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世界のゴルフ界に「激動の2か月」「魔の2か月」がやってくる!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:Action Images/アフロ)

 昨今、世界のゴルフ界は、混迷ぶりを増している。

 PGAツアーのジェイ・モナハン会長は、グレッグ・ノーマン率いるサウジアラビアの新ツアーへの選手たちの流出を警戒し、「あっちのツアーに出る者は、そこ(出口)から出ていけ!」と選手会の場で声を荒げ、サウジの新ツアーに出た選手には「出場停止処分を科す。メンバーシップ剥奪もありうる」と記した声明も発している。

 一方、ノーマンが創設しようとしている「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」の初戦は、6月9日から11日の3日間、ロンドンのセンチュリオンGCで開催されようとしており、「誰も出ない」などと言われていた大方の予想に反し、48名の出場枠に対して70名がエントリー。「定員オーバーなので、若干名は出場をお断りさせていただきます」と、ノーマン側はうれしい悲鳴を上げているという。

 ロンドンでの初戦にエントリーした70名の中には、フィル・ミケルソンやセルジオ・ガルシア、ルイ・ウエストヘーゼンといったメジャー・チャンピオンたちを含むPGAツアー選手20名ほどの名前がある。

 ミケルソンに至っては、ノーマンのツアー全8試合に出場する契約をすでに交わして前払い金3000万ドルを受け取ったことがすでに英国紙テレグラフによって報じられている。

 20名ほどのPGAツアー選手たちは、ロンドン大会への出場許可をモナハン会長へ申請しており、前述のモナハン会長の言葉をそのまま受け取れば、この20名は全員、出場停止処分を科せられることになる。

 だが、どうやらこの初戦に関しては、米国外で開催される大会ということで、モナハン会長は出場を許可すると見られている。

 しかし、ポートランドのパンプキンリッジCCが舞台となるノーマンのツアーの第2戦(7月1日〜3日)に関しては、米国内での開催ゆえ、モナハン会長は決して出場を許可しないと思われ、この段階で初めてPGAツアーから出場停止などの厳罰を科される選手が出現、あるいは続出する可能性が高い。

 そして、その動きは、これから行われるメジャー3大会に大きな影響を及ぼすと言わざるを得ない。

 というのも、パンプキンリッジでの第2戦のエントリー締め切りは5月17日とされている。この日が来れば、米欧両ツアー選手の中で、誰が「本気で」ノーマンのツアーへ移籍しようとしているかが、ほぼ明らかになる。

 その5月17日の締め切りは、19日から始まる全米プロの開幕2日前であり、明かされた選手名やその選手たちに対するモナハン会長の姿勢、周囲の反応が全米プロそのものへの注目をそいでしまうことは、往々にして起こりうる。

 モナハン会長が第2戦へエントリーした選手(たち)に実際に出場停止処分などを科せば、その騒動やその余波は、その後に続く全米オープン(6月16日~19日)や全英オープン(7月14日から17日)にも影響をもたらすことだろう。

 PGAツアーから出場停止処分を科されている状態の選手(たち)を、全米オープンを主催するUSGAや全英オープンを主催するR&Aが大会に受け入れるかどうかと考えると、答えは「ノー」になることが大いに予想される。

 米欧両ツアーは、ノーマンの新ツアーに関して、ロンドンでの初戦は静観するとしても、パンプキンリッジでの第2戦に関しては看過することはできないと思われ、第2戦のエントリー締め切りとなる5月17日から全英オープンまでのこれから2か月間は「激動の2か月」「魔の2か月」になりそうである。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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