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ゴルフ界の注目。PGAツアー会長「答えているようで答えていない」会見が示すもの!? #ゴルフ

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

今週は、PGAツアーのフラッグシップ大会であり、「第5のメジャー」とも呼ばれているプレーヤーズ選手権(3月14日~17日)が米フロリダ州のTPCソーグラスで開催される。

開幕に先駆け、PGAツアーのジェイ・モナハン会長が会見に臨み、米ゴルフ界のみならず世界のゴルフ界に広がっている様々な疑問や懸案事項に関する質問に答えた。

だが、実際のところ、モナハン会長の返答は「答えているようで、答えていない」という感が強かった。

そして、この会見で目にしたモナハン会長は、昨夏に体調不良を理由にして隠れるように身を潜めていた「あのモナハン会長」とは、まるで別人と言っていいほど雰囲気が異なっていた。

モナハン会長は、今年1月末に米コンソーシアムの「SSG(ストラテジック・スポーツ・グループ)」とパートナーシップを結び、最大30億ドルの投資を得て「PGAツアー・エンタープライズ」を創設することなどを、あらためて説明した上で、競技部門として現存しているPGAツアーは「世界で最もグレートなツアーだ」と高らかに言い切った。

PGAツアーがSSGと手を組んだ今、昨年6月にモナハン会長自らが誇らしげに発表したサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」との交渉は「今、どんな状況なのか?」と問われると、モナハン会長は今年1月にPIFのヤセル・ルマイヤン会長とミーティングを持ったことを明かし、「交渉は加速している。いい結果が得られることを望んでいる」。

だが、「こうした交渉を衆人環視の下で進めることはできない」と語り、詳細を明かすつもりはないことを示唆した。挙句に「すべての人間を満足させることはできない」という意味深な一言。

結局、PIFとの関係性や交渉の進捗に関しては、実際には何一つ答えず、「煙に巻いた」という印象を受けた。

昨年12月にPGAツアーのスター選手の筆頭だったジョン・ラームがリブゴルフへ移籍したことを「どう思っているか?」「今後、さらに移籍する選手が出ることを憂慮しているか?」といった質問に対しては、「私は自分がコントロールできることに対してのみ憂慮する」と言い放ち、米メディアがさらに突っ込んだ質問をすると、「それについては、たった今、答えたぞ!」と声を荒げ、質問を遮った。

この日の会見で最も印象的だったモナハン会長の言葉は、自信に溢れたこんなフレーズだった。

「私はPGAツアーを率いるべき人間だ。そう信じている」

昨年6月、PIFとの統合合意を一方的、電撃的に発表し、PGAツアーの選手たちから総スカンを食らって信頼が地に堕ち、突然、休職し、その後、なんとか現場に復帰したころのモナハン会長は生気を失ったような表情だった。だが、この会見に現れたモナハン会長は、とても強気で、記者からの質問に答える姿には少々尊大と感じられる場面さえあった。

わずか半年の間にモナハン会長の雰囲気を様変わりさせたものは何だったのだろうかと考えたとき、真っ先に思い当たるものは、SSGとのパートナーシップ締結によって約束された最大30億ドルの投資だ。経済的、経営的に「PGAツアーは安泰だ」という安心感や安堵感。そして、PIFではなくSSGと組んで新会社を設立することで、ようやく取り戻しつつある選手たちからの信頼感もあるのだろう。

モナハン会長が昨夏ごろと比べて別人のように「元気に見えること」が、イコール、PGAツアーが元気になることを意味しているのであれば、それは「良いこと」と考えるべきなのだろう。

その意味では、なるほど、モナハン会長は「PGAツアーを率いるべき人間」である。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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