DIY(ディー・アイ・ワイ)精神という言葉がある。“自分でできることは自分でやろう!”というスピリットだ。

そもそも令和音楽シーンで言えば、作詞・作曲・編曲、トラックメイク、動画、そしてボーカルのすべての制作工程を自ら行うクリエイターが注目を集めている。YouTube、TikTokなど動画サービスの普及、Spotify、Apple Musicなどストリーミングサービスの躍進、創造から発信まで一気通貫に行えることとなったテクノロジーの進化が後押しとなっているのかもしれない。

この春高校を卒業した、奈良県在住のシンガー・ソングクリエイター“あぶらこぶ”は、iPhone で使えるAppleの音楽制作ソフトGarageBandを駆使して、傑作シングル「花になる」(2021年3月3日)を生み出すなど、その文学的な言葉の魅力、内に秘めたエモーショナルを胸に訥々と思いを告げるボーカリゼーションに衝撃を受けた。声に力を感じたのだ。

さらに、最新曲であるミニアルバム収録曲「観覧車」のミュージックビデオは、あぶらこぶ自身が監督・撮影・編集をしている。まさに総合的にDIYな内容となっていることに注目をしたい。

宅録=“がれーじばんだー”なイメージが強い彼女だが、2022年3月23日にリリースした2ndミニアルバム『tobitai』では、より歌やメロディーへのこだわりが高まっている。ボーカルを本格的なスタジオで録るという経験もしたという。ティーンエイジャーであるがゆえの将来への不安と希望。交差する葛藤を、シンガー・ソングクリエイターとして彩り豊かなポップセンスでアウトプットしているのだ。

まるで使える色が増えたことを喜ぶかのように、真っ白なキャンパスに繊細なるサウンドスケープを“tobitai”という明確なコンセプトで自由に表現した1枚である。

<あぶらこぶ インタビュー>

●ふと自分が聴きたい音楽を自分で作りたいなと思いました

ーー独特なる感性の輝きを感じるあぶらこぶさんですが、音楽に興味を持ったきっかけから教えてください。

あぶらこぶ:3歳ごろからピアノをやりはじめました。でもピアノの先生が辞めてしまって、そこから音楽とは遠くなって。小学5年生ぐらいに、KANA-BOONのアルバムにハマってバンドを聴くようになったんです。

ーーiPhoneでのDTM(デスクトップミュージック)での打ち込みでの音楽制作ながらロック感あるアレンジなのは、そんなルーツだからなんですかね。

あぶらこぶ:中学生ぐらいまでにかけては、ずっとバンド中心に音楽を聴いていました。

ーー自分で音楽を作ろうと思ったきっかけは?

あぶらこぶ:中2のころ、どんな音楽を聴いてもときめかなくなってしまった時期があって。

ーーえっ、何か理由などあったのですか?

あぶらこぶ:特に理由はなかったんですけどね。そのときに、ふと自分が聴きたい音楽を自分で作りたいなと思いました。最初は、家にあったピアノを触りながら歌詞書いたり歌って。でも、ピアノを習っていた期間は短かったので、思い通りに扱えなくって。中2の秋ぐらいにスマートフォンを手に入れて、GarageBandで曲を作るようになりました。触っているだけで楽しくて。

ーーGarageBandでの音楽制作は、完全に独学だったんですか?

あぶらこぶ:そうですね。どうやってやるのかなって手探りでした。

ーーここ数年、GarageBandでビートを作るヒップホップのクリエイターや、欧州での宅録を駆使したシンガー・ソングライターの登場など、DTMで音楽を楽しむクリエイターも少しずつ増えてきた時代ですよね。

あぶらこぶ:諭吉佳作/menさんが世に出たきっかけがGarageBandだったということを後から知って。いいなあって思っていました。

ーー国内以外のクリエイターとか気になる方はいますか?

あぶらこぶ:えっと、いろんな曲を聴きたいなと思ってはいるのですけど、まだ全然聴ききれていないですね。

ーーなるほど、リスナー体質というよりも根っからのクリエイター気質なのでしょうね。それが作品の個性にもあらわれていると思います。ちなみに、なぜあぶらこぶという、一度聞いたら忘れられないアーティスト名を名乗ったのですか?

あぶらこぶ:ははは(笑)。意味はなくって。自分の直感でした。SNSのアカウントを作るときに、なんとなく付けたネーミングで。

ーーSNSアカウントの名前って、急に名付けることを迫られますもんね。勢いだったんだ?

あぶらこぶ:はい(笑)。

ーー結果的に、ひらがなであったり、他ではあまりないネーミングだったので被らない言葉でよかったですよね。

あぶらこぶ:はい(笑)。

ーーちなみに、自分が作った作品を最初に発信しようとされたきっかけは?

あぶらこぶ:音楽を中学校の頃からずっと作っていて、その頃はまだYouTubeをやっていなくて、作品をアップしようとも思っていなかったんです。高校1年生になってから自分の音楽を聴いて欲しい想いが強くなってYouTubeにアップしはじめました。自分だけで完結していた音楽制作が、誰かに聴いてもらえるかもしれないということに嬉しさを感じたり、同時に怖さもありました。でも、そんなドキドキ感が次の作品を作るモチベーションとなったんですね。

ーーなるほどねえ。これまでの活動のなかで、最初に手応えを感じたなってことって何かありましたか?

あぶらこぶ:最初に全国流通盤のCD『navel』(2021年)を出したときですね。インターネットに作品をアップしてきたことをきっかけに評価に結びついたというか、嬉しかったですね。

ーー作品の作り方は、どんな順番だったりするのですか?

あぶらこぶ:前まではトラックをまず作って重ねていって、そこに歌やメロディーを乗せていました。最近は、歌詞や言葉を大事にしていて。言葉からできる曲が増えてきました。

ーーアートワークも毎回インパクトあるのですが、アーティスト写真のラフな自画像? イラスト含め、アートワークはどのように作られているのですか?

あぶらこぶ:あぶらこぶのキャラクターはわたしが書きました(苦笑)。アートワークは、わたしが全部考えているわけではなくって、アイディアとなるイメージをクリエイターさんに伝えたりしています。

●自分が前に進むために生まれた曲で。次のステップへ飛び立ちたいという想いが強かったんです

ーー2022年3月23日にリリースされた2ndミニアルバム『tobitai』が、とても素晴らしかったです。クオリティーが高まり、言葉の表現、歌心などあぶらこぶさんの成長を感じられました。音楽としてすっと入ってくるのですが、奥深い心情を感じられました。

あぶらこぶ:これまでは、自分の作りたいものが自分のなかでまだボヤッとしていたんです。それが『tobitai』では、自分のイメージややりたかったことを明確に表現できました。

ーー『tobitai』という、タイトルに込められたイメージって、いまの時代を10代として生きるあぶらこぶさんにとって大きいのではと思いました。雲間から差す光へと飛んでいる向かっているジャケット・アートワークもめっちゃよくって。

あぶらこぶ:ミニアルバムに入っている前半の曲は、自分が前に進むために生まれた曲で。次のステップへ飛び立ちたいという想いが強かったんです。

ーー高校を卒業するタイミングって、“えいやっ!”って踏み出したいというか、人生においてターニングポイントになりますよね?

あぶらこぶ:自分が成長していくというか、時間が経つにつれて変わっていくことって多いんです。それを受け入れていかなないとなって思って。そんなときに生まれた曲たちなんです。いまは、過去より未来の存在の方が大きくなってきた時期で。そんななかでの葛藤から生まれる感情がアルバムには反映されていると思います。

ーーまさにリード曲である「stage」、そして「運命孵化」は、想いの強さが込められていて、ここから新たに始まっていくんだという気持ちの強さを感じました。

あぶらこぶ:今回、アレンジは変わらずGarageBandで自分で全部やっているのですが、レコーディングでは、いつもはiPhoneのマイクだったんですけど、ちゃんとしたスタジオで歌録りをしました。めっちゃ緊張しました……。

ーーどの曲が一番歌入れ、大変でしたか?

あぶらこぶ:「stage」や「運命孵化」は、自分の気持ちを強く込めていたので難しさもありましたね。

●いままでは、歌詞の中で照れ隠しをしていたというか。隠すような言い回しが多かったんですけど、今回のミニアルバムの曲は全体的にありのままの自分を見てもらいたいという思いが強くなってきていますね

ーー「光になれ」という楽曲も好きで。エネルギーをいただけるナンバーですね。

あぶらこぶ:この曲は“日本調教師会(日本中央競馬会 に所属する調教師によって組織されている業界団体)”からの依頼で作らせていただいて。実際に、馬の厩舎を観にいってスタッフの気持ちや、馬そもそもの生命力を目の当たりにして曲で表現しました。

ーー「光になれ」と「ことり」は先行配信されていましたが、今回“tobitai ver”として新MIXが施されましたね。

あぶらこぶ:よりドラマチックに伝わるようなMIXになりました。

ーー「ことり」では、高校時代の不安な気持ちを描きながらも、そこから飛び立っていける希望や夢を抱えながら、不安で繊細な心情を歌われていて。この楽曲が完成したことはあぶらこぶさんにとって自信になったんじゃないですか?

あぶらこぶ:ほんとにその通りで。これまでぼんやりとしたテーマで曲を作っていたのですが、「ことり」ではじめて自分のなかで伝えたいと思った気持ちを明確に表現した曲でした。

ーー歌詞のラストで“何があっても大丈夫、何がなくても大丈夫”ってあるのですが、とてもいい言葉でありフレーズだなと。この心境に辿り着けたことがすごいなと思いました。

あぶらこぶ:ありがとうございます(笑)。

ーーほんといい曲で。そして、ミニアルバムでは「yai yai」、「シャッターチャンス」、「観覧車」へと流れていくという。

あぶらこぶ:「シャッターチャンス」、「観覧車」は新しめな曲で。「yai yai」は、けっこう前にできた曲かな。

ーー「yai yai」での“アンドロイド”というメタファーがあぶらこぶさんらしいなと思いました。児童文学っぽいニュアンスというか。

あぶらこぶ:いやあ、わたしは昔から本を読むのは苦手で、あまり読んでいないんです。読んでみたいんですけどね。

ーーあああ、そうなんですね。でも、自分で物語を想像して自己表現することはお好きだったと。

あぶらこぶ:そうなんです。曲が出来上がったあとに聴き返す時間が好きなんです。自分を認められる瞬間というか。たしかに、創作活動のモチベーションとなっているのかもしれませんね。

ーー最近作られた楽曲、「シャッターチャンス」や「観覧車」では、言葉の表現など変化が見られますよね。

あぶらこぶ:「観覧車」はとくにストレートというかわかりやすい言葉で伝えている曲なんです。いままでは、歌詞の中で照れ隠しをしていたというか。隠すような言い回しが多かったんですけど、今回のミニアルバムの曲は全体的にありのままの自分を見てもらいたいという思いが強くなってきていて、この曲もそういうストレートな部分が出ていると思いますね。

ーーあぶらこぶさんが、どんな人でどんな表現をされたい方なのかが最新ミニアルバム『tobitai』を聴いているとわかりやすく伝わってきます。もちろん過去作も大好きなのですが、幅の広がりを感じますね。そういえば、ライブなどはやられないのですか?

あぶらこぶ:やってみたいんですよ。いままでだったら作品性を作り込みたいっていうか、組み立てていくことへの楽しさを感じていたのですが、最近は、歌でいかに伝えていくかということについて考えています。自分でも変化してきているなって思っています。

Photo by あぶらこぶ
Photo by あぶらこぶ

あぶらこぶ オフィシャルTwitter

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