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BLACK CATSから継承するDNA。新世代ロカビリー・バンド、The Biscatsデビュー

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
Photo by ROCK'A BEAT TOKYO

●国内外で支持されている新世代ロカビリーシーンの逸材

これまでモデル / ソロシンガーとして活躍してきたMisaki(青野美沙稀)が、2019年にロカビリー・バンドThe Biscats(ザ・ビスキャッツ)を結成した。日本を代表するロカビリー・バンド BLACK CATS、MAGICのドラマー、久米浩司を父に持つ本格派ロカビリー・バンドの誕生だ。すでに同年 4 月、ラスベガスで開催された世界的ロカビリー・フェス『VIVA LASVEGAS ROCKABILLY WEEKEND #22』へ日本を代表して出演。国内外の幅広い世代に支持されている新世代のロカビリーシーンにおける逸材である。

ロカビリーとは、1950年代初期のアメリカ南部、メンフィスにて黒人音楽のブルースと白人音楽のヒルビリー&カントリーが融合して生まれた音楽だ。いわゆるダンスミュージックであり、現在でも世界各地で熱狂的なコミュニティーが存在するレジェンダリーな音楽ジャンルのひとつである。しかも昨今は、EDMやクラブミュージックなどでロカビリーのエッセンスを継承したサウンドも人気だ。

そんなThe Biscats がデビュー・ミニ・アルバム『Cat's Style』を完成させた。3月25日、新レーベル“ROCK'A BEAT TOKYO”よりリリースとなる。シャッフル・ビートなロカビリーを“2020年のいまの視点”で表現した結果、フレッシュに弾けるきらびやかなバンドサウンドが誕生した。

Photo by ROCK'A BEAT TOKYO
Photo by ROCK'A BEAT TOKYO

●令和時代に受け継がれるロカビリー・スピリッツ

すでに先行して配信中の「take away」、TRIUMPH “Thruxton RS”デビューフェア“キャンぺーンソング「ハートのエース」、Nintendo Switch 専用ゲーム『キューピット・パラサイト』テーマソング「恋はあせらず」など、アグレッシヴにロッキンな魅力をMisaki(Vo)、Kenji(Gt)、Suke(W.Ba)、Ikuo(Dr)の4人が解き放っている。さらにアルバムでは、山口百恵「ロックンロール・ウィドウ」、ザ・ヴィーナス「キッスは目にして!」のカバーも収録。ロカビリーにカバーは合う。遊び心に富んだサウンドメイクの楽しさ。こうして令和の時代に受け継がれていくロカビリー・スピリッツ。

なぜ2020年のいま、Misakiはロカビリー・バンドThe Biscatsの結成に至ったのか? バンドに話を訊いてみた。

<The Biscats 独占インタビュー>

――ロカビリーバンドThe Biscats、バンドの結成の経緯は?

Misaki(Vo):もともとソロで歌っていたんですけど、“自分がやりたい音楽ってなんだろう?”と改めて向き合ったときに、ルーツであるロカビリーをやりたいなって。それでバンドを組みたいと思いました。なかなか同世代でロカビリーやっている子は少ないんだけど、関西でロカビリーバンドをやっていた彼らと出会って声をかけました。去年までは、青野美沙稀 and The Jackpotと名乗っていました。みんな向いているがロカビリーであり、自分たちでしかやれない音楽をやりたいという同じヴィジョンを共有しています。

――The Biscatsというバンド名はMisakiさんのお父さんがやられていたBLACK CATSからの影響かと思いますが、バンド名の由来は?

Kenji(Gt):ロカビリーバンドって、CATSが付くバンド名が多いんですよ。昔ジャズを好きなリスナーのことを“ヘップ・キャッツ”と言っていて。それが由来のひとつですね。いまの時代にロカビリーを継承したいという思いがあったんです。“ビス”というのは、50年代にロカビリーがはじまって、80年代にリバイバルブームが起きて、そんな繰り返すというか、もう一度ブームを巻き起こしたくて“繰り返す=ビス”と“キャッツ”をくっつけてThe Biscatsと名付けました。

――そうなんですね。では、Misakiさん、バンドメンバーを紹介してもらってもいいですか?

Misaki:ギターのKenjiは、一番バンドや音楽に詳しいんですよ。なので、みんなが頼っている存在ですね。曲作りもKenjiが中心となっています。

Kenji:中学3年ごろからエルヴィス・プレスリーの映像を観てロカビリーにのめり込んでいきました。

Misaki:Sukeはファッション担当ですね。ロカビリーのファッションにも詳しくて、ライブの衣裳決めるときは中心になって動いてくれます。

Suke(W.Ba):カタチから入るタイプなんです。ベースも見た目で選んで。だって目立つじゃないですか? 

Misaki:Ikuoは、一番年下なんですけど頭脳派ですね。バンドについて客観的に見れたり、冷静に分析したりするのが得意で。

Ikuo(Dr):ロカビリーだけじゃなく、いまの音楽も好きなんです。いろんなカルチャーが好きですね。エレクトロな要素をうちのバンドにも取り入れたいなと思っています。

――キャラクターもそれぞれ、なかなか面白いメンバーが集まったんですね。ちなみにバンドメンバーにとってMisakiさんはどんな人?

Misaki:ははは、ちゃ〜んと答えてよ!

――ははは(笑)

Kenji:えっと(笑)、ソロシンガーの頃からサポートしていた流れもあるんですけど、すごい努力家なんですよ。意外となんでもこなせる天才肌な面もあったり。

Misaki:意外と?(笑)

――ははは(笑)。Sukeさん、Ikuoさん的には?

Suke:メンバーみんなを見てくれている気配り? 意外とそんなところがあるんです。

Misaki:意外と?(笑)

Ikuo:えっと、……Misakiちゃんは可愛くて可愛くてしょうがないですね(笑)

Misaki:それ、絶対思ってないでしょ?(苦笑)

――ははは(笑)。ロカビリーバンドで、こう言った若い世代って他にもいるんですか?

Misaki:やっぱり4,50代が多いですよね。でも、高校生でもロカビリー・バンドやっている子たちがいたりするんですよ。80年代のロカビリーブームの子供世代って言いますか、親の影響ではじめる子がいたり。

――なるほどねぇ。それに、ファッション界隈ではロカビリー・アイテムは人気も高かったりしますよね。

Misaki:そうですね。ファッション誌でもよく取り扱われたりしています。

――そして昨年、The Biscatsは世界的ロカビリー・フェス『VIVA LASVEGAS ROCKABILLY WEEKEND #22』にも出演しました。どんな雰囲気だったの?

Misaki:ロカビリーの祭典なんです。夢の世界でした。

Kenji:まるで映画の中の世界のようでした。

Ikuo:4日間ぶっ通しでやっているんですよ。

Misaki:ひとつのホテルのなかに、いくつかのホールやボーリング場などがあって、どれもすごいんですよ。駐車場では車のショーをやっていたり。

――それはカオティックで楽しそうですね。すごい経験じゃないですか? 今年も出演されるんですよね?

Misaki:4月12日にライブをしてきます。楽しみですね(※残念ながら、新型コロナウイルスの影響で中止に)。

――横の繋がりとかできました? 

Misaki:いろいろな国のバンドの方々とお話ししましたね。なかなか無い経験だったと思います。

――そして、ついに3月25日にリリースとなるミニ・アルバム『Cat's Style』は、エッジーさを兼ね備えつつも、日本で言う所のフェス好きなロックファンにも刺さる作品集となったと思います。

Misaki:1曲目は「lingering scent」といって“残り香”という意味を持つナンバーです。歌詞の内容的には、恋人同士が別れる曲なんですけど、去り際のカッコよさを描いています。カッコいい女性像の理想のイメージですね。2番の歌詞に“一輪草”ってあるんですけど、歌詞にもある花言葉の意味は“追憶”なんです。別れても、心の中に残り続けるいい女でありたい、みたいな思いを込めています。

Kenji:サウンドには80年代のネオロカビリー的なアプローチと、いまの時代の音圧感を意識しました。

Suke:頭がベースから入っている、一番ロカビリーっぽい曲ですね。気分が上がりますね。

Ikuo:ドラムに関しては“今っぽいサウンド”を意識しています。ドラムは、ウッドベースにアタック音を作る役割なのでそこを大事にしていますね。

――なるほどね。2曲目は「ハートのエース」というキラーチューンの登場で。

Misaki:この曲は、峰不二子をイメージしているんですよ。「バイクの似合う素敵な女性!」、わたしの中でのカッコいい女性像の代表なんです。そんな中、100年以上歴史のあるバイクメーカーTRIUMPHさんからキャンペーンのお話をいただいて、「ハートのエース」はイギリスのカフェレーサーのストーリーを歌詞にしました。カフェレーサーとは、ジュークボックスにコインを入れて、曲が終わるまでにレースをして戻ってくるストリート・レーサーなんです。

――へぇ、いろんなカルチャーがあるのですね。「ハートのエース」はそれこそ、僕もなんですがBOΦWYとか好きそうなビートロック・ファンにも通じるところがありますよね。そもそも布袋さんもロカビリーからの影響、大きかったですよね。

Misaki:嬉しいですね。ちなみに、ミュージックビデオは神戸に現存する日本最古のキャバレーで撮影しました。雰囲気も重厚感があって、内装も雰囲気があって。ぜひ、じっくり細かい所も観て欲しいですね。海沿いのロケではバイクに乗ってカフェレーサーをやったりしてますから。

――Misakiさんの革ジャン姿もイケてました。必見ですよね。4曲目「take away」も、キラキラしたポップチューンでカラフルでキャッチーですよね。

Misaki:ロカビリーの中で、ドライブソングって大事なんですよ。今回、必ず入れたいなって思っていて。他の曲がカッコよいナンバーが多いんですけど、「take away」はカワイイ曲にしつつ、でも好きな男性に対して媚びずにブレない自分をという意味を歌詞で書きました。

Kenji:「take away」はロカビリーというよりは、ギターソロに関してはカントリーチックちっくなテイストにしました。ドラムはトレイン・ビートで。

Suke:ロカビリーのリズムの中でカントリーが一番好きだったりするんですよ。ライブでお客さんも盛り上がってくれるのが想像できて。

Ikuo:音色は現代的なサウンドにこだわりました。バスドラの音など、EDMまではいかないですけど低音を出してみました。ずっと同じフレーズな分、飽きさせない音にこだわりましたね。

――ロカビリーは、ビートやリズム感に説得力があるダンスミュージックなので、カバー曲にも独自のセンスが表れてますよね?

Misaki:今回『Cat's Style』では、80年代の山口百恵「ロックンロール・ウィドウ」、ザ・ヴィーナス「キッスは目にして!」をカバーしました。普段から聴いている曲たちですね。

Suke:僕はロカビリーにハマる前から「ロックンロール・ウィドウ」が好きな曲だったので、カバーできて嬉しかったです。今回、ロカビリー・アレンジがカッコいいんですよ。

Ikuo:ロカビリーの8ビートって、ちょっと跳ねている空気感があって、それがビートのタメになっているんです。フロアタムを使って、曲の雰囲気をうまく作っていきました。

――「キッスは目にして!」のカバーもいいですよね。今、若い子たちが聴いたらまたハマりそうな気がして。手踊りできる感じというか、TikTokでもティーンに受けそうな感じがしました。

Misaki:あ〜、たしかに。「キッスは目にして!」は、THE VENUSのヴォーカル、コニーさんに可愛がっていただいていて、リスペクトもあって今回歌わせていただきました。大好きな曲ですね。

Kenji:原曲の愛らしさに加えて“クールさ”を意識しました。そんなところでオリジナリティーを出しつつ。

Suke:「キッスは目にして!」はダンスナンバーとしても有名で、僕も踊ったりしてたんですよ。当時、原宿のホコ天で踊っていた人たちは馴染み深いんじゃないですかね。プレイに関しては、原曲より重いビートを感じて欲しいですね。

――全7曲収録、The Biscatsにとって名刺となる作品が完成しました。

Misaki:自分たちで言うのもなんなんですけど、最高傑作ができたんじゃないかな。タイトルが『Cat's Style』なので、まさに自分たちを表した作品になったと思っています。歌詞で、自分の言葉で想いを伝えられるようになったことも嬉しかったですね。

――アーティスト写真では、実はロカビリーの聖地である“キャットストリート”=渋谷〜原宿のワンシーンを切り取られていますよね。

Misaki:ずっと昔からある変わらないピンクドラゴンというショップがあって、原宿から渋谷へつながる終わりでもあり、入り口でもあるポジションなんです。最近は大きなビルがどんどん増えて、変わりゆく渋谷という側面と、変わらない良さがとしての原宿の象徴のピンクドラゴン。変化と伝統、両面の中でロカビリーの未来を背負っていくぞという気持ちのあらわれですね。うん、『Cat's Style』は決意表明となる作品だと思います。

――なるほどね。変わりゆく渋谷の街において、ロカビリーの聖地であった原宿の“キャットストリート”は変わらずに残り続けていますもんね。そして、2020年はThe Biscatsの時代がやってきたということですね。

Misaki:そう、受け止めていただけると嬉しいです。音源はもちろんなんですが、ぜひライブも観て欲しいですね。楽曲を聴いて楽しんでもらえたら、全国ツアー『The Biscats TOUR 2020 ”Cat's Style”』が5月16日に青山RiZMからスタートするのでぜひ遊びにきてください。

一同:よろしくお願いします!!!

The Biscats オフィシャルサイト

https://thebiscats.com

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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