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福岡出身RAKURA 、今の時代の葛藤を乗り越える18歳によるメッセージ性の強いパワーソング

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
RAKURA photo by asistobe

●福岡から誕生したアーティストの新潮流

音楽ストリーミングサービスSpotifyで毎週火曜日に公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』を選曲していると、たくさんの新しい音楽との出会いがある。ポップ・ミュージックとは時代を映す鏡だ。時に、社会の本質を言い当てる歌詞やメッセージ性に驚かされることがある。そして、期せずして才能は同時代的にあらわれ、それが新たなシーンを生み出していくことがある。

2021年、注目したい流れは“福岡から誕生したアーティスト”の流れだ。

福岡で活性化するラジオ番組や、現地コミュニティーによるクリエイティブなネットワークの結果、作詞作曲からスタイリング、ヘアメイク、映像、ヴィジュアルまで、すべての表現を自己プロデュースするアーティストDoul、今年フジロックフェスティバルに出演するyonawo、音楽テレビ番組『ミュージックステーション』に出演した実績を持つRin音、『マツコ会議』で大フィーチャーされたシンガーソングライターMega Shinnosuke、ジャパニーズ・シューゲイズ・シーンの新星クレナズムなど、続々と次世代アーティストが誕生している。

●攻撃的なポップチューン「Time will tell」の誕生

そんななか、まだ知る人ぞ知る存在であるRAKURAの3rdデジタル・シングル「Time will tell」が気になった。7月29日にリリースされたナンバーだ。

コロナ禍の現在、10代といえば日常生活での制限はもちろん、学校生活、部活動、課外活動や修学旅行など、様々な思い出を諦めざる得ないティーンエージャーの憂いが続いている。RAKURAは、将来を見据え高校卒業後、音楽の道を選び上京したヴィジョナリーだ。

東京オリンピック閉会後、デルタ株の猛威の結果、感染者急増で全国的にカオティックな状況となった日本。一部のメディアはさも若者が悪いとばかり報道で吠えたてる。問題なのは、こういった状況が予測できたにもかかわらず無策だった大人たちにあるのではないか。

しかし、たくさんの閉塞感を乗り越えて今があるように、今を乗り越えた未来があるのではとRAKURAは歌う。攻撃的なポップチューン「Time will tell」の誕生だ。彼女は、いかにしてシリアスかつシアトリカルな本作を生み出すことになったのか。オリエンタルなメロディー展開が切なさで胸を満たしてくれる楽曲に耳を澄まして聴いてほしい。

そんなRAKURA自身に話を聞いてみた。

「前作『In me』から自分が言いたい気持ちなど歌詞を書いていたのですが、本作『Time will tell』からプロデューサーのRa-Uさんとスタジオで一緒に曲作りするようになりました。『Time will tell』は、まず何を自分が歌いたいかを最初に考えました。やっぱり今のご時世、この世界に響く曲を作りたいなと思ったんです。テーマは、今、コロナ禍だったり環境問題など、世界中、困っている人がいっぱいいますよね。そんななか、自分が感じる一筋の希望を歌に込めて伝えたいと思いました。『Time will tell』は、歌詞にあるように皮肉めいた要素も取り入れていて、でも、最初は夏だし明るめに可愛い曲に乗せて発信しようと思っていました。なのですが、私が書いた歌詞が強すぎて、Ra-Uさんと進めるうちにダークなメッセージ性の強い曲に変化していきました。もともと“すべてを失った3年前も今はもうただ3年前”という、歌詞のモチーフとなる言葉を書いていて。そこからこの曲が生まれたんです。時間が経てば、解決してくれるような曲になればいいなって。」

RAKURA photo by asistobe
RAKURA photo by asistobe

●イメージを広げたくていろんな曲を聴いてきました

RAKURAはこれまでプロデューサーのRa-Uとともに作品を作ってきた。そして今回、Ra-Uと作詞曲をコライトしている。日々、どんなスタイルで楽曲を生み出していくのだろうか。

「もともと高校生の頃からトラックを作って曲を書いたりしていました。今はRa-Uさんが、私が考えるイメージを広げてくださって、メロディーは一緒に歌いながら作っています。『Time will tell』は、曲制作に入る前の期間がけっこう長かったですね。どんなことを伝えたいのかをじっくり煮詰めていきました。」

本作を聴いていると、独特なる80年代センスをメロディーやビートのタイム感に感じた。たとえば、マドンナ「La Isla Bonita」、メン・アット・ワーク「Down Under」のイメージだ。「Time will tell」において影響となるリファレンスがあったのかを聞いてみた。

「リファレンスはいろいろイメージがありましたね。ジェシー・Jさんの曲やマイリー・サイラスの『Party In The U.S.A』がきっかけとして大きかったかも。曲は全然違うんですけどね。もともとRa-Uさんが言ってくれるのが“RAKURAにはギターが似合うよ”なんです。イギリスポップなギターセンスというか、それがスイッチになって。同時にジェシー・Jも好きでよく聴いていて、なんか似ているタイプの曲だなって思って調べたらマイリー・サイラスの曲がジェシー・Jが作った曲だったんですよ。その発見が面白くて盛り上がりましたね。そう、最初は、明るい曲にしたかったんです。でも、だんだんSIAとかの方向になってきて。イメージを広げたくていろんな曲を聴いてきました。でも最終的には、かっこいいブルージーなボーカルワークになりました。」

●寄り添えるような曲を書きたかったんです

コロナ禍が長く続き、緊急事態宣言の延長やオリパラなど、世の中が大きくざわついているが、18歳のティーンエイジャーRAKURAは日々、どんなことを大切にして日常を生活しているのだろうか。

「コロナ禍で迎えた高校3年生はずっと休みになったりしましたからね……。でも、私はやりたいこともやれているし、ダメージは少ないと思います。だからなのかな。今の時代に問題を抱えて、葛藤している人たちに向けて歌を届けたいと思いました。私にできることは音楽を作って歌うことだけだから。『Time will tell』は、私の想像から生まれた曲。テレビやニュースを日々見ていると苦しくなってしまうので……。だからこそ、寄り添えるような曲を書きたかったんです。ぜひ、私の声を聴いてほしいですね。」

RAKURA オフィシャルサイト

https://rakura-official.com

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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