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リブ・ゴルフは、まさに「ゴールドラッシュ」。選手も関係者も「お金のためではないと言ったらウソになる」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 米オレゴン州のパンプキンリッジで開催されたリブ・ゴルフ第2戦(6月30日~7月2日)は、3日間54ホールのプレーを終え、ブランデン・グレースが通算13アンダーで勝利を飾り、優勝賞金400万ドル(約5億4000万円)を獲得した。

 2位のカルロス・オーティスは212万5000ドル、3位タイのパトリック・リードとダスティン・ジョンソンはそれぞれ127万5000ドル、5位のルイ・ウエストヘーゼンは97万5000ドル。

 そして、日本の香妻陣一朗は6位に食い込み、80万ドル(約1億800万円)を手に入れた。

 リブ・ゴルフでは毎試合(チーム戦のみの最終戦を除く)、最下位の48位でも12万ドル(約1600万円)がギャランティーされている。

 これらは、いずれも個人戦のみの賞金であり、同時進行で行なわれていたチーム戦では、優勝したジョンソン、リード、テーラー・グーチ、パット・ぺレツのチームに300万ドル(約4億560万円)、2位のチーム(グレースなど)には150万ドル、3位のチーム(オーティスなど)には50万ドルが贈られた。

 これまでは、PGAツアーの賞金こそが夢のような「高額」「破格」と言われてきたが、それらをはるかに上回るリブ・ゴルフの賞金の信じがたいほどの超高額、超破格ぶりを、米メディアは羨望と皮肉を込めて「ゴールドラッシュ」と揶揄している。

【お金のためではないと言ったらウソになる】

 そんな中、またしても世界のトッププレーヤーがPGAツアーに背を向けてリブ・ゴルフへ移籍することを発表した。世界ランキング26位、44歳の英国人選手、ポール・ケーシーだ。

 かつて、ケーシーはユニセフのゴルフ・アンバサダーを務め、サウジ・インターナショナルなどサウジ政府がサポートしている大会には懐疑的、批判的な姿勢を見せ続けてきた。

 しかし、リブ・ゴルフ第2戦の最終日のユーチューブやリブ・ゴルフHPでの中継中、リブ・ゴルフ側からケーシーの第3戦からの正式参戦が発表され、ゴルフ界を驚かせた。

 ケーシーいわく、「僕は以前は(サウジに対して)快く感じていなかった。でも僕の思考は常にオープンで、新しいことを学びたいと思っている。スポーツには、何かを変える力がある。サウジの人々に耳を傾けてみたら、女子ゴルフを含めたプロゴルフ界全体や次世代の子どもたちのための壮大なプランを彼らが抱いていることがわかった」。

 ケーシーの言葉は、自身の180度の心変わりの理由として掲げた大義名分としては、なるほどと頷かされるものではある。

 だが、初戦で優勝し、個人戦とチーム戦の双方で合計475万ドル(約6億4000万円)を稼いだチャール・シュワーツェルは、リブ・ゴルフを選んだ理由として「お金のためではないと言ったらウソになる」、つまりは「お金のためだ」と潔く言い切った。

 第2戦からリブ・ゴルフ参戦を開始したペレツは、金額こそ明かしてはいないが、高額の移籍契約料を手にして「すごい金だ。信じられないビッグ・マネーだ。ありがたい。うれしい」と、「お金」への感謝と喜びを、あからさまに語った。

【選手にもエージェントにもビッグな旨味】

 リブ・ゴルフでは、試合における超高額の個人戦賞金、チーム戦賞金が約束されているが、リブ・ゴルフ側が「是非とも参加してほしい」と望んだスター選手には、事前に「移籍料」が「契約金」という名目で支払われている。

 選手の「格」によって、金額と年数はさまざまだが、フィル・ミケルソンは4年契約で2億ドル(約270億円)、ダスティン・ジョンソンは1億5000万ドル(約202億円)、ブライソン・デシャンボーは1億ドル(約135億円)を受け取ったと見られている。

 スター選手たちが次々にPGAツアーからリブ・ゴルフへ鞍替えする最大の理由は、そうしたビッグな契約金と試合ごとのビッグな賞金の双方が魅力的だからに違いないのだが、決断を躊躇もするであろう選手の背中を強く押しているのは選手のエージェントだという説も出ている。

 ミケルソンの発言を公表して大騒動へ発展させた米国のゴルフジャーナリスト、アラン・シプナック氏のレポートによれば、米欧のゴルフ界では、プロゴルファーの賞金はエージェントには渡らず、エージェントは選手のアピアランスフィー(招待出場料)やスポンサーとの契約料の20%を受け取るのが通例とされており、リブ・ゴルフへの移籍を決めた選手の契約金は、ちょうど20%の対象となる「そこ」に当てはまるとのこと。

 たとえば、自分がマネジメントを担当する選手を契約金1億ドル(約135億円)でリブ・ゴルフへ移籍させることに成功すれば、エージェントには報酬としてその20%に当たる2000万ドル(約27億円)が入ることになる。

 選手とマネジメント側との契約は、選手とキャディとの契約同様、ケース・バイ・ケースゆえ、必ずしも、この通例通りにお金が分配されるとは限らない。

 しかし、選手もエージェントも、その周辺も、リブ・ゴルフに引き寄せられる最大の要因がビッグ・マネーであることは、シュワーツェルの言葉が示すように、「否定したら、ウソになる」というところであろう。

 リブ・ゴルフは、まさにゴールドラッシュだ。

 だが、その将来未来の姿をまだ思い描くことができないところに「末恐ろしさを感じないと言ったら、ウソになる」と私は言っておきたい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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