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30日は42歳の誕生日。タイガー・ウッズの2018年を考える

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
試合復帰を果たしたウッズ。2018年、“強いウッズ”の復活は?その可能性を考えた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

2017年が終わろうとしている12月末の現時点で、2018年マスターズ出場資格をすでに得ているゴルファーは80名。その中には、タイガー・ウッズも含まれている。

11月下旬からバハマで開催されたヒーロー・ワールド・チャレンジで10ヶ月ぶりに試合に復帰し、315ヤード超のビッグドライブを放ちつつ、一時は首位に立つ驚異のカムバックを披露したウッズは、今月30日の誕生日で42歳。

そんなウッズの2018年は、果たしてどんな年になっていくのか。

強いウッズ、王者の復活は起こりえるのかどうか。

暮れも押し迫った今、ウッズのこれからを考えてみた。

【「心」も「体」もヘルシー】

振り返れば、ウッズにとって2017年は本当に“いろいろあった”1年だった。

ウッズが米ツアーにデビューした1996年以降、山か谷かは別として、2017年はウッズの「激動の年、トップ3」に数えられるのではないだろうか。

全米オープンからのメジャー3大会を続けざまに制覇し、年間9勝を挙げた2000年、年をまたいでグランドスラム、“タイガースラム”を達成した2001年は、ウッズの絶頂期だった。

一方、未曾有の不倫騒動へ発展した2009年から2010年は、世界が抱いていた王者ウッズの理想像が崩壊し、彼自身、それまでで最も深い谷底へ転落した時期となった。

そして2017年は、4月に4度目の腰の手術を受け、プロゴルファーとしての未来が閉ざされるかもしれないという絶望の淵まで突き落とされた。

激しい腰痛から逃れるための薬物使用。その先に、5月末の逮捕劇があった。王者の転落を物語る写真や動画が世界中に晒され、多くの人々が「もはやウッズは、これまでだ」とさじを投げかかった。

しかし、ウッズはその深い谷底から這い上がってきた。さらなる治療とリハビリで腰痛から解放され、「痛みを感じないノーマルライフは素晴らしい」と笑顔を見せた。

逮捕劇に対しても、10月末に自ら法廷に立ち、司法の上できっちり結着を付けた。

新しい恋人もでき、可愛い子供たちとも一緒に過ごす時間を楽しんでいる様子。

そして、11月末にはヒーロー・ワールド・チャレンジで元気なプレー姿を披露した。

「I am loving life again.(もう1度、人生を楽しんでいる)」

心も体も、すっかりヘルシー。今、ウッズは充実の中でバースデーと年の瀬を迎えている。

【「技」では独り歩きで前進する】

一番気になるのは、心技体の「技」の部分の今後だ。

バハマでは、リッキー・ファウラーやパトリック・リード、そして3日目に同組で回った松山英樹らが、みなびっくりするほどのパワフルなショットを放ったウッズ。だが、そのパワーがどこまで維持でき、精度やフィーリングをどこまで磨いていけるのか。それは、現時点では未知数のままだ。

技術面の維持、向上といえば、コーチの必要性がまず考えられる。しかし、ウッズは12月に、この3年ほどコーチを依頼してきたクリス・コモとの関係を解消。

「クリスと取り組んできたことを、これからは僕一人でやっていく」と、独立独歩の姿勢を取り始めている。

だが、ウッズは幼少時代には父親アール、ジュニア時代の序盤はジョン・アンセルモに師事し、大学時代もプロになってからも、ほぼ常時、スイングチェックをしてもらう第3者の「目」を伴ってきた。

大学時代の終わりからプロキャリア序盤の1996年から2003年はブッチ・ハーモン。その間、メジャー大会では8勝を挙げた。

2004年から2010年はハンク・ヘイニー。小さな不調から脱却し、スイング改造にも取り組み、その結果、ヘイニーとともにメジャー6勝を挙げた。

不倫騒動後、ヘイニーが離れて以後、ウッズがともに歩んだのはショーン・フォーリー。

そして2014年からはクリス・コモと新たなスイング作りに取り組み、腰への負担を軽減することに重きを置いてきた。

バハマで315ヤードをかっ飛ばしたウッズを振り返り、コモは「一緒にやってきたことの成果がようやく出た。やり遂げたタイガーを誇りに思う」と笑顔。

これからスイング作り、スイングチェックといった「技」の面で独り歩きしていくウッズだが、当面は、相棒キャディのジョー・ラカバの存在もある。ラカバが第3者の目を務めてくれれば、きっと前進していけるはず。そう信じたい。

腰が悪化せず、パワーが保てれば、あとはショットの精度と小技、パットのフィーリングを磨くことに集中できる。

そこまで来れば、百戦錬磨のウッズのことだ。優勝ももちろん狙えるし、実際、優勝もできるだろう。メジャー15勝目も決して不可能ではない。

ウッズが最後にマスターズに出たのは2015年。あのときは17位で4日間を終えた。2018年は3年ぶりにオーガスタでティオフするウッズの姿がきっと見られる。ウッズの活躍、ウッズの雄姿がきっと見られる。そう願いながら、今年を終え、新年を迎えたい。

そして、ウッズには、こんなメッセージを贈りたい。

「ハッピー・バースデー、タイガー!」

素敵な誕生日、そして素敵な新年を迎え、来年は再び世界を沸かせてほしい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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