Yahoo!ニュース

マスターズまで2週間、注目と期待の3人の「今」と「勝利」を占う

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
ウッズ、マキロイ、リード。注目と期待の3人は今、どんな状況にあるのか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【メジャー15勝目を目指すタイガー・ウッズ】

 米テキサス州の名門オースチンCCで開催される世界選手権シリーズのデル・テクノロジーズ・マッチプレー選手権は、6年ぶりに同大会に出場する43歳のタイガー・ウッズ(米)を迎え入れ、沸き返っている。

 ウッズは同大会で過去3勝(2003、2004、2008年)を挙げている。マッチプレーが決して不得意ではないことは、かつて全米ジュニアと全米アマチュアをそれぞれ3連覇した過去の実績が実証している。

 メジャー大会の前週は試合に出ずに備えるのがウッズ流。それゆえ、彼にとっては今週のマッチプレー選手権が来たるマスターズ前の最後の実戦となる。

 今年のウッズはパットの不調が目立ち、まだ勝利はない。トップ10入りはわずか1回と成績面では振るってはいないのだが、「マッチプレーは目の前の一人の相手にフォーカスできるから、とても楽しみだ」と目を輝かせている。

 今大会で好感触を得て、マスターズ制覇へ、メジャー15勝へとウッズが快走することを世界中のファンが心待ちにしている。

【生涯グランドスラムを目指すローリー・マキロイ】

 ウッズのみならず、29歳のローリー・マキロイ(北アイルランド)へ寄せられている期待もきわめて大きい。先々週、「第5のメジャー」と呼ばれるプレーヤーズ選手権を制し、米ツアー通算15勝目を挙げたばかりで勢いがある。すでにメジャー4勝の実績。だが、マスターズだけは未勝利だ。今年、グリーンジャケットを羽織ることができれば、それは同時に生涯グランドスラムの達成となる。

 

 そんな期待が高まる中、マッチプレー選手権で会見に臨んだマキロイは一歩引いて構えているように見受けられた。それは、心の余裕の表れであり、彼の成熟度の反映でもあるのだろう。

「2、3年前の僕は『僕にはマスターズ優勝が必要だ。グリーンジャケットが必要だ』と言っていた。でも今は違う。『必要』ではなく、マスターズに勝ちたいと思う。勝てれば最高。でも、もしもダメならダメでOKさ」

 意気込みすぎて空回りしたのが、過去のマスターズにおける彼の大崩れや惜敗だったのだとすれば、好調でありながら前のめりになっていない今年のマキロイは、これまでとは違う戦い方を披露してくれそうな予感がする。

【マスターズ連覇を目指すパトリック・リード】

 マスターズ連覇を切望しているのは、昨年覇者の28歳、パトリック・リード(米)だ。

 昨年はマスターズ・ウィーク中にリードの過去にまつわる誹謗中傷めいた話がSNSで拡散され、米メディアもそれを報じたため、オーガスタには異様な空気が漂っていた。

 そんな空気を自力で吹き飛ばし、マキロイを抑えてメジャー初優勝を果たしたリードの戦いぶりは実に見事で鮮やかだった。

 しかし、ショットの不調に苦悩している今年は、優勝どころかトップ10入りすらできておらず、ショットの精度を示すランキングは100位以下の3桁の数字ばかりだ。パーオン率は50%以下。先々週のプレーヤーズ選手権では最終日に「78」を喫し、先週のバルスパー選手権では、ついに予選落ちした。

 そんなリードに助け船を出したのは、かつてリードのバッグを担いでいた愛妻ジャスティンだ。世界屈指のインストラクター、デビッド・レッドベターに直接交渉し、バルスパー選手権会場の練習場で夫に試験的に2度のレッスンを受けさせた。そして、マスターズ2連覇へ向けて、ともに歩んでいく体制を整えたという。

「ミスター・レッドベターが我がチーム・リードの一員に加わりました」

 リードがレッドベター門下に加わったのではなく、レッドベターがチーム・リードに加わったという強気の表現に、愛妻の強い気構えが溢れ出している。

 聞けば、従来のコーチであるケビン・カークも依然チーム内に残り、レッドベターと一緒に指導に取り組むとのこと。しかし、レッドベターは従来のコーチが残ることは知らなかったそうで、そこに混乱は起こらないのだろうかと心配になる。

 だが、さすがは天下のレッドベター。太っ腹な発言で余裕と自信を垣間見せている。

「なんであれ、パトリックが気持ちよくできることが一番だ」

 レッドベターによれば、スイングの大幅改造は不要とのこと。セットアップなどのマイナーチェンジを行なったところ、すでにリードは満足の笑顔を輝かせているという。

 これならマスターズ連覇を成し得るということか?

「さあ、何が起こるか。楽しみです」

 そんなレッドベターの言葉が、今、妙に気になっている。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

舩越園子のゴルフここだけの話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週2回程度(不定期)

米国ゴルフ取材歴20年超の在米ゴルフジャーナリストならではの見方や意見、解説や感想、既存のメディアでは書かないことがら、書けないことがら、記事化には満たない事象の小さな芽も含めて、舩越園子がランダムに発信するブログ的、随筆風コラム。ときにはゴルフ界にとどまらず、アメリカの何かについて発信することもある柔軟性とエクスクルーシブ性に富む新形態の発信です。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

舩越園子の最近の記事