リオ五輪、続々不参加表明のゴルフ。 今こそ求められる情報提供とリーダーシップ

すでにテストイベントも行なわれたゴルフの会場。だが今、不参加者が続出している(写真:ロイター/アフロ)

【増える不参加選手たち】

リオ五輪が近づき、さまざまな競技の選手や関係者が熱い想いを膨らませる中、ゴルフ関係者の表情だけが日に日に険しくなりつつある。

リオ五輪はゴルフが112年ぶりに復活する歴史的な大会となるはずなのだが、不参加を表明したトッププレーヤーの数は4人、5人、6人と日に日に増している。

オーストラリアのアダム・スコットは先陣を切って不参加を表明した
オーストラリアのアダム・スコットは先陣を切って不参加を表明した

フィジーのビジェイ・シンを筆頭に、オーストラリアのアダム・スコットとマーク・リーシュマン、南アのルイ・ウエストヘーゼンとチャール・シュワーツエル。

つい先日は世界ランキング3位のローリー・マキロイ(北アイルランド)が「ゴルフが再び五輪から無くなる可能性もあるからメダルは歴史的に希少なものとなる。だから僕はリオで金メダルを狙う!」と言った前言を完全に翻し、出場を見合わせたいという内容の発言をした。

今年のマスターズを制したダニー・ウイレットもジカ熱を憂慮して、ほぼ不参加と語った
今年のマスターズを制したダニー・ウイレットもジカ熱を憂慮して、ほぼ不参加と語った

さらには、今年のマスターズを制したダニー・ウイレットもマキロイ同様、ほぼ不参加と受け取れるコメントを出した。

不参加の理由はジカ熱が蔓延している現地の状況と五輪のために非常にタイトになっている今季の強行スケジュール。そして、その陰には、もう1つ根本的な疑問もあった。

五輪は国や地域の名誉をかけて挑むスポーツの祭典であるはずで、メダルを獲って国旗掲揚と国歌斉唱を夢見る場所であるはずなのに、ゴルフは、なぜ団体戦ではなく72ホール・ストロークプレーの個人戦なのか。

そもそも、そこに納得できない――その大きな「?」の答えが、ここへ来てようやく見えてきた。

【ゴルフの最も一般的な形態を見てほしい】

米PGAツアーのティム・フィンチェム会長と米LPGAのマイケル・ワン会長のリオ五輪に関する対談の一部が米メディアによって明かされた。

両会長の話によれば、ゴルフを五輪競技として復活させた最大の目的は、ゴルフを広く世界に広め、拡大成長させること。

その「広める」は、すでにゴルフが盛んな場所でさらなるレベルアップを図るという意味ではなく、ゴルフというゲームを見たことも聞いたこともない国や人々に、ゴルフを「知ってもらいたい」「見てもらいたい」「好きになってもらいたい」という意味での「広める」だ。

ゴルフが発達している国々に目をやれば、そこではゴルフの団体戦もいくつか行なわれている。ライダーカップやプレジデンツカップ、ウォーカーカップが、その典型だ。

しかし、ゴルフを知らない人々が五輪のTV中継で初めて目にするゴルフは、「へえ~、これがゴルフ競技というものなのか」と思う姿であるべきで、それならば特殊な形式の団体戦ではなく、近代のゴルフ競技の中で最も一般的な72ホール・ストロークプレーの個人戦こそが最適のはず――それが、リオ五輪におけるゴルフの形式が72ホール・ストロークプレーによる個人戦に決定した理由だそうだ。

フィンチェム会長は1999年当時のサマランチIOC会長が「ゴルフが盛んな12か国から2名ずつ選手を出して競わせたらどうか」と提案し、それに対して「すでにゴルフが盛んなゴルフ大国だけから選手を出して、それでどうやってゴルフが世界に広められるのか?」と反論したことを明かした。

そして、より多くの国から、より多くの選手に参加してもらい、その選手たちが戦う姿をより多くの国、より多くの人々に見てもらうことを最優先に考えた結果、生み出されたのが、世界各国から男女各60名ずつという今回のリオ五輪の出場規定だという。

【求められる情報提供とリーダーシップ】

なるほど、それは「なぜ団体戦ではなく個人戦?」「なぜ、マッチプレーではなく72ホール・ストロークプレー?」という疑問の答えになっており、頷ける内容ではあるが、それでもなお首を傾げたくなる点がある。

リオ五輪出場選手は7月11日付けの世界ランキングに基づいて正式に決定するが、世界ランキングのトップクラスを含む一方で、3桁ランクの下位選手たちも含む玉石混合のフィールドになることは明らか。だが、「より多くの国から、より多くの選手を」という意図からすれば、それはむしろ意図通りということになる。

ジカ熱蔓延の状況や強行スケジュールによる心身消耗を理由に、さらなる不参加者が出たとしても、選手の補充ができて男女各60名が世界から集えば、「より多くの、、、、」という意図は基本的には全うされる。

だが、そうなればなるほど、ランク下の選手ばかりのフィールドと化していく。技量レベルが低い選手たちがフェアウエイもグリーンも捉えられず、四苦八苦する姿が、初めてゴルフというものを目にする人々に果たしてどこまでアピールするのだろうか。

もちろん、草の根ゴルフが訴えかけるものはある。だが、ゴルフを初めて見る人に草の根とハイレベルの意味や意義まで理解できるとは考えにくい。

それよりも、目が覚めるようなリカバリーショットやボールをギュギュっと止めるスピンショット、奇跡や魔法のような高度な技を自在に操るトッププレーヤーたちのゴルフを一目見るほうが、ゴルフを知らない人々の胸は驚きと感動で高鳴るのではないか。

そう考えると、トッププレーヤーの不参加表明が続出している現状は、ゴルフが五輪に復活するそもそもの目的を遂行する上で、とんでもなく、ゆゆしき事態である。

「ゴルフを広めたい」――その想いは不参加を決めた選手たちだって同じである。

「できることなら参加したい。しかし、、、」――その「、、、、」の部分に、できる限り速やかに、できる限り正確に答える情報提供が不足しすぎてはいないだろうか。

ジカ熱の現状は?どんな対策が取られているのか、取られる予定なのか。万が一の場合の医療体制は万全なのか?持参が推奨される薬はあるのか、ないのか。ゴルフコースや周辺の蚊の活動状況は?その現状と8月ごろの見通しは、いかに?

選手のみならず、現地に赴く関係者やメディア、誰もが不安でたまらない。こんな不安が広がるばかりでは、「ゴルフin五輪」の建前や意義が理解できたところで、そこへ行くこと自体に「?」マークが付くのは当然である。

リオ五輪まで、もはや秒読み体制に入りつつある今、IOCやIGFをはじめ、「ゴルフin五輪」を統括推進する関係諸団体の真のリーダーシップが問われている。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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