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マスターズ招待状が同姓同名の別人宛に郵送された珍事、その結末が愉快でハッピーエンド

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

滅多に起こらない珍事が起こった。オーガスタ・ナショナルが今年のマスターズの招待状を同姓同名の別人へ送ってしまったという。

PGAツアー選手のスコット・ストーリングスは37歳の米国人。通算3勝の実績を持ち、昨季はフェデックスカップ・ランキングでトップ30に食い込んでプレーオフ最終戦のツアー選手権に出場したことで、2023年マスターズの出場資格を満たした。

これでマスターズに出場できる――そう確信していたストーリングスは、マスターズ委員会から送られてくるはずのマスターズ招待状が届く日を心待ちにしていた。クリスマスの少し前から、毎日、自宅の玄関前の郵便受けを覗いていたが、招待状が入っているグリーンの封筒はなかなか届かなかった。

「文字通り、僕は1日に5回ぐらい、メイルボックスを開けてチェックしていた、、、、」

クリスマス・イブにも、いやいや、クリスマスが過ぎても招待状は届かず、ニューイヤー・イブ(大晦日)にも届かなかった。

ストーリングスの胸の中には一抹の不安がよぎった。「何か特別な理由で自分の出場はマスターズ委員会によって取り消されてしまったのだろうか。僕の出場が拒否されているのだろうか」、と。そして「そんなはずはない」と、膨らんだ妄想を自分で打ち消し、また郵便受けを覗いたそうだ。

ストーリングスがマスターズに初めて出場したのは2012年で、そのときは27位タイだった。その後、2014年にも出場したが、予選落ちを喫した。以後、彼がオーガスタ・ナショナルの土を踏んだ年は無かった。

だから、9年ぶりとなるマスターズ出場をストーリングスがどれほど楽しみにしているかは誰にも想像できる。

「一体どうして招待状は届かないんだ?」

不安を感じながら新年を迎えたら、まったく知らない人物からのダイレクト・メッセージがストーリングスのSNSのアカウントに届いたそうだ。

その文面を見て、ストーリングスは仰天し、そして歓喜したという。

「はーい、スコット!僕の名前はスコット・ストーリングスです。ジョージア州に住んでいます。僕の妻の名前はジェニファー。僕はテネシーにコンドミニアムを持っているのですが、そこにマスターズの招待状が届いていました。それを見て僕は、この招待状は100%僕宛ではないと確信しました。僕もゴルフをしますが、マスターズに招待されるほどの腕前ではないし、、、、、、、、(略)、、、、、、きっと僕の名前と僕の妻の名前が、あなたとあなたの奥さんの名前と同じで、僕のコンドミニアムの場所があなたの自宅と近いことで混乱が起こったのですね。連絡をいただければ、僕は喜んでこの招待状をあなたに送りますよ」

オーガスタ・ナショナルがストーリングス夫婦と同姓同名の夫婦の別荘宛に郵送したというミスだったことが判明。

偶然に偶然が重なった末のミスだったが、良き人物の手元に届いて、誰よりストーリングス自身がほっとしたはずである。

ある米メディアが記事に添えた一言が秀逸だった。

「プロゴルファーと同姓同名の方は郵便受けを確認してみましょう。マスターズの招待状が入っているかもしれないから――」

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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