欧州ツアーで2罰打、米ツアーでは2罰打取り消し!?続・新ルールにまつわる“事件”
施行から1か月の新ゴルフルールの解釈と適用を巡り、初の“事件”が起こったのは1週間前のこと。そして今度は、早くも大きな動きと変化が起こった。
先週(1月24日~27日)の欧州ツアー大会、オメガ・ドバイ・デザート・クラシックの最終日最終ホールで中国人選手のハオトン・リーが新ゴルフルールを適用され、2罰打を科された出来事は、すでにお伝えした通りである。https://news.yahoo.co.jp/byline/funakoshisonoko/20190201-00113024/
そして今週、米アリゾナ州で開催されている米ツアー大会、フェニックス・オープンの2日目に、またしても同ルールが適用され、米国人選手のデニー・マッカーシーが2罰打を科された。
さらに3日目の朝には米国人トッププレーヤーの一人であるジャスティン・トーマスも第2ラウンドにおける同ルール違反を疑われる事態になった。
しかし、大会3日目の昼下がり、米PGAツアーは早々に声明を発表。
「ルールをつかさどるUSGAと協議した結果、このルールの解釈と適用が大きな混乱を招いていると判断し、マッカーシーもトーマスも2罰打には当たらず、今後も、これと似た状況はペナルティには当たらないことを確認し合った」
これにより、マッカーシーにすでに科されていた2罰打は取り消され、2日目のスコアは67から65へ変更、いや、戻された。トーマスの2日目のスコアに2罰打が加えられることもなくなった。
物議を醸した新ルールは、“事件”勃発からわずか7日間で解釈と適用の仕方があっという間に変更された。
【欧州ツアーのケース】
あらためて、リーのケースの概略をお伝えしよう。今年1月1日から施行された新ルールでは、ショットにおいてもパットにおいても、キャディなどラインをアシストする人やモノは、プレーヤーがスタンスを取る前にライン上からすべて外れるべしと明記されている(ルール10-2、Advice and other help)。
リーはドバイの72ホール目のバーディーパットに臨んだ際に、このルールに違反したと指摘され、2罰打を科されて、バーディーがボギーになり、3位タイが12位タイになり、手にするはずだった賞金が一気に1000万円以上の減額となった。
リーにも彼のキャディにも意図的にラインアップしたつもりも覚えも一切なく、問題視された場面の動画を見ても、キャディがリーのライン読みをいつまでもアシストしているようには見えず、2人がたまたま同一ライン上にほんの一瞬、存在してしまっただけにしか見えなかった。
他の欧州ツアー選手たちからも「このルールはおかしい」「2ペナには当たらない」等々、新ルールやそれをリーに適用したルール委員に対する批判の嵐が巻き起こった。
その騒動を受け、ゴルフルールをつかさどるR&Aは異例の声明を出し、「ルールは正しく適用された」と強調した。
しかし、欧州ツアーのキース・ペリー会長は「アンフェアだというのが、私の個人的な意見だ」と声を大にしていた。
【米ツアーのケース】
そして今週の米ツアー、フェニックス・オープン2日目の15番(パー5)。マッカーシーはピンまで67ヤードのウエッジショットに臨もうと素振りを繰り返し、キャディは、その後方線上に立ってマッカーシーにしきりに話しかけていた。
そのとき2人はショットの狙いどころ、落としどころ、風などを話し合っていただけで、キャディが選手のラインの取り方、セットアップの仕方をチェックしていたわけではなかった。
それどころか、マッカーシーは日頃からキャディをライン上に立たせてチェックさせたことは一度もないというタイプの選手だそうだ。
おまけに、問題の場面の動画をよくよく眺めると、キャディが後方線上から外れた後、マッカーシーは一度スタンスを取り直してからショットしていた。
それなのに「2人が同一ライン上に重なる状況があった=2罰打」というのは「おかしい」「ありえない」「ひどいルール」「このルールは撤廃すべき」等々、方々から批判続出。SNS上でも大きな騒ぎになった。
そして、マッカーシーと同様のルール違反を問われる事態に直面したトーマスを筆頭に多数の米ツアー選手たちも批判の声を上げた。
【臨機応変】
嫌疑をかけられたトーマスがリーダーボードの上位でプレーしていただけに、第3ラウンド進行中は、果たしてトーマスに2罰打が科されるのかどうかに注目が集まっていたが、この日米PGAツアー早々に発表した声明は、マッカーシーの2罰打を取り消し、トーマスにも2罰打を科さないことを決め、今後は似たような状況で2罰打を科すことはないという内容だった。
ホールアウトした選手たちの反応は軒並み良好。3日目を3位で終えたトーマスも、2位で終えたマット・クーチャーも、声明の内容に頷き、「あれは、ひどいルールだった」と振り返った。
ゴルフ関係者の中には、新ルールが施行されたばかりで迎えたこの状況は「朝令暮改のようで望ましくない」と眉をひそめる人々もいるだろうと思う。
しかし、米ツアーとUSGA、R&Aが協議して早急に出したこの声明は、欧州ツアーと米ツアーで続けざまに起こった出来事を率直に受け止め、真摯に対応した証だ。そして、まずはルールの解釈と適用の仕方を変えたということであり、ルールそのものの改正や撤廃を決めたわけではない。
つまり「朝令暮改」と言うよりも「臨機応変」。もちろん、これですべてが解決したわけではなく、「これからさらなる協議を重ね、ルールをよりクリアにしていく」とのことで、もしかしたら、このルール自体の文言や表現が改正されるかもしれないが、それは、望ましい方向へ進んでいくはずだ。
ゴルフルールはゴルファーのためのものであるべき。ゴルフルールはわかりやすいものであるべき。「いいもの」「正しいもの」「そうあるべきもの」を目指すゴルフ界のリーダーたちの動きは、正しい方向へ向かっている。