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メキシコ選手権を沸かせた21歳のインド人選手、シュバンカル・シャルマ、マスターズ特別招待!

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
2日目、3日目に単独首位。笑顔とユニークな受け答えで大人気(写真/舩越園子)

 今季最初のゴルフのメジャー大会、マスターズ(4月2~8日)に先週のメキシコ選手権で初出場ながら優勝争いを演じて9位になった21歳のインド人選手、シュバンカル・シャルマが特別招待されることが決まった。大会主催者であるマスターズ委員会が6日(米国時間)、関係者にニュースリリースを出して発表した。

 シャルマは世界のトッププレーヤーばかりが集結していた先週の世界選手権シリーズのメキシコ選手権で2日目、3日目に単独首位に立ち、最終日はメジャー5勝のフィル・ミケルソンらと最終組でプレーして、ゴルフ界の大きな注目を集めた。

憧れのミケルソンとともに最終日最終組でプレー。メキシコの人々から大きな拍手と声援を受けた(写真/舩越園子)
憧れのミケルソンとともに最終日最終組でプレー。メキシコの人々から大きな拍手と声援を受けた(写真/舩越園子)

 初めてのメキシコ、初めての米ツアー大会、初めての世界選手権出場だったシャルマ。まだ名前の発音や綴りもほとんど知られていなかった無名の新人の突然の大健闘にメキシコのゴルフファンは沸き返り、会場では「シャルマ!シャルマ!」と大歓声が上がり続けた。

 世界のメディアも「タイガー・ウッズを思わせるセンセーショナルなデビューだ」と興味津々になり、連日の会見は大賑わいとなった。

 シャルマがゴルフを始めたのは7歳のとき。インド陸軍の大差だったシャルマの父親が、同じインド出身の米ツアー選手であるアニルバン・ラヒリの父親(軍医、産科医)と同じ駐屯地に所属しており、ラヒリの父親から「ゴルフは素晴らしいぞ」と教えられ、シャルマ父子はそれからゴルフを開始した。

テレビ中継で見た憧れの選手たちに自分を重ね、腕を磨いてきたシャルマ(写真/舩越園子)
テレビ中継で見た憧れの選手たちに自分を重ね、腕を磨いてきたシャルマ(写真/舩越園子)

 インドでは真夜中に中継されるメジャー大会を興奮しながらテレビ観戦し、2008年の全米オープンをプレーオフで制したタイガー・ウッズや2011年の全米オープンで見事勝利したローリー・マキロイらに憧れながらメキメキ腕を上げたシャルマ。2013年の全英オープンで勝利したミケルソンの姿に自分を重ね、メジャーチャンプになることを現実の目標に据えた。

 その年(2013年)、16歳でプロ転向。翌年からアジアンツアー参戦を開始。昨年12月、南アフリカで開催されたアジアと欧州の共催大会(ヨハネスブルグ・オープン)で優勝し、両ツアーの出場権を獲得。そして今年2月にもマレーシアで開かれた共催大会(メイバンク選手権)で優勝。現在、両ツアーで賞金ランクのトップを走っている。

 メキシコには世界ランキング75位でやってきた。

「優勝すれば、マスターズ。世界ランキング50位に入れば、マスターズ。僕はそれしか知らない」。マスターズ出場資格獲得のための他の選択肢は何も知らず、その2つだけを頭に置いてプレーしていたシャルマ。

 「憧れの、本物のレジェンド」であるミケルソンとともに回り、そのミケルソンが2013年全英オープン以来の復活優勝を遂げる姿を間近に眺めながら戦った最終日、シャルマ自身は緊張もあって、思い通りのプレーができず、ミケルソンと6打差の9位で終わった。

 だが、メキシコの子供たちへのメッセージを問われると、シャルマはこう答えた。

「目標を高く掲げ、目指し続ける。そうすれば夢は必ず叶う。ドリーム・カム・トゥルーになるんだ」

 そんなシャルマにマスターズ委員会が招待状を贈り、夢を叶える粋なはからいをした。

 マスターズ委員会のフレッド・リドレー会長いわく、「ゴルフはグローバルなゲームゆえ、マスターズに出るに値する力を持ちながらもまだ出場権を手にいれていない国際的な選手を招待する歴史がマスターズ委員会にはある。成績が示す通り、シュバンカル・シャルマは素晴らしいプレーヤーだ。4月に彼をオーガスタ・ナショナルに迎えることを楽しみにしている」。

元インド陸軍大佐の父親モハン。すでに引退し、息子の転戦に同行している(写真/舩越園子)()
元インド陸軍大佐の父親モハン。すでに引退し、息子の転戦に同行している(写真/舩越園子)()

 9位になったメキシコ選手権最終日の夜、同行していた元陸軍大佐の父親モハンとともに、すぐさまメキシコを去り、母国インドで開催される今週のインドオープン出場に向けて旅立っていったシャルマ。

 この朗報は母国で聞いていることだろう。楽しみな若き選手の誕生は世界のゴルフ界の何よりの宝だ。

 

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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