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8人組わんぱくバンド、少年キッズボウイが贈る【誰かにとって必要な曲=ポップミュージックの本質】とは?

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
photo by 少年キッズボウイ

“ああ、こういうのでいいんだよ!”。そんな感想を述べたくなるカルチャーコレクティヴなバンドの登場だ。音楽が持つ楽しさを120%火に油を注いでくれる(←褒め方違う?)8人組わんぱくバンド、少年キッズボウイ。

バンド名の通り、子ども心を忘れずに青春期の甘酸っぱさをメロディーとビートに昇華。真摯に気持ちの込められた歌詞が持つメッセージ性も熱い。それでいて伝わってくる、バンドならではのわちゃわちゃ感が解き放つ好印象。それもそのはず、それぞれバンド以外に職業を持つという、個性豊かなメンバーによる集合体。そんな少年キッズボウイのサウンドには、それぞれが敬愛する往年のポップミュージックや洋楽ロック、渋谷系などなど、先人からのインスパイアが織り込まれているからおもしろい。

“あれ、このイントロ?”、“このコードなんだっけ?”、“そうそう、このリズムは!?”

なんて、ハッと心に火を灯してくれる。もちろんただのパクリではなく、その手法には文脈を感じられるセンスの良さを持つのだから見事だ。そう、大袈裟にいえば人類の歴史上、もっともたくさんの音楽を聴ける時代となったストリーミング時代の申し子といえる逸材なのである。まさに、次世代へ音楽愛を継承するバンドなのだ。バンドのファウンダーであり、詞曲を手がけるこーしくんに21時半過ぎ、仕事帰りに突撃取材をしてみた。

――結成のきっかけは?

こーしくん:2019年の年末ぐらいにバンドを組もうかなって思いはじめまして。2020年初めに、編曲など活躍してくれている山岸というギターと、トランペットのきもす、ボーカルのアキラが集まって来て、やっとバンドになりました。

――みなさん、バンド以外に車掌さんや映画配給会社のスタッフ、アパレルショップのスタッフ、忍者!?など本職を持たれているというのがひとつの特徴となっていますが、こーしくんは少年キッズボウイをどんなバンドにしてみたかったんですか?

こーしくん:最初に少年キッズボウイというバンド名をまず決めました。そのときに、ジャンルなど考えたんですけど、まず歌詞やメロにノスタルジーを感じられるものにしたいなって思って。バンド名のように、純粋無垢な子ども心を大事にしたいなって思いました。それが、だんだんバカな悪ガキのイメージになっていって。それで、いまの面白いメンバーが集まりました。

――みんなバンド以外でも働いてるのはたまたま? なんか、不思議と人間力の高さを感じるよね。

こーしくん:当時、ギターの山岸君、ボーカルのアキラさん、リズムギターのカツマタ君、今いるベースの服部さんは学生だったんです。

――ああ、なるほどね。

こーしくん:今年の4月に一番年下のカツマタ君と服部さんが新社会人となり、晴れてメンバー全員社会人になったんですよ。

――そうなんだ。それこそ、オンラインで打ち合わせや取材などもやれる時代になったもんね。そんな意味では、働きながらでも活動がしやすくなったと。しかも、それぞれバンド以外にも夢となる仕事につかれている方もいらっしゃって。やはり、いまっぽいなと。

こーしくん:バンドも仕事も、楽しいことはなんでもやりたいんですよ。メンバーと“ザリガニ獲りに行こう!”なんて話したり(笑)

――青春だ。いや、子どもだ(苦笑)

こーしくん:楽しいですよ。“トランポリンしよう!”とか(笑)

――でも、ライブのスケジュール合わせやリハなど、メンバーも多いし集まるのは大変そう。

こーしくん:リハは半分以上揃ったらやる、みたいな。2,3人来れなくて当たり前、みたいな感じで。

――新しいなあ。

こーしくん:いまのところは、ライブは全員集まれるときにやっています。

――こーしくんは、バンドではどんな役回りで?

こーしくん:仕事の方でもマネージメント側に回っているので、バンドでもそうですね。目立ちたい奴が目立ててなかったら、そいつを目立たせたい、みたいな。逆に、仕事がつらいからバンドやるの大変って子がいたら、気にかけたり。でも、変に真面目だとウザいので、キャラクターとしてはアホな感じでやってます。

――詞曲のメインはこーしくんが作られているんだよね? めっちゃ音楽愛を感じられて。どんな音楽遍歴を?

こーしくん:母親がプログレが好きで。

――マジか。

こーしくん:ジェネシス、ピ―ター・ガブリエル時代ですね。

――それまた濃いなあ。

こーしくん:中学の頃にパンクにハマって。メロコア、ハイスタですね。あと、locofrankやELLEGARDENとか。洋楽だったらブリンク 182。そこから、遡って90年代のオルタナティブ、グランジにいって。80年代、ニューウェーブやポストパンクとか。で、その人たちが影響を受けたのは何かなって最終的に60年代、ビートルズやビーチボーイズへ辿り着いて。僕が一番好きなのはビーチボーイズなんです。

――なるほどねえ。正しい見事な音楽ファンの遡り方をされているね。なんかわかるような気がする。

こーしくん:少年キッズボウイを聴いてくれた方にも、そうやって音楽を遡って欲しいなと思っています。

――ストリーミング時代、それがやりやすいもんね。他のバンドメンバーは?

こーしくん:みんな好きなのはバラバラではありますけど、かぶっている要素がけっこうあって。アレンジは60%ぐらい僕が固めて、スタジオでみんなで“これはこのフレーズじゃない?”みたいに盛り上がっていくっていう。

――バンドの醍醐味だ。今回、1stアルバムとして『少年キッズボウイ1』をリリースされましたが、リード曲「君が生きる理由」がめっちゃ好きで。いい曲ですよねえ。

こーしくん:いままで配信シングルとして曲を出してきて。今回、それをまとめてアルバムにしようってスタッフに言われて。なので、リード曲が必要だから“めちゃめちゃいい曲を作れ!”って言われて。2ヶ月ぐらい悩んだんですよ。コード進行探り探り。フレーズとしてキャッチーさは必要だなと。それで、ドゥーワップな楽しさに辿り着いて。アメリカのR&Bコーラス・グループ、フォー・トップスみたいな感じで。

――うんうん。

こーしくん:でも、歌詞がなかなか書けなくて。そんな時に大好きなザ・ラヂオカセッツというバンドと対バンして。終わった後に、ドラマーのペンさんが”俺は世界を変えることはできねえ“って言っていたんですよ。それが、なんだか悔しかったんです。それで、世界を変えられる曲を作りたいなって。それからBメロの歌詞ができて。世界を変えるとき、どんな人にそれを伝えたいのかって考えて。生きる理由をわからなくなった人に伝えるべきだって思ったんです。誰かにとって必要な曲、それがいい曲だと思ったんですよ。それで、いまの歌詞がばっと書けて。2時間ぐらいで完成しました。

――へえ。いい話だ。ペンさんにも感謝ですね。

こーしくん:ありがたいことです。

――誰かにとって必要な曲=ポップミュージックの本質だよね。それがひとりなのか、10人なのか、1000人なのか、数万人なのか。でも、聴く人にとっては一対一の関係性だもんね。

こーしくん:伝わって欲しいなと思います。

――しかも全7曲、アルバムには少年キッズボウイの歴史が詰まっていて。それぞれの想いが強く込められていて全曲最高ですもんね。

こーしくん:ありがとうございます。聴いてくれる方が自分なりのお気に入り曲に出会ってくれたら嬉しいです。

<INFOMATION>

2023年11月25日(土)

渋谷 Milkyway「少年キッズボウイのお楽しみ会」

開場:18:00 / 開演:18:30

出演:少年キッズボウイ、板歯目、インナージャーニー

https://eplus.jp/sf/detail/3947920001-P0030001

少年キッズボウイ オフィシャルサイト

https://shonenkidsboy.wixsite.com/website

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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