断を加速させてくれる「オウンゴール」を進んでやってくれるトランプの方が実に都合が良い。中国が挑戦国、アメリカが覇権国ならば、覇権国自らが自壊してくれるトランプ政権の方が、北京にとっては願ったり叶ったりの得点である。

 北京が最も恐れるのは、アメリカが団結し、国際協調や国際秩序と言った「正論」で自国が包囲されるその圧力である。それが故に(実現できるかどうかは不明としても)アメリカの団結と結束を謳うバイデン政権の方が、却って対中包囲網や圧力は盤石なものとなるはずであるが、こういったリアリスティックな発想が、普段国際関係のリアリズムを殊更謳う言う日本の保守派にはいささか欠けているようである。(了)

作家/評論家/一般社団法人 令和政治社会問題研究所所長

1982年北海道札幌市生まれ。作家/文筆家/評論家/一般社団法人 令和政治社会問題研究所所長。一般社団法人 日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。テレビ・ラジオ出演など多数。主な著書に『シニア右翼―日本の中高年はなぜ右傾化するのか』(中央公論新社)、『愛国商売』(小学館)、『日本型リア充の研究』(自由国民社)、『女政治家の通信簿』(小学館)、『日本を蝕む極論の正体』(新潮社)、『意識高い系の研究』(文藝春秋)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり』(晶文社)、『欲望のすすめ』(ベスト新書)、『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)等多数。

古谷経衡の最近の記事