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サブスクから飛び出たニュースター、Kroi。通して聴きたい傑作メジャー1stアルバム『LENS』

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
Kroi Photo by IRORI Records

コロナ禍による混乱が招いた2021年のカオスな音楽シーン。しかし、ストリーミングサービスの台頭などデジタルによる変容=DX化が一気に進んだことで、目の前の景色が変わろうとしている昨今。サブスクから飛び出たニュースターの誕生を喜びたい。時代を超えたミクスチャーかつハイブリッドな音楽センス輝くKroi(クロイ)に注目すべきだ。

Kroiは、6月23日にメジャー1stアルバム『LENS』をポニーキャニオン内のレーベルIRORI Recordsからリリースした5人組バンド。アルバムでは、“混乱から逃れる術どこ?”というフレーズがパンチある、カルトをテーマにしたミュージックビデオが注目を集めたリードトラック「Balmy Life」など、R&Bやソウル、ロック、ヒップホップをミックスした泥臭いファンクネスがキーとなる全12曲を収録している。

様々なカルチャーで90年代リバイバルが注目されるなか、ブラックミュージックを基盤として自分たちがやりたいサウンドと忠実に向き合った結果がアルバム『LENS』では自由に表現されている。いわゆる俯瞰したエディット感覚で、影響を受けたサウンドを理想の配置へと置き換えていくセンスのよさ。アルバム冒頭から、柔らかなポップフィーリングを聴かせる「Balmy Life」、アッパーなアフロファンク「sanso」、耳心地のよい「selva」、アシッドジャズ的なパーティー感ある「夜明け」など、没入感高い魔法めいた生演奏による高揚感がクセになる。愛嬌ある音の響き、中毒性がズバ抜けて高いのだ。

レイドバックしたワウのリフが印象的であり、ノルウェーのエレクトロデュオRöyksoppを彷彿とさせるシンセポップな「a force」や、フュージョン・テイストがファンキーなインストによるジャムセッションなダンスチューン「ichijiku」など、昨今のJ-POPシーンでは目新しいソリッドな音像を堪能させてくれる。どこかしらテクノを経由した鋭敏なビート感覚にも着目したい。

開かれたメロディーと安定感あるビートが絡み合う「NewDay」のクールネス、尖りまくったシンセフレーズの快楽ポイントの高さ。楽器が持つプリミティヴなパワーをこれでもかと堪能させてくれる展開は「shift command」へと連なり、至福なる音楽の喜び、かっちりと決まったビートのカッコ良さに思わず耳が喜ぶ。笑みがこぼれ落ちていくのだ。

彷徨える2021年音楽の旅は、パワフルな歌メロが導くソウルフルなグッドミュージック「帰路」へと結実する。そして、ホームに向かうラストソング「feeling」へとたどり着くのだから、これは本作がメジャーデビューとなるバンドの1stアルバムとしては出来過ぎな完成度の高さだ。適度なるバランスのよい音の足し算と引き算がなせる技と言えるかもしれない。

世界中の音楽を“いくらでも”聴けるストリーミング時代、単曲で自分好みの楽曲をテイストでマッチングするプレイリストによる音楽の楽しみ方が広がりつつあるが、Kroiの音楽はアルバムを通じてストーリーテリングの巧妙さを楽しみたい。オリジナリティーが爆裂したワールドワイドな70’s、80’s、90’sからの音楽的影響を見事に包み込み、自らのテイストへ昇華するテクニカルな演奏力の高さが解き放つ快楽ポイントの強さ。

J-POPシーンで陥りがちな“わかりやすさ”という毒饅頭に悩まされることなく、本質的なブラックミュージックのセンスを内省的な歌詞の元、カオティックな世界観で日常に溶け込んでいくKroiらしさをメジャーシーンで表現するという思い切りのよさ。いわば、これは邦楽のボトムアップであり革命だ。サビの強さと、軽やかにしなやかに躍動するビートセンス。まさに2021年を代表する、羅針盤となるアルバム作品のひとつだと思う。

Kroi『LENS』特設サイト

https://lens.ponycanyon.co.jp/

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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