Yahoo!ニュース

Char、BOWWOW、紫が野音で1977年再現ライブを実現。日本のロックの夜明け前、再び!

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
photo by 三浦憲治

祝・日比谷野音 100周年 再現1977 ~日本のロックの夜明け前~

日本のロックの歴史を紐解く際、忘れてはならないライブがある。1977年7月28日、日本武道館で行われた『NEW WAVE CONCERT』だ。出演は、当時すでに人気がありながらも発展途上だったChar、BOWWOW、そして沖縄発のハードロックバンド紫の3組。日本ロック史のターニングポイントとなった事件だ。

あれから46年。

今年、100周年を迎えたロックの殿堂、日比谷野外大音楽堂。2023年8月19日、まさかの『NEW WAVE CONCERT』再現ライブの実施。日本のロックの夜明けが、ここ野音で再び繰り広げられた。

1977年当時、武道館でライブを行える日本のロックバンドはレアだった。だがしかし、カウンターカルチャーという言葉の輝き。注目の組み合わせ。なんと、チケットはソールドアウト。それもそのはず、Charは天才ギタリストとして名を馳せ、BOWWOWは同年にエアロスミスのオープニングアクトとして武道館を経験していた。メタリカのドラマーのラーズ・ウルリッヒ、カーク・ハメットが熱狂的なファンであることも知られている。そして紫は、音楽雑誌『ミュージック・ライフ』の人気投票で、国内グループ部門で1位となっていたタイミングだったのだ。

なお、今年45周年を迎える日本のロックの礎を築いたコンサートプロモーターHOT STUFFだが、『NEW WAVE CONCERT』には主要スタッフが関わっていたという。日本ロックの夜明け前。まさに本公演から、現在に通じるロックカルチャーが輝きを帯びたといっても過言ではないはずだ。

そして再現ライブ当日。快晴、日中は35度超えの灼熱の8月だったが、木々に囲まれた野音は夕方には日陰となり、客席は涼しさも感じられる体感温度となった。この日ばかりはゲリラ豪雨に見舞われることもなく、ライブ日和であることを天気の神様に感謝をした。

オープニングはChar。ステージにあらわれた瞬間、熱い歓声に「暑苦しいんだよ!」と、ただちに返す(苦笑)。そして、ぼそっと「前座です」と囁く。かっけー。ドラマーに古田たかし、ベーシストに澤田浩史を迎え、1曲目から「APPLE JUICE」 を鳴らし、最高峰のロックを楽しませてくれる。

photo by 三浦憲治
photo by 三浦憲治

この日、Charのセットリストがレアだった。ローリング・ストーンズのカバー「JUMPIN' JACK FLASH」 で決めながら、ビートはそのままに自身のナンバー「AMANO-JACK」へスライド。からのクリーム「White Room」 というレジェンドロックのカバー。さらに、PSYCHEDELIXやジョニー・ルイス&チャー(PINK CLOUD)でもライブで披露していた、ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのカバー「MANIC DEPRESSION」を跳ねるビートでプレイ。ギターソロでの、せつなくもエモーショナルな熱いフレーズにオーディエンスが沸いた。

「どうもジミヘンでした。ジミヘンの前座でクリームやらせていただきました。次はジェフ・ベックです」と、軽くMC。音楽は時代や空間を超えていくなあ、と。

インスト「JEFF'S BOOGIE」で、軽快なビートでダンサブルにロックンロールをキメ、メロウに揺蕩う贅沢なサウンド「I'M HERE FOR YOU」、とどめは「PURPLE HAZE ~ からまわり」によって1組目から大団円な盛り上がりへ。ビールと氷結が美味い。ライブとは一期一会。夢を広げ叶える瞬間だ。屋根の無い野音、一切邪魔するものがなく天へ突き抜けるサウンド。最高の環境だ。

20分の転換。それもまたピースフルな空間となった。良い音楽とは、素敵な空間を作り出すのだ。

ドリンクを買いに、ステージ後方の売店を覗いていたら、突如「Prelude」のSEが流れ、会場の空気が一変する。いきなりトップギヤを入れたBOWWOW G2(今回はそんな名義)によるスピードチューン「天国行超特急」をプレイ。山本恭司のギターが吠える。勢いは止まらずに「Just one more night」。ミディアムに、ストーリーテリングするドラマティックなナンバー「Silver lightning」と、会場の空気を一気に支配していく。

「今年で結成48年。BOWWOWです。本当に感謝です。1977年の『NEW WAVE CONCERT』にいらしたか方いますか? いますね!」

山本恭司がMCで語ると、オーディエンスが盛り上がる。

そして「Heart's On Fire」の演奏。BOWWOWはデビュー前、当時若手音楽評論家だった渋谷陽一が、NHK-FMの洋楽ロック専門番組『ヤング・ジョッキー』で、詳細を語らずに本作をオンエアしたことで火がついたというエピソードがある。さらに、オリジナルメンバー佐野賢二を迎えて「Theme of BOWWOW(with 佐野賢二) 」によって、止まることなくロックンロールしていく。

photo by 三浦憲治
photo by 三浦憲治

ライブ中に山本が、一旦ステージ脇に履けたと思いきや、歌舞伎の連獅子を纏ったパフォーマンスでオーディエンスを最高潮に煽る。そもそも、BOWWOWは、1982年夏にイギリスのレディング・フェスティヴァル出演を果たしたことがあり、BOWWOWといえば、イギリスで勃発したNWOBHM(ニュー・ウェーブ・オブ・ブリティッシュ・へヴィ・メタル)の波に呼応し、海外人気が高かったことも思い出した。それもまた、今の時代へ継承され続いているロックフェス文化、スピリットのあらわれなのだ。

日本が世界へ誇るレジェンドロックの祭典。トリは、紫の登場だ。

オープニングから飛ばしに飛ばす「Doomsday」。さらに、おどろおどろしいリズムで奏でられるヘヴィロックな「Devil Woman」。紫がただならぬロックバンドであること、クリエイティブの高さをライブで証明していく。人気チューン「Just a Rock’n Roll Band」での、ハモンドオルガンとギターの掛け合いによる凄みも胸熱だ。「Maze」では、タイトル通りプログレッシブなプレイを聴かせ、途中、ロングなドラムソロを情感たっぷりに楽しませてくれた。自由度の高さを感じられる、ジャムセッションのようなライブだ。途中、ビートが緩くなり、チルな沖縄フレーズを醸し出すのも愛らしい。

photo by 三浦憲治
photo by 三浦憲治

本編ラストは、エモーショナルなナンバー「Starship Rcok’n Rollers」 。ラスト、キーボードフレーズでオーディエンスを絶頂へ導いていく。リフの強さ。伝わること、刺さることを意識したロックの真髄を感じさせるプレイだ。

アンコールでは、待ちに待った日本を代表するロックアンセム「Double Dealing Woman」が演奏された。イントロど頭からのギターリフが鬼のようにかっこいいロックチューンだ。1976年に生まれた楽曲とは思えない完成度の高さに驚かされる。それを、2023年にChar、山本恭司、斉藤光浩をステージに迎えて野音で共演するという現実に胸がいっぱいだ。

注目ポイントは、ギターソロ回しを、アイコンタクトでその場で展開していく(たぶん)ところが愛らしくもカッコいい。なお、本作は再レコーディングされ、紫の新作アルバム『TIMELESS』に収録され、CD / LPが2023年9月15日にリリースされるので要注目だ。

さらに、20代のクリエイター集団YUKIKAZEとともに、新たにミュージックビデオも制作された。しかも、1970年結成の紫、53年目にして初のミュージックビデオとなる。エモーショナルに高まる楽曲が解き放つ高揚感とシンクロした、プリミティブかつハードなロックサウンドを可視化するワイルドな映像に仕上がった。年齢や経験を超えて、誰もが”ハッと”させられるロックンロールの衝動だ。

すでに楽曲は先行リリースされ、Spotifyのプレイリストにリストインするなど令和世代からも評価を得ている。まさにタイムレス。時代を超えていく、まったく古びることのない本物のロックチューンだ。

70年代から紡がれるロックスピリットとアップデートされたメッセージのパワー。混沌の時代を導く光を紫は示してくれた。そして、アンコールはまだまだ続き、ディープ・パープルのカバー「Black Night」 、ステッペンウルフ「Born to be Wild」でオーラスを盛り上げていく。オーディエンスとのコール&レスポンス。耳慣れたリフ、フレーズが高揚感をグレイトフルに煽っていく。

photo by 三浦憲治
photo by 三浦憲治

ハードでヘヴィーな真夏の夜の夢。成熟した演奏は、若さを超えていくことを実証した宴となった。それは、今を生きる表現者の希望にもつながることだろう。そして、この想いの強さは必ずや次世代へ継承されていくはずだ。1977年は、日本のロックの転換点。その再現コンサート。歴史的意義を感じた宝物のようなライブイベントだった。

●紫「Double Dealing Woman」MUSIC VIDEO BY YUKIKAZE●

YUKIKAZE:監督の間宮光駿、撮影監督・写真家の山田虎太朗、プロデューサーの蛸島有闘を中心とした、東京を拠点に活動するクリエイティブプロダクション。MV・PV・CMなどの映像制作をはじめ、空間演出、グラフィックデザインなどを得意とし様々なフォーマットのクリエイティブをデザインする。

●紫ワンマン情報●

紫オフィシャルツアー&リリース情報HP

https://www.red-hot.ne.jp/sp/murasaki/#profile

『MURASAKI CONCERT TOUR:TIMELESS 〜 混迷の時代を超えろ』

・12/2(土) 沖縄 7th Heaven KOZA

開場 18:00

開演 18:30

前売: ¥5500 (沖縄県民割 ¥4500)  ※1ドリンク込み・当日+¥1000

予約・お問合せ: 7th Heaven Koza

7thyoyaku@gmail.com

・12/17(日)恵比寿 The Garden Hall

開場 16:00

開演 17:00

プレミアムシート:¥15,000(プレミアム専用ラウンジ/2ドリンク/1タパス付き)

指定席:¥9,000(1ドリンク代別)

チケットオフィシャル先行(先着)受付中 ~9/18(月祝)23:59まで

・チケットぴあ https://w.pia.jp/t/murasaki-t/

・CNプレイガイド電話受付 0570-08-9900

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

ふくりゅうの最近の記事