お酒入りチョコを未成年者に贈っても大丈夫?バレンタインにちょこっと問題になりそうなことを弁護士が解説

(写真:アフロ)

弁護士の福永です。バレンタインデーがあと数日に迫っていますが、国内のバレンタイン市場は1300億円に達するらしいですが、今年も多くの人が楽しまれることと思います。

もちろんせっかくのバレンタインデーに水を差すつもりは全くありませんが、でちょこっと問題になりそうな法律問題について解説します。

お酒入りのチョコレートを未成年者に贈っても大丈夫??

成人から未成年者の場合でも、未成年者同士の場合でも、法律上お酒が飲めない未成年者に対して、お酒入りのチョコレートを贈った場合に、何らかの法律に引っかからないか気になったことはありませんか??

問題がありそうなのは、未成年者飲酒禁止法です。

この法律では、以下の3つのことを禁止しています。

1つ目は、未成年者は酒類を飲んではいけない。

2つ目は、親権者や、親権者に代わって未成年者を監督する者は、未成年者が酒類を飲んでいるのを知った時は制止しなければならない。

3つ目は、酒類の販売や供与をしている営業者(酒屋、コンビニ、飲食店など)は、未成年が酒類を飲むためだと知った上で酒類の販売・供与をしてはいけない。

なので、例えば、親が未成年者の子供に、酒類を贈って未成年者がそれを飲んだら、飲酒を制止する義務に反することになります。

なお、未成年者自身は、法律上、酒類を飲んではいけないと規定されていますが、これを破って飲酒したとしても、未成年者飲酒禁止法では罰則は定められていません(処罰規定がないだけで違法行為には変わりはないので、補導されたり、校則違反になったり、他の形で処罰されることはあります)。

「酒類」とはなに?

しかし、そもそもお酒入りのチョコレートを食べることが酒類を飲むことと同視できるのでしょうか?

これについて、未成年者飲酒禁止法には「酒類」の定義は規定されていませんし、明確な判例は見つかりませんでした。

ただ同じく「酒類」という文言を使っている酒税法では、「酒類」とは、飲料のうち、アルコール度数1%以上のものと定義されています(そのため、甘酒に多少のアルコールが入っていたとしても、アルコール度数1%未満だと酒類には分類されていないわけです)。

そして、未成年者飲酒禁止法に出てくる「酒類」についても、特に何か合理的な理由がない限り、酒税法の「酒類」と同じように考えれば良いと思います。

すると、「酒類」は飲料を前提に定義されていますので、そもそも飲料ではないお酒入りのチョコレートは、基本的には酒類に該当しないと思われます(ただし、個別事情によりけりで、形状が飲料に近かったり、またアルコール濃度が特に高い場合には、酒類に該当する可能性もあります。また通販サイトなどでも年齢確認を求めているものがあります)。

お酒入りのチョコレートを溶かして飲料にした場合は??

ただ仮に、お酒入りのチョコレートを大量に溶かし、それがアルコール度数1%以上の飲料になれば酒類に該当してしまうような気もします。

しかしこう考えてみると、そもそも未成年者飲酒禁止法は、未成年者の健康にとって有害なアルコール濃度の高い物の摂取を防ぐことを目的としているはずで、この点では摂取物が固形か液体かで根本的な違いはないはずです。

また、単に飲料かどうか、つまり、固体か液体かということで、酒類に該当したりしなくなったりするのであれば、逆にお酒を固めて食べるなら酒類に該当しないのだろうかという疑問も湧いてきます。

このあたり、未成年者飲酒禁止法に関する判例や文献が乏しく、なかなか判断が難しいため、行政庁に法律の解釈についてヒアリングをしてみました。

まず、基本的に未成年者飲酒禁止法の「酒類」の定義は酒税法の「酒類」と同じと考えてよいとのこと。

そして、結局は総合的な評価になるため、必ずしも一概にどこからが酒類と評価されるかは示しにくいが、酒類の定義が飲料を基本にしている以上、成分が同じでも飲料と言えるかどうかは重要で、お酒入りチョコレートについて、固形の時には「酒類」に該当しなくても、飲料にしてしまえば「酒類」に該当してしまうというケースもありえないわけではないとのことでした。

ただ、元から飲料の「酒類」については、酒類と分類されている以上、固めたところでやはり「酒類」と評価されるであろうし、逆に市販のお酒入りチョコレートで「酒類」と分類されていないものは、溶かしたところで「酒類」ではないと評価される可能性が高いとのことでした。

仮に「酒類」に該当する場合はどうなる??

ただ仮にお酒入りのチョコレートが酒類に該当する場合でも、それを未成年者に提供して問題になる可能性があるのは、親権者やそれに代わる監督者、または酒類を販売・供与する営業者のみです。

この中で、親権者に代わる監督者とはどういう関係性の人を指すのかという点について、昨年、男性アーティストが未成年者の女性タレントと飲酒をしていた事件が発覚した際に問題になったことがありました。

しかし、過去の裁判例では、親権者に代わる監督者とは、親権者と同等か、これに準ずる程度に生活面を含めて包括的に未成年者を監督することが期待されている特別な関係・立場の者を指すとされてきました。

例えば、個人事業主とその従業員や、高校教師と生徒のように、未成年者の生活面に関して包括的に監督するわけではない関係の者はこれに含まれず、該当する可能性があるとすれば、住込みの従業員とその雇い主や、地方から出てきて家に住まわせている親戚の子などに限られると判断されてきました。

ですので、昨年の事件のような関係や、一般的な友人同士のように、特別な関係性のない者同士で、酒類を未成年者に提供したり、横で飲んでいるのを制止しなかったりした場合でも、未成年者飲酒禁止法には触れないものと考えられます(モラルの問題は別論です。また飲む量が多かったり、アルコール度数が非常に高かったりする場合や、飲むことを強要した場合などに、別の法律に触れる可能性はあります)。

以上、お酒入りのチョコレートを未成年者に贈って未成年者飲酒禁止法に該当する可能性があるとしたら、お酒入りのチョコレートを大量に溶かしてアルコール度数1%以上の酒類同様の飲料を作った上で、親権者が未成年者に、あるいは、レストランなどが未成年者に提供した場合のような例外的なケースに限られるものと思われます(特に手作りの場合は要注意)。

今回の問題は、ちょっと無理やりな論点だったかもしれませんが、次回は、実際に裁判で問題になったチョコレート事例について取り上げてみたいと思います。

次回記事:学校内で生徒とチョコを配り合った先生が懲戒!?バレンタインにちょこっと問題になった事件を弁護士が解説

未成年者飲酒禁止法

第一条  満二十年ニ至ラサル者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス

○2 未成年者ニ対シテ親権ヲ行フ者若ハ親権者ニ代リテ之ヲ監督スル者未成年者ノ飲酒ヲ知リタルトキハ之ヲ制止スヘシ

○3 営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ満二十年ニ至ラサル者ノ飲用ニ供スルコトヲ知リテ酒類ヲ販売又ハ供与スルコトヲ得ス

酒税法

(酒類の定義及び種類)

第二条  この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。

(その他の用語の定義)

第三条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一  アルコール分 温度十五度の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいう。

※本事は分かりやすさを優先しているため、法律的な厳密さを欠いている部分があります。また、法律家により多少の意見の相違はあり得ます。