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全米女子オープン、生涯獲得賞金の3倍を1試合で稼いだ新メジャー・チャンプ誕生に米ゴルフ界が沸いている

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 史上初めて、名門ペブルビーチが舞台となった全米女子オープンは、最終日を単独首位で迎えた畑岡奈紗の悲願のメジャー初優勝に期待がかかっていたが、残念ながら畑岡は76とスコアを落とし、通算3アンダーで4位タイ。見事、勝者に輝いたのは、ハワイ出身の米国人選手、25歳のアリセン・コープスだった。

 バーディー発進したコープスは前半を1アンダーで回ると、後半は10番、14番、15番でバーディーを奪い、畑岡を引き離して首位の座を固めていった。17番こそボギーを喫したが、72ホール目の18番を2位に3打差で迎え、最後はしっかりパーで締め括り、ツアー初優勝をメジャー初勝利で飾った。

 海に沿って伸びる18番のパー5。第3打をピン3メートルにつけても、コープスは感情を押し殺し、能面のように固い表情のままだった。しかし、グリーンに向かって歩き始め、大観衆から拍手が送られると、そのとき初めてコープスの頬が緩んだ。

 バーディーパットは外したが、もはや勝敗には何ら影響はない。パーパットを沈め、ガッツポーズを取るやいなや、駆け寄った仲間たちからシャンパン・シャワーを浴びせられ、その驚きが押し殺していたコープスの感情を呼び覚ました。

 涙が溢れ、頬を紅潮させながら初勝利の味を嚙み締めていた彼女の姿が初々しかった。

 ハワイで「ゴルフ天才少女」と呼ばれたコープスは、かつて、やはりハワイでそう呼ばれていたミッシェル・ウィーの記録を破り、史上最年少の10歳3か月9日で全米アマチュア・パブリック・リンクス選手権の出場資格を得て大きな話題になった。

 大学は米本土に移り、サザン・カリフォルニア大学へゴルフ留学。卒業後にプロ転向し、昨年から米LPGAに参戦開始したが、これまでは未勝利にとどまっていた。

 しかし、今週はショットもパットも冴え渡り、最終日は淡々としたプレーぶりでスコアを伸ばして、夢にまで見た全米女子オープンのタイトルを勝ち取った。

 「信じられない。ドリーム・カム・トゥルーの思いです。コーチから『誰も優勝を与えてはくれない』と言われ、自分で取りに行こうと心に決めて挑みました。でも、ペブルビーチは難コースなので、とにかくトラブルを避け、フェアウエイとグリーンを捉えることを第一に考えていた。ずっとナーバスだったけど、最後は気持ち良かった」

 女子ゴルフの位置づけは、日本でも海外でも向上しつつあり、今大会の賞金総額は史上最高の1100万ドル、優勝賞金は200万ドル(約2億8900万円)だ。

 昨年と今年これまでに稼いだ生涯獲得賞金のほぼ3倍を、たった1試合で稼いだコープスは、まさにドリーム・カム・トゥルーのシンデレラ優勝を達成。

 全米女子オープンで米国人選手が勝利したのは、2016年のブリタニー・ラング以来、実に7年ぶりとなり、新たな米国人メジャー・チャンプの誕生に米国のゴルフファンが沸き返った。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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