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MofMというブランドが作った「ミナカミシティ」Tシャツ まちづくり編

遠藤司皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー
(ペイレスイメージズ/アフロ)

 man of moods (MofM)というファッションブランドがある。モード系のドメスティックブランドである。

 このブランドは、もともと東京の代官山を拠点に活動していた。事実、MofMの具体化するものは都会的である。しかし、ブランドを立ち上げてから10年にもなる2013年になって、急に本拠地を群馬県のみなかみ町へと移した。東京のファッションの中心地で成功しているブランドが、である。

 さらにいえば、拠点である「WORKSHOP minakami」のある、みなかみ町藤原という場所は、はっきりいって限界集落である。行けばわかるが、昔ながらのイメージ通りの村落の風景が広がっている。ファッションの最先端とは正反対にみえる、のどかな地である。

 しかしながら、このブランドのデザイナーである福山正和氏の、水上に対する思いは本物である。先に述べたように、このブランドは都会的だ。にもかかわらず、普通ならミスマッチに思われる「MINAKAMI CITY」というロゴがデザインされたTシャツを作り、水上の認知度を向上させている。しかも勝手に。

 このあたりに地域活性化の本質があるように思う。ブランドコンセプトについての話は虎の巻に譲ることにして、この記事では地域活性化とは何なのかについて述べていきたい。

 ごく簡単にいってしまえば、デザイナーの福山氏は、水上が好きなのである。あるいは、水上は福山氏自身なのであると言ったほうが、より正確であろう。

 MofMが追求するのは、「常に進化を求め、感性、感覚、雰囲気で生きる」ことである。これは福山氏が元プロのスノーボーダーだったところからわかるように、彼のライフスタイルを表現したものだといえる。

 そうであれば、その進化の拠点を、スノーボーダーとしての自身の最も好きな山、谷川岳のある水上に移すことには合点がいく。この場所を、感性を育む場所と決めたのだろう。2016年には、megabass社と正式に契約を結び、渓流のプロフィッシャーにもなった。冬の山の人から、正真正銘の山の人になったのである。こういう人である。

 ゆえに福山氏は、「ミナカミシティ」Tシャツをつくるに「決まっている」のである。虎の巻に書いたように、ファッションにおけるブランドとは、生そのものに食い込むものだからである。このTシャツは、ファンの心を打つ。ブランドの約束するものをあらわしている。

 ところで、この記事は地域活性化についての記事である。脱線しているようにみえるかもしれない。しかし筆者は、ここでは地域活性化の話しかしていない。

 すなわち、地域の活性化なるものは、やりたい人間が勝手にやるものなのである。本来的には地域活性化は、「しなければいけない」などと人から言われるものではない。補助金を当てにすることでも、自治体の協力を仰ぐことでもない。そもそも自治とは、自分のことを自分でやる、という意味である。誰かに依存することでも、まわりの誰かに任せることでもない。活性化とは、好きにやった人、ビジネスをやった人の行動の結果として、なされるものなのである。

 ゆえに、活性化のためにビジネスをやる、というのが、そもそもの誤りなのである。それは人をみていない。顧客をみていないし、まちの人もみていない。ビジネスとは、人と人とが織りなすものである。それを忘れてしまっている。

 そのため地域活性化の専門家の人たちは、おっかない人ばかりである。地域の人を強制の対象のように、活性化のための道具のように扱う人が少なくない。しかし、人は歯車ではない。思い通りに動かそうなどとしてはいけない。意思をもった人間なのだから、自分から勝手に動くように仕向けなければいけない。だから「天の岩戸プロジェクト」を始めたほうがよいのである。私たちと一緒にやったほうが、絶対に楽しい。

 ようするに、普通にビジネスをやればいいのである。ビジネスをやってこそ、地域が活性化するのである。ビジネスとは、やりたいことを勝手にやることである。勝手にやるから、儲かる。儲かることで、まちに税金が入る。新たな雇用が生まれる。楽しくて、住みつづけたいまちになる。地域活性化などは、その連続によって、そのように呼ばれるにすぎないものなのである。

 「まちのために」というのは、動機としては結構である。しかし、大義では飯は食えない。ビジネスとして具体化しなければならない。でなければ、それは単なるいい人か、あるいはいい人に見せかけて悪をなす人、すなわち詐欺師である。

 地域活性化のためにビジネスがあるのではなく、ビジネスがあって地域活性化につながるということを忘れてはならない。目的は、地域におけるビジネスの成功である。そのとき地域は豊かになる。明日のための活動ができるようになるのである。

参考記事

MofMというブランドが作った「ミナカミシティ」Tシャツ 虎の巻

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皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。複数の団体の理事や役員等を務めつつ、実践的な経営手法の開発に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

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