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マスターズ2日目、「伸ばせなかった」ローズ、「伸ばし切れなかった」松山、彼らを苦しめた要因とは!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 昨日、マスターズ初日に60台で回ったのは、単独首位に立ったジャスティン・ローズと2位に並んだ松山英樹、ブライアン・ハーマンのわずか3人だった。

 そして、スコアが軒並み伸びた今日の2日目、トップ10の中で70台になってしまったのは、わずか2人しかいなかった。

 その「わずか2人」が、前日に60台をマークした「わずか3人」の中の2人であるローズと松山だったことは、単なる偶然ではなかったと私は思う。

 腰を痛めて1か月ほど試合に出られず、「自分への期待度は低かった」という状態でマスターズを迎えたローズは、期待の低さに反して初日から65の好スコアをマークしてダントツの首位に立った。

 そうなれば、2015年大会でも2017年大会でも惜敗したローズの胸の中にグリーンジャケットへの現実的な想いが芽生えなかったはずはない。彼自身、「この期待がどうなるか?」と警戒心を覗かせていたのだが、彼が警戒していたことは2日目に現実化し、出だしからつまずいたローズは前半で3つスコアを落として苦戦した。

「僕の指はパニックボタンを押しかけていた」

 しかし、2013年全米オープン覇者であり、2016年リオ五輪の金メダリストだけのことはある。彼はメンタルの乱れにメンタルの切り替えで対応した。

「8番で、僕はまだマスターズで首位に立っているんだと自分に言い聞かせ、そこからはコースとのマッチプレーを始めた」

 順位ではなく、コースとの戦いだけに集中したら、後半は13、14、16番で続けざまにバーディー獲得。前半で落とした3つを取り返し、2日目はイーブンパー、72で回った。

「ナイスな引き分けだった」

 上位陣の中で72というスコアは「伸ばせなかった」という結果だが、気持ちの切り替えによって悪い流れを変え、単独首位を維持したところは、さすがだった。

 2日目を71で回った松山は、1つ伸ばしたアンダーパーゆえ、まったく伸ばせなかったわけではないが、「伸ばし切れなかった」という印象は否めない。

 3つ伸ばした初日と1つしか伸ばせなかった2日目で、松山の何が変わっていたのかと言えば、やはり気持ちの持ちよう、そしてコースに対する感じ方の違いがスコアに作用したのだと思う。

 この日、4つ伸ばして4位タイに浮上したジョーダン・スピースは「今日のピン位置のいくつかは、まさに寄せられる位置で、スコアを伸ばせるチャンスだった」と振り返り、5つ伸ばして4位タイに浮上したマーク・リーシュマンも「今日のグリーンは間違いなくスコアが伸ばせる状態だった」と語った。

 2人とも「いける」「伸ばせる」と感じ取り、そんなポジティブな気持ちがスコアリングに好作用をもたらした。

 松山もこの日のグリーンは「見た目は変わらなかったけど、だいぶ遅くなったかな」と感じてはいたのだが、それをチャンスとは受け取れず、「最後まで(初日との)違いに合わせることができなかった」とネガティブに感じてしまった。スコアを伸ばし切れなかった要因は、そこにあったのではないだろうか。

 とはいえ、6位タイでの予選通過は見事だし、首位との差は4打から3打に縮まった。順位はやや後退したものの、ラウンド後に松山自身が「(スコアを)1つ伸ばせて良かった」と前向きな言葉を口にしたところに明日以降の期待が膨らんでくる。

 初日も2日目も技術面で大きな違いは見当たらなかった。残る2日間、カギとなるのはメンタル面。

「明日、そして日曜日、いい位置で終われるよう頑張りたい」

 どんなふうに頑張るか――。それが気持ちの持ち方次第であることは、松山も、ローズもスピースも、みな同じである。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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